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Aetheria Chronicle  作者: 豆大福


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3/6

3. 12倍の空白時間

「〜〜〜♪」


深夜一時。


【はじまりの都・アルカディア】の中層区にある大通りの石畳を、僕は軽快な足取りで歩いていた。


街灯の魔導具がやわらかな橙色の光を投げかけているが、通りには僕以外のプレイヤーの姿はほとんどない。たまに自警団の甲冑NPCがガシャコン、ガシャコンと重い足音を立てて巡回しているくらいだ。


それもそのはず。

現実世界では、今ごろ深夜の一時すぎ。

サッカー部のシオンも、陸上部のケットも、受験生のセラも、「じゃあ明日(の夜)ね〜!」と言ってログアウトしていった。


だが——ここに、このゲームの最大の「狂気」が存在する。


『Aetheria Chronicle』の時間倍率は、現実の12倍。

現実世界での1時間は、ゲーム内での12時間。


「……つまりだ」


僕は頭の上の黒い猫耳をピコピコと動かし、指折り計算する。


「みんなが現実で『7時間』ぐっすり寝て、明日の夜にログインしてくるまでに……ゲーム内では『84時間(3日半)』が経過する」


現実ではたった一晩。

けれど、部活も入っていなくて放課後が暇な僕にとって、ゲームの中には丸々「3日半」という膨大な自由時間が横たわっているのだ。


「昼間は大湿原でカエルを狩ってレベルも4まで上がったし……。せっかくの3日半、ボーッと待ってるのは勿体なさすぎる」


僕は腰のポーチをぽんぽんと叩いた。

中には、昼間の戦闘で手に入れた『ヌマヒキガエルのもも肉』や『粘着液』、そして採取スキルで摘み集めた薬草類がどっさりと詰まっている。


「よし、今夜(ゲーム内の3日分)は、調合スキルのレベル上げと、街の未開拓エリアの探索に費やすとしよう!」


黒猫耳の暗視補正(【野性の直感】)を活かし、僕の足取りは夜の街へと吸い込まれていった。

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