6.ログインの挨拶と、異様な違和感
「おーい、レイ! 待たせたな!」
現実時間の翌日夜八時。
【はじまりの都・アルカディア】の中央広場に、光の粒子とともに仲間たちが次々とログインしてきた。
一番最初に駆け寄ってきたのは、今日のサッカー部の部活を終えてさっぱりした顔のシオンだ。その隣には、陸上部から帰宅したばかりのケットと、小柄なドワーフ姿のギルが並んでいる。
「みんな、おかえり! 今日の部活やお仕事もお疲れ様!」
僕が手を振ると、遅れてアリアとセラも姿を現した。
現実時間では昨日の夜から丸一日(24時間)が経過しただけ。だが、部活に入っておらず放課後が暇でずっとフルダイブしていた僕にとっては、ゲーム内での丸12日間(288時間)ぶりの再会だった。
「ふぁ……、今日の練習のあとのフルダイブは効くわね」
ケットが狼耳をピコピコと揺らしながらあくびをする。
「レイ、私たちが落ちている間、何か変わったことはあった? 街の探索は進んだかしら?」
メガネの枠を押し上げながら尋ねてくるセラに、僕は「えへへ」と胸を張った。
「ふふん、驚くなよ! 昨日大湿原で【簡易調合】がLv2になっただろ? みんなが落ちてたこの12日間(ゲーム内時間)、スラム街の住民NPCにポーションを配り歩いてたら、調合スキルの熟練度ゲージがもう80%まで溜まったんだ! それに、スラムのNPCと仲良くなって『謎の素材ルート』まで開拓できたぞ!」
「えっ……NPCにポーションあげるだけで熟練度入るの!?」アリアが驚いて目を丸くする。
「そうなんだよ! 道具屋に売るより効率いいかも……って、あれ? シオン、なんか顔色悪くないか?」
僕が首を傾げると、シオンは困ったように頭をかいた。
「いや……なんかさ。レイに近づくと、耳の奥で『じじじ……』って嫌な金属音みたいなノイズが聞こえるんだよね。大聖堂の近くに行った時みたいな……」
「えっ? ノイズ……?」
驚いてシオンの顔を見つめる。
だが、シオンだけではない。街を巡回している自警団の甲冑NPCたちが、僕の姿を視界に収めた瞬間、あからさまに手を剣の柄へ伸ばし、警戒心を剥き出しにして睨みつけてくるのだ。
「……レイ、あんた街で何かやらかしたの?」
セラがジト目で僕を凝視する。
「や、やらかしてないよ! 商業ギルドに自作ポーションを持ち込んだら、1Gで買い叩かれそうになったから抗議して、警備ゴーレムに蹴り飛ばされて出禁になっただけだって!」
「「「思いっきりやらかしてるじゃねえか!!!」」」
全員の叫びが広場に響き渡った。
「商業ギルドを出禁って……! レイ、あんた街の経済システムからハジかれたのよ!?」
「だってあいつら不当なんだもん! 素材代にもならない値段で買い叩くんだぞ!」
「あはは、相変わらず極端だなあレイは」
頭を抱えるセラや笑うシオンをよそに、僕はふと自分のステータス画面を開いた。
どこにも異常値は表示されていない。だが、僕の「見えない数値」は、商業ギルドとの激突とスラム街での無料配給により、着実に闇へと傾いていたのだった。




