第8話 終わらない戦争
戦場は、一つ終われば、すぐに次が来た。
森を抜けた先の村。
川沿いに築かれた砦。
乾いた風が吹く丘。
場所が変わっても、起きていることは同じだった。
魔族兵は前へ出て、剣を振るい、倒れるまで止まらない。
エリシアもまた、戦いがあれば剣を抜いた。
誰かに命じられたわけではない。
報酬を約束されたわけでもない。
ただ、助けを求める声が聞こえれば、その方角へ向かう。
(もう少し、自分の身体を大事にしてほしいんだが)
俺が鳴いたところで、エリシアの耳には鳥の声にしか聞こえない。
仮に言葉が通じたとしても、彼女が足を止めるとは思えなかった。
だから俺は、頭上を飛んだ。
高い位置から戦場を見渡し、死角へ回ろうとする敵を探す。
影から影へ移り、剣を持つ腕を狙う。
敵の陣形を崩し、エリシアが斬り込む道を作る。
最初は偶然に近かった連携も、今では言葉を必要としなくなっていた。
エリシアが踏み込めば、俺は背後を見る。
俺が敵の視線を上へ向ければ、エリシアは迷わず懐へ入る。
剣と翼。
黒い鎧と、黒い羽。
互いに足りないものを補うように、二人で戦った。
それでも、戦争は終わらない。
倒した兵の数だけ、新しい兵が現れる。
救った村の向こうでは、別の村が燃えている。
前線を押し返しても、数日後には別の場所が前線になる。
(どこまで続くんだ、これは)
答える者はいなかった。
エリシアも何も言わない。
夜になれば剣を手入れし、朝になれば再び歩き出す。
そして、また戦う。
そんな日々の中。
最初から、何かがおかしい戦場があった。




