盗賊
チリチリチリチリ――
部屋中に置き時計のアラームが鳴り響く。
「ふぁぁ……よく寝たっす」
ベッドの上で茶髪のオールバックの青年が大きな欠伸をする。
土曜日の人格――サタ・ウィークだ。
サタはベッドから起き上がると、机の上に置いてあったネックレスとブレスレットを身に着ける。
「今日も配達の仕事っすね〜」
軽く伸びをした後、部屋を出た。
チューズ、ウェン、サースが使っていた部屋だが、今日いるのはサタだけだった。
⸻
超能隊本部の前に到着すると、既に二人の男が待っていた。
「サタも来たか」
白塗りの顔にリーゼント。
ゴエモン・イシが手を振る。
その隣には細目の男、ポート・オライアスが立っていた。
「じゃあいつもの割り振りだ。俺が東区。ポートが西区と南区。サタは北区な」
「また僕だけ二ヶ所担当ですか?」
ポートが露骨に嫌そうな顔をする。
「たまにはゴエモンさんが二ヶ所やってくださいよ」
「お前の能力なら一瞬だろうが」
ゴエモンは呆れたように肩をすくめた。
「ケチケチ言わずに頼むわ」
「はぁ……めんどくさいなぁ」
ポートは大きな溜息を吐く。
「まぁやりますけど」
「サタはそれでいいか?」
「大丈夫っす!」
サタは元気よく親指を立てた。
「よし、じゃあ頼んだぞ」
ゴエモンが二人の肩を軽く叩く。
「はーい」
返事と同時にポートの姿が消えた。
瞬間移動だ。
一方サタの足元には砂が集まり始める。
集まった砂は渦を巻きながらサタを持ち上げた。
「行ってくるっす!」
砂の足場に乗ったサタは空へ飛び立つ。
その姿を見送りながらゴエモンが呟いた。
「便利だよなぁ、あいつらの能力」
屋根の上へ飛び乗る。
「こっちは走りだってのに」
愚痴をこぼしながら屋根伝いに駆け出した。
⸻
数時間後。
「お届け物は以上になるっす!失礼するっす!」
サタは荷物を玄関へ運び終え、深々と頭を下げる。
「待っておくれ」
家の中から老婆が声をかけた。
「どうしたんすか?」
「実はのぉ……」
老婆は不安そうな表情を浮かべる。
「孫のアルーシカが帰ってこないんじゃ」
サタの表情が変わった。
「帰ってこない?」
「森へキノコ採りに行くと言っておったんじゃが……もう日が暮れそうなのに戻らん」
老婆は今にも泣き出しそうだった。
「それは心配っすね」
サタは即答する。
「ちょうど配達も終わったので探してくるっす!」
「本当かい?」
老婆の顔が明るくなる。
「ありがとうのぉ」
老婆は懐から丸い団子のような物を取り出した。
「これはわしの能力で作った薬じゃ」
「怪我をした時に飲めば治る」
「手間賃として受け取っておくれ」
「ありがとうございます!」
サタは薬を受け取る。
「じゃあ探してくるっす!」
⸻
家を出ると、サタは空高く砂を舞い上げた。
砂は空中で巨大なSの文字を作る。
「見てくれるといいんすけどね〜」
すると数秒後。
サタの隣に人影が現れた。
ポートだ。
「何かあったのか?」
「実は――」
サタは事情を説明する。
⸻
「なるほどな」
話を聞き終えたポートが頷く。
「じゃあ俺はゴエモンさんに知らせてくる」
「サタは先に探してくれ」
「了解っす!」
ポートは再び姿を消した。
「じゃあ行きますか!」
サタは砂を足に纏わせ、森へ向かって飛んでいく。
⸻
森へ到着したサタは木々を見上げた。
「流石に森の中は上から探せないっすね〜」
砂を解き、徒歩で探索を始める。
すると――
「西の方じゃ子供が高く売れるらしいぞ」
男の声が聞こえた。
サタはすぐ近くの木の陰へ隠れる。
「マジか?」
「次もガキを攫えたら大儲けだな」
ボロボロの服を着た男が二人。
腰にはナイフを差している。
「なるほど」
背後から声がした。
振り向くとポートが立っていた。
「どうやらあいつらだな」
「みたいっすね」
サタは頷く。
「締めて場所を聞きましょうか」
「だな」
⸻
サタが片手を伸ばした。
男達の足元から砂が集まる。
「ん?」
一人が異変に気付く。
だが遅い。
砂が一瞬で全身を包み込んだ。
「なっ!?」
「襲撃だ!」
もう一人は逃げ出そうとする。
しかし。
その目の前にポートが現れた。
「逃がすか」
ドゴッ!!
強烈な拳が男の腹へ突き刺さる。
男は白目を剥いて倒れた。
⸻
拘束された男の前へ二人が立つ。
男の手足は砂で縛られていた。
「騒ぐなよ」
ポートが冷たく言う。
「騒いだら少し痛い目を見る」
「攫った子供はどこっすか?」
サタが尋ねる。
男は鼻で笑った。
「超能隊か?」
「舐めるなよ」
「俺達はダチュラ盗賊団だ」
サタとポートが顔を見合わせる。
超国最大の盗賊団。
その名前は二人も知っていた。
「口が硬そうだな」
ポートが呟く。
「大丈夫っす」
サタは空を指差した。
「印を出してるので、もう来るはずっす」
「噂をすればだな」
ポートが上を見る。
木々の上を飛ぶように移動する人影が見えた。
⸻
「悪い、遅くなった」
ゴエモンだった。
「ちょうどいいところっす」
サタが事情を説明する。
「なるほどな」
ゴエモンは男の前にしゃがみ込んだ。
「じゃあ俺の出番だ」
男を見据える。
「攫った子供はどこだ?」
「誰が言うかよ」
男は吐き捨てる。
ポキッ。
次の瞬間。
男の鼻が曲がった。
声にならない悲鳴が漏れる。
「次は素直に答えてくれよ」
ゴエモンは笑顔だった。
それが逆に怖い。
「子供はどこだ?」
「くっ……!」
男の顔が青ざめる。
「海の方だ!」
「嘘だな」
即答だった。
「俺には嘘が分かる」
男の顔から血の気が引く。
「次に嘘をついたらどうなるか分かるよな?」
「ま、待て!」
男は慌てて叫ぶ。
「そこの木を見ろ!」
指差した先の木には小さな十字傷が刻まれていた。
「その印を辿れば拠点に着く!」
ゴエモンは数秒男を見つめる。
そして頷いた。
「今度は本当みたいだな」
ドゴッ!
腹に蹴りを叩き込む。
男は白目を剥いて気絶した。
「案内ご苦労さん」
サタが砂の拘束を解く。
「じゃあ行くぞ」
ゴエモンが立ち上がる。
三人は木に刻まれた印を追い、森の奥へと進んでいった。




