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unlimited  作者: 轟号剛


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チェス・アルリム・キング

「unlimited」


チェスの左胸が強く輝く。


すると、その全身から眩い金色の光が溢れ出した。


周囲に降り注いでいた雨や雪は、その光を避けるように軌道を変え、チェスに近づくことすらできない。


「ほぉ……」


「東の国でもそれを使える者がおったとはな」


ウェザーは感心したように目を細める。


「それは昔、キクレンが魔王復活の研究をしていた際に辿り着いた超能力の真髄」


「まさかその技法が、この国にまで伝わっておったとはな」


しかし、チェスは興味なさげに髭を撫でるだけだった。


「確かにこの力は強大じゃ」


「じゃが、使えば命を落とす禁技」


「そんなものを、まだ幼い子供達に使わせるなど……許されることではないぞ!!」


初めてチェスの顔に怒りが浮かぶ。


背負っていた長槍を取り出し、その切っ先をウェザーへ向けた。


「ふん」


「俺が育ててきた命をどう使おうが俺の自由であろう」


ウェザーが左手を掲げる。


雷。


雪。


雨。


風。


四つの災厄が同時にチェスへ襲いかかる。


「お前が育ててきた子供達は、我が国から攫っていった者達じゃ」


「帰るべき家にも帰れず」


「母国を滅ぼす兵隊として生きる」


「これほど悲しいことがあるものか!!」


四方から迫る攻撃。


しかし、それらはチェスの金色の光に触れた瞬間、避けるように弾かれていく。


「座が高いぞ」


その瞬間。


ウェザーの周囲の空間が歪んだ。


「なっ!?」


ウェザーの体は地面へ叩きつけられ、うつ伏せのまま押さえつけられる。


「なんだ……この力は……!」


両腕に力を込めて立ち上がろうとする。


しかし、目に見えない圧力が全身を押さえ込み、身動きが取れない。


「風よ!!」


周囲の風を操り、自らの体を持ち上げていく。


「流石は限界を超えた力」


「だが、このような力は見たことがないぞ」


ウェザーは巨大な雪塊を生み出し、チェスへ放つ。


しかし、それらは全て金色の光を恐れるように軌道を逸らされていく。


「ならば近接はどうだ!」


ウェザーは全身を雷で包む。


凄まじい速度でチェスへ肉薄した。


雷勁(ライケイ)!」


雷を纏った左手がチェスへ突き刺さる。


しかし――


「ぐっ!?」


金色の光に触れた瞬間。


ウェザーの体は再び地面へ叩き落とされた。


「お主だけは許すことができんのぉ」


「ここで、昔の因縁を断ち切らせてもらうぞ」


チェスは金色の光を纏わせた長槍を振りかぶる。


そして、


地に伏すウェザーへ向かって投げ放った。


「舐めるなぁぁぁ!!」


「東の国の人間風情がぁぁぁ!!」


迫り来る長槍。


その時。


ウェザーの左胸が激しく輝き始める。


「unlimited」


今度はウェザーの全身から虹色の光が溢れ出した。


失われた右腕も虹色の光によって再構築されていく。


「なに……!?」


チェスが初めて目を見開く。


そして、


虹色に輝く右手が――


迫る金色の長槍を掴み止めた。


「まさか、私まで使わされるとはな」


ウェザーは苦笑を浮かべる。


「どうせこの命、捨てる覚悟はできていた。 だが、ここまでの猛者がいるとは思わなかったぞ」


ウェザーは受け止めた長槍をチェスへ投げ返す。


しかし、長槍の先端がチェスを覆う金色の光に触れた瞬間、その場で止まった。


「いくらお主が強くなろうと、ワシには勝てんよ」


チェスは長槍を握り直すと、再び金色の光を纏わせながらウェザーを見下ろす。


「ぬかせ!」


虹道(レインボーロード)


ウェザーの右腕から虹色の光が放たれる。


虹はチェスの横腹をかすめるように通り過ぎた。


だが。


「爆ぜろ」


ドゴォォン!!


チェスの横腹が突然爆発を起こし、大きく抉られる。


「ホッホッホ」


「流石じゃな」


それでもチェスは余裕の笑みを浮かべる。


「だが、お互い死ぬと決まった命」


「この程度の損傷、何ともないじゃろう」


チェスが長槍を振り下ろす。


その一撃によって、ウェザーの残っていた左腕は粉々に砕け散った。


「ハッハッハッ!!」


「そうだな!」


「この戦いは、どちらかの息の根が止まるまで終わらん!!」


失われた左腕からも虹色の光が溢れ出し、新たな腕が形成される。


ウェザーは親指と人差し指を立て、銃の形を作る。


虹弾(レインバレット)


虹色の弾丸が放たれる。


目にも止まらぬ速度で飛来した弾丸は、チェスの左胸を狙っていた。


チェスは長槍で受け止める。


しかし、


ドン!!


弾丸は爆発し、長槍を粉々に砕いてしまった。


(お互い強さは均衡している)


(少しのきっかけで、この均衡は崩れるじゃろうな)


チェスは全身に黄金の光を纏ったまま駆け出す。


「これで終わりじゃ!!」


「終わらせるのはこっちだ!!」


ウェザーも虹色の光を纏い、一気に飛び出す。


二人が激突しようとしたその瞬間。


「キング、今までありがとうございました」


横から一つの影が飛び込んできた。


「ポーン!?」


チェスが目を見開く。


ポーンはハンマーを振り上げ、ウェザーへ叩きつける。


そして振り向きざま、


チェスに微笑みかけた。


「キング」


「後はお願いします」


「やめるのじゃ!!」


しかし、


ウェザーは割り込んできたポーンへ手をかざす。


「邪魔だ」


次の瞬間。


ポーンの体は虹色の光に包まれ、


粉々に爆散した。


「うぉぉぉぉぉ!!!」


ウェザーがポーンへ意識を向けた、その一瞬。


チェスの拳が、


黄金の光を纏った拳が、


ウェザーの左胸を貫いていた。


「がっ……!」


拳の先には、


今なお輝き続ける左胸の光。


そして、


チェスの顔には、


怒りとも悲しみともつかない表情が浮かんでいた。


「ゴホッッ……!」


ウェザーは大量の血を吐き出す。


左胸を貫かれたことで、全身を覆っていた虹色の輝きは徐々に薄れていく。


「まさか……」


「この私までやられてしまうとはな……」


ウェザーはチェスを押し返し、ふらつきながら距離を取る。


胸に開いた大穴からは大量の血が流れ続けており、誰が見ても致命傷であった。


「だが……」


「このままで終わりはせんぞ!」


口元から血を流しながらも、その瞳には未だ深い闇が宿っている。


「何を企んでおるかは知らん」


「ここで終わりじゃ」


チェスは再び金色の光を拳に纏わせる。


今度こそ終わらせる。


そう確信し、ウェザーへ拳を振り下ろそうとした。


しかし。


「ハッ……ハッハッハッ……」


ウェザーは血を吐きながらも不気味に笑い始める。


「儀式は……」


「たった今完成した!!」


その瞬間。


ゴォォォォォ!!


ウェザーの足元から巨大な赤い光の柱が天へ向かって伸びる。


「なっ……!」


チェスの表情が凍りつく。


「これは……」


「まさか……!?」


長い人生の中で初めて見るほどの驚愕。


対するウェザーは、


死にゆく体を支えながら、


口元を歪ませていた。


「ククク……」


「ようやくだ……」


ウェザーは勝ち誇ったように笑った。


赤い光の柱はさらに巨大になっていくのだった――。

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