四天解離
雷のウェザーとアクア。
風のウェザーとブレイク。
雨のウェザーとフレイ。
雪のウェザーとゴクウ、ハッカイ。
分離した四人のウェザーは、それぞれ超能隊の面々と向かい合っていた。
「雷鞭」
雷のウェザーの両手から長大な雷のムチが生み出される。
二本のムチは蛇のようにうねりながらアクアへ襲いかかった。
(……水で防いだら感電する)
アクアは足裏から水を噴射し、その勢いを利用して空中を自在に飛び回る。
雷のムチを華麗に回避しながら、一気に距離を詰めていく。
「雷放」
雷のウェザーが両手を合わせる。
二本のムチは一つとなり、次の瞬間、周囲へ激しく放電した。
「ぐあぁぁ!!」
回避しきれなかったアクアは全身に雷撃を受け、地面へ墜落する。
「アクア!!」
助けに向かおうとしたフレイの前に、
「切雨」
雨のウェザーが立ちはだかる。
無数の雨弾が矢のように降り注ぎ、フレイの進路を塞いだ。
「くっ……しょうがねぇ」
「炎魔」
フレイの全身から炎が噴き出し、巨大な灼熱の魔人が現れる。
魔人の熱量によって、迫る雨弾は蒸発していく。
しかし、その間にもアクアは地面に倒れ込んでいた。
雷のウェザーは雷でできた槍を作り出し、今まさにアクアへ突き立てようとしていた。
「獄炎・魔人の怒り」
魔人の両手に巨大な火球が生成される。
その瞬間。
シュン!
雷のウェザーは全身を雷へ変化させ、一瞬でフレイの頭上へ移動した。
「切雨」
「雷鞭」
雷のムチが魔人の両腕へ巻き付き、その動きを封じる。
そこへ背後から雨のウェザーが雨弾を放つ。
「くっ……!」
苦悶の表情を浮かべるフレイ。
そして大きく口を開く。
それに合わせて魔人も口を開き、膨大な炎を集約していく。
「獄炎・魔人の息吹」
轟音と共に放たれた灼熱の奔流。
雷のウェザーは即座に電撃の球状結界を展開する。
だが。
凄まじい火力の前では意味を成さなかった。
バキィ!!
結界は砕け散り、
「なっ……」
雷のウェザーは消し炭となって消滅した。
すると。
消えた雷のウェザーから小さな雷球が飛び出し、雨のウェザーへ吸収される。
「……」
吸収された瞬間、雨のウェザーの周囲に雷が走る。
「雨渦」
無数の雨弾が渦を描きながら魔人を包囲し、一斉に襲いかかる。
「意識が……」
「そろそろ限界だ……」
フレイは苦しげに呟く。
今日二度目の魔人化。
それに加え、激戦によるダメージ。
すでに限界は近かった。
「最後に……こいつだけでも……!」
魔人は再び口を大きく開く。
しかし、
「雷鮫」
今度の雨のウェザーは、雷を纏った巨大な鮫を生み出した。
火炎の奔流と雷鮫が正面から激突する。
雷鮫は消滅するが、なおも火炎は雨のウェザーへ迫る。
「雨壁」
周囲の雨が集まり巨大な壁を形成する。
激突。
ジュゥゥゥッ!!
火炎と雨壁は互いを蒸発させながら消滅した。
「……ここまでか」
最後の力を使い果たしたフレイ。
魔人は崩れるように消滅し、
フレイ自身もその場に倒れ込む。
そして、
静かに目を閉じた。
-
風のウェザーと戦闘を繰り広げているブレイクは、遠距離から一方的に攻撃を仕掛けてくる相手に対し、一向に距離を詰められずにいた。
「私の能力では風を消すことができないと、早々に見抜かれてしまったようだな」
ブレイクの能力、『消滅させる右手』は、右手で触れた物を消し去る能力である。
しかし、風のような実体のないものや概念そのものを消し去ることはできない。
「鎌鼬」
風のウェザーが腕を振るう。
放たれた風の刃は地面を深くえぐりながら一直線に迫ってくる。
一撃でも受ければ無事では済まない威力だ。
ブレイクはその攻撃をひたすら回避しているが、近づくことができないため徐々に体力を削られていた。
「……試してみるか」
ブレイクはしゃがみ込むと、左手で地面の土を掴む。
そして迫ってくる鎌鼬に向かって投げつけた。
「消滅させる右手」
土が風の刃に混ざった瞬間、ブレイクは右手を突き出す。
すると、土ごと鎌鼬は跡形もなく消滅した。
「何?」
風のウェザーは初めて驚きの声を漏らす。
「なるほど、やってみるものだな」
ブレイクは自慢げに右手を握る。
「実体のない風そのものは消せなくとも、実体のある物を混ぜれば話は別か」
そう呟くと、再び左手で土を掴み取る。
「今度はこちらから行かせてもらうぞ」
ブレイクは風のウェザーを真っ直ぐ見据え、そのまま駆け出した。
-
雪のウェザーと戦闘を繰り広げるゴクウとハッカイ。
しかし、二人の体はところどころ凍りついており、徐々に動きが鈍くなっていた。
「ハッカイ、援護してくれ!」
ゴクウは白い煙に乗りながら、宙に浮かぶ雪のウェザーへ向かって飛んでいく。
「いくぞ~!」
ハッカイは右手を巨大化させると、地面を抉って大量の土石を掴み取る。
そして、雪のウェザー目掛けて思い切り投げつけた。
「雪達磨」
雪のウェザーは巨大な雪だるまを生み出し、飛来する土石を防ぐ。
その直後。
上空からゴクウが襲いかかる。
「黒煙・針」
腰に装着していた黒玉が四本の太い針へと変化し、雪のウェザーへ放たれる。
「雪崩」
大量の雪が押し寄せ、黒煙の針を飲み込む。
さらに、そのままゴクウの体まで飲み込んでしまった。
「ゴクウ!!」
「巨手衝撃!」
ハッカイは巨大化させた拳で雪崩を殴りつける。
轟音と共に雪崩は吹き飛び、その中心には黒い塊が残っていた。
やがて塊は煙となって消えていく。
その中から現れたのはゴクウだった。
黒煙によって雪崩を防いでいたのである。
「助かったぜ。サンキューな、ハッカイ!」
ゴクウは再び雪のウェザーへ接近する。
しかし、
「雪玉」
無数の雪玉がゴクウへ向かって放たれる。
ゴクウは素早い動きで次々と回避し、そのまま雪のウェザーへ肉薄すると棒を振り下ろした。
雪のウェザーは腕を雪で覆い、防御する。
「黒煙・爆」
棒の先端に集めた黒煙が爆発を起こし、両者は少し距離を取る。
「ハッカイ!」
ゴクウの横を巨大な拳が通り抜ける。
次の瞬間。
雪のウェザーはハッカイの一撃をまともに受け、粉々に砕け散った。
残されたのは小さな雪玉だけ。
「やった──」
「うわぁぁぁ!!」
突如、ハッカイの体に雷が落ちる。
「ハッカイ!」
全身を焼かれたハッカイは、その場へ倒れ込んだ。
「チッ!」
「黒煙・針!」
ゴクウは舌打ちすると、黒煙の針をハッカイの背後へ向けて放つ。
そこには、いつの間にかウェザーが立っていた。
「雨降」
大量の雨が降り注ぎ、黒煙の針をかき消していく。
その間に、雪のウェザーの核だった雪玉がウェザーの体へ吸収される。
すると、ウェザーの周囲に粉雪が舞い始めた。
「オラァァァ!!」
ゴクウは一気に距離を詰め、棒を何度も振るう。
しかし、
舞い散る粉雪が瞬時に凍りつき、幾重もの壁となって攻撃を防いでしまう。
「お前もこれで終わりだ」
その瞬間。
ウェザーの雷を纏った腕が、ゴクウの腹部を貫いていた。
「ゴホッ……!」
大量の血を吐き出し、ゴクウは棒を取り落とす。
「道連れ……だ!」
「黒煙・爆」
腰に巻かれていた黒玉が一斉に爆発する。
轟音と共にウェザーを飲み込んでいく。
やがて爆炎が収まる。
黒焦げとなったゴクウの体は、そのまま地面へと落下していった。
対するウェザーは変わらず空中に立っていた。
しかし、その体にもゴクウと同じように無数の焦げ跡が刻まれている。
「クッ……こやつら、揃いも揃って悪あがきを……」
ウェザーは落下していくゴクウを睨みつける。
そしてゆっくりと顔を上げると、
視線の先には最後に残った男──ブレイクの姿があった。
「全員やられてしまったか……」
ちょうどその頃、ブレイクは風のウェザーに右手を触れさせ、その体を消滅させていた。
消えた風のウェザーから小さな風の玉が現れ、本体であるウェザーの元へと吸い込まれていく。
「お前一人になってしまえば脅威ではない」
ウェザーは残された左手をブレイクに向ける。
次の瞬間。
左手から放たれる風の刃。
空から降り注ぐ雷。
足元から這い上がる氷雪。
さらに周囲の雨までもが弾丸となって、一斉にブレイクへ襲いかかる。
「対処……しきれない!」
ブレイクは右手で頭上の雷と足元の雪を消し去る。
しかし、その隙に無数の雨弾が体を撃ち抜き、さらに風の刃が胸元を斜めに切り裂いた。
「ぐっ……!」
大きくよろめき、左手で傷口を押さえる。
それでもブレイクは倒れない。
「ここで……負けるわけにはいかないのだ」
「お前にこの国は壊させない」
「私達が、この国を守るのだ!!」
血を流しながらも立ち上がると、ふらつく足で一歩ずつウェザーへ向かっていく。
「では望み通り、お前を殺してこの国を壊してやろう」
ウェザーが再び左手をブレイクへ向ける。
その時だった。
背後に気配を感じ取ったウェザーが目を細める。
「ホッホッホッ。ブレイク、もう休んでおれ」
「後はワシに任せておけ」
「チェス……さん」
「後は……頼みます」
ブレイクはチェスの姿を見た瞬間、張り詰めていたものが切れたように倒れ込む。
「なんだ、まだおったのか」
ウェザーは振り返り、チェスと正面から向き合う。
「随分と好き放題やってくれたのう」
「サイラクの怨念よ」
チェスは穏やかな笑みを浮かべたまま語りかける。
「誰が来ようと同じこと」
「全て壊してやる」
ウェザーは左手をチェスに向ける。
だが、チェスは全く動じない。
「クイーンもナイトも戦闘不能」
「ポーン、ルーク、ビショップを呼び出したところで、こやつには勝てんじゃろう」
チェスは静かに空を見上げる。
「ということは……」
「とうとう来てしまったようじゃの」
「ワシの命を燃やす時が」
そう呟いた老校長の表情から、いつもの優しい笑みが消えた。




