↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Aetheria Chronicle  作者: 豆大福


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/7

4.スラム街の少女と、青汁の救援物資

大通りの華やかな街灯が途切れ、薄暗い石造りの路地が複雑に入り組むエリア——『南区スラム』。


都の輝かしい発展から取り残されたこの場所には、ボロボロの服を着て身を寄せ合うNPCたちが生きていた。まだ正式サービスが始まって数日(ゲーム内時間)のため、プレイヤーの立ち入りもほとんどない死角だ。


「うう……腹が減った……」


「誰か……病気に効く薬を……」


路地裏の隅で、老いたNPCや子供のNPCが力なく蹲(うずく)まっている。


「あっ、大丈夫ですか!? これを使ってください!」 


僕は急いでインベントリを開き、昼間に試作した『初級ポーション(味:濃いめの青汁)』と、街の露店で買った固い干し肉を取り出した。


「ほら、ゆっくり飲んでください。ちょっと苦いですけど、ちゃんと効きますから!」


「おお……おおお! 感謝します、旅人様……! 温かい……」


弱り切っていたおじいさんNPCの身体が淡い光に包まれ、顔色が劇的に良くなっていく。

システムログが視界の端に静かに流れた。


『——【簡易調合ポーション+1】をNPCに譲渡しました』


『熟練度を獲得:【簡易調合】+0.5% / 【鑑定】+0.2%』


(おおっ! NPCにポーションをあげても調合の熟練度が入るじゃん! 道具屋に売るより効率いいかも!)


調合の熟練度が上がることに味をしめた僕は、スラム街を練り歩きながら、病気や飢えに苦しむNPCたちに片っ端から青汁ポーションと肉を配り歩いた。


「はい、君もどうぞ!」


「お兄ちゃん、ありがとう……!」


現実時間で言えば、ほんの数時間。


だが、ゲーム内時間で丸々2日が経過した頃には、僕はスラム街の住民たちから「青汁を配る謎の親切な猫耳」としてすっかり顔馴染みになっていた。


そんなある夜(ゲーム内3日目)。

薄暗い路地裏でポーションを練り直していると、頭上からカサリと不穏な音が響いた。


「……ッ!?」


【野性の直感】が危険を知らせ、僕は爆速のAGI(19)でバックステップを踏む。

直後、僕が立っていた石畳に、小さな影が屋根の上から軽やかに着地した。


「あんた……何者?」


月光に照らされたのは、ボロボロのつぎはぎ服を着た10歳前後の猫耳の少女だった。

僕と同じフェリス族。だが、その黄色い瞳は、野良猫のように鋭く僕を威嚇していた。



======================================

【名前】 ミーア(Mia)

【種族】 フェリス(猫耳族・スラム孤児)

【レベル】 ??

【状態】 警戒 / 飢餓

======================================



「スラムの奴らにタダでポーションなんて配って、何の企み? 商業ギルドの手先? それとも自警団の犬?」


「企みなんてないよ。ちょっと味が苦いポーションの試作があまったから配ってるだけさ」


僕は苦笑いしながら、ポーチから大湿原で獲れた麦で作った香ばしい干し肉を取り出し、ミーアの前にそっと差し出した。


「君も食べる? 美味しい干し肉だよ」


ミーアは目をお手玉のように丸くしたあと、フシューッと威嚇の声を上げた。だが、お腹が「クー……」と盛大に鳴ってしまい、真っ赤になりながら肉をひったくった。


「ふん! 毒が入ってたらタダじゃ置かないからね!」


背を向け、屋根の陰で夢中で肉にかぶりつくミーア。

その様子を微笑ましく見守っていると、謎のシステムログがひっそりと更新された。



[※内部パラメーター変化]

・NPC『ミーア』の好感度が上昇(警戒 ➔ 関心)

・街の正規流通ルールを無視した非公式の物品配布により、カルマ値が微減:+0 ➔ -5



「……ん?」


胸の奥が「ずん……」と重くなるような、不思議な違和感が走った。

ステータス画面を開いてみるが、HPもMPも正常だ。


(気のせいかな……? カエルの解体で疲れてるのかも)


ミーアは干し肉を綺麗に平らげると、一度だけ僕を振り返り、「変な奴」と吐き捨てて夜の屋根の上へ消えて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。