ウェザー
上空でウェザーと戦っていたゴクウ、ブレイク、アクア、そしてハッカイの四人は、既に全身傷だらけになっていた。
「子供達は全員やられてしまったようだな」
ウェザーは戦況を把握しているようで、四人を見下ろしながら漆黒の瞳を細める。
「想像以上に使えない奴らだった」
「てめぇの仲間だろ!!」
ゴクウが怒鳴る。
しかしウェザーは何とも思っていないようだった。
「所詮、奴らは駒の一つ」
「それ以上でもそれ以下でもない」
「長い年月をかけて育ててやったというのに、一人も倒せんとは……失望しかないわ」
ウェザーが手を振る。
吹き荒れる風が四人を襲った。
「ぐっ!」
「近づけねぇ!」
アクアが歯を食いしばる。
「奴に近づけなければ倒せない!」
風と雨が常にウェザーを守っている。
誰一人として間合いに入れない。
「貴様らとの遊びにも飽きてきた」
「終わらせてもらうぞ」
ウェザーが両手を天へ掲げる。
周囲の雨。
吹き荒れる風。
そして雷。
全てが渦を巻き始める。
「さっきのやつだ!」
「まずいよ!!」
ハッカイは巨大化した右腕を伸ばし、ウェザーへ殴りかかる。
しかし。
上空から降り注いだ雷が直撃する。
「うわぁぁぁ!!」
足場の白煙が消え、ハッカイは真っ逆さまに落下していった。
「ハッカイ!」
ゴクウは思わず振り返る。
だが、すぐに前を向いた。
「あいつなら大丈夫だ!」
「それよりも、奴の技を止める!!」
「そんなぁ!!」
落下しながらハッカイは絶望の表情を浮かべる。
「見捨てられたぁぁ!!」
しかしすぐに全身を巨大化させ、丸くなることで衝撃を和らげる体勢を取る。
「何をしようと無駄だ」
「災害の前では全てが無に帰る」
「崩天」
再び巨大な竜巻が発生し始める。
その瞬間。
シュン。
ウェザーの背後にポートが現れた。
無言でナイフを首元へ振り抜く。
「瞬間移動の能力者か」
ウェザーは冷静だった。
「その能力は報告を受け、既に知っておる」
ウェザーの体は雷へと変化し、数メートル下へ移動する。
元いた場所には雷の塊だけが残されていた。
「なっ!」
ポートのナイフが雷塊に触れる。
バチィィ!!
「ぐあぁっ!」
全身を電撃が駆け巡り、ポートは吹き飛ばされた。
ウェザーは勝ち誇ったように笑う。
「超能隊の能力は全て把握済み」
「貴様らが何をしようと無駄な――」
シュン。
「……?」
ウェザーの言葉が止まる。
何か細長いものが自分の横を通り過ぎた。
次の瞬間。
ドサッ。
左腕が宙を舞った。
「な……!?」
ウェザーは初めて動揺した。
切断面から血を吹き出しながら、その原因を探す。
そこには。
異様なほど長く伸びた刀があった。
刀身はスルスルと縮んでいき、元の長さへ戻る。
そして。
その刀を肩に担ぐ男が、不敵に笑っていた。
「へっ」
「これで俺の役目は果たせたか?」
元超能隊。
イゾウ・オカであった。
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⸻
超能隊本部 地下B2F
物音一つしない静かな地下牢。
そこに一人の来訪者が現れる。
「よぉ、久しぶりじゃねぇか」
「差し入れでも持ってきてくれたのか?」
牢屋の中で胡坐をかいていた男――イゾウ・オカは、近づいてきた人物を見ると口元を緩める。
その人物は牢屋の前で立ち止まった。
「いや、仮釈放です」
「敵襲のため、力を貸してください」
ポートはそう告げると、牢屋の鍵を開ける。
さらにイゾウの両手を拘束していた手錠の鍵も外した。
「ん~、久しぶりの自由だぜ」
イゾウは肩を回しながら大きく伸びをする。
「俺を出すほどの事態なのか?」
ポートは各地の戦況を説明した。
西の集落。
各地で起こる戦闘。
そして、現在も上空で続いているボスとの激戦。
「……というわけで、残る敵はボスのみです」
「ですが、そのボスの撃退に力を貸してほしいんです」
「ふーん」
「これ、お前の独断か?」
「ブレイクさんは今、その敵と戦ってんだろ?」
イゾウは指をポキポキと鳴らしながら問いかける。
「違いますよ」
「元老院のスーザンさんから、ちゃんと許可を貰っています」
「それに――」
ポートは壁に立てかけてあった一本の刀を手に取る。
「活躍次第では釈放も考えると、言質もいただきました」
そう言って差し出したのは、イゾウの愛刀。
肥前忠広。
「ほぉ……」
「それは本当だな?」
イゾウは刀を受け取る。
そして。
カチリ。
刀の鍔を親指で押し上げる。
「……」
今まで気の抜けたような目をしていた男の雰囲気が、一瞬で変わる。
鋭い眼光。
獲物を狙う猛獣のような殺気。
「なら、俺も一肌脱がねぇとな」
イゾウは不敵に笑う。
「久しぶりに暴れられるってんなら、腕が鳴るぜ」
⸻
ウェザーの左腕を切り落としたイゾウは、伸ばしていた刀を元の長さへ戻すと、したり顔を浮かべる。
「へっ、これで釈放レベルの活躍はできただろ!」
その時だった。
周囲だけを覆っていた雷雲が、国全体を覆い尽くすほどの規模へ膨れ上がる。
「貴様ぁぁぁ!!」
ウェザーは怒りに顔を歪めると、全身を雷へ変化させてイゾウ目掛けて落下する。
「危なっ!」
イゾウは間一髪で回避し、そのまま刀を伸ばしてウェザーを切り裂こうとする。
だが。
ゴロゴロゴロ――!!
時間差で上空から雷が落ちる。
刀を振るっていたイゾウは避けることができず、まともに雷撃を受けてしまった。
「ガッ……!」
「しくじっ……ちまった……」
イゾウは仰向けのまま倒れ込む。
ウェザーは風を纏いながら急降下する。
「貴様だけは許さん!!」
切断された左腕は雪によって凍結されており、その先には鋭い雪の剣が形成されていた。
気絶したイゾウに逃げる術はない。
その時。
「火炎防壁」
二人の間に巨大な炎の壁が出現する。
「……!」
さらにその前へ、一人の男が立ちはだかった。
「パシーから連絡を受けていたが……」
「お前がまた、この国のために戦っているなんてな」
フレイだった。
返事のないイゾウに語りかけながら、炎を全身に纏う。
「どけぇ!!」
「切雨!」
ウェザーが無数の雨弾を降り注がせる。
「私がいる限り、水は使わせないよ」
上空からアクアが降り立つ。
雨弾は彼女の能力によって霧へと変わっていった。
「やっと地上まで降りてきたか」
白い煙に乗ったゴクウとブレイクも降下してくる。
ブレイクは静かに地上へ降り立った。
「ゴジョウ、ポート、イゾウ……」
「随分とやられたものだな」
「ハッカイもな」
ゴクウが腰の黒玉を一つ取り出す。
黒玉は煙となり、手に持つ棒へ纏わりついていく。
「勝手に除外しないでよ〜」
ガレキを吹き飛ばしながら巨大な手が現れる。
「ハッカイ!」
「お〜、無事だったか!」
「流石頑丈だな!」
「僕が落ちる時に助けてくれても良かったんじゃない?」
ジト目で睨むハッカイ。
ゴクウはグッドサインを返す。
「おめーは頑丈だから大丈夫だと思ってたんだよ」
「それにしては、さっき戦闘不能扱いしてたけどね」
そんなやり取りをよそに。
ウェザーの周囲では風、雷、雨、雪が激しく渦巻いていた。
「もういい」
「全員まとめて相手をしてやる」
「四天解離」
その瞬間。
ウェザーの姿が消える。
そして。
風。
雷。
雨。
雪。
四つの自然災害がそれぞれ別々の場所で人型を形成していく。
やがて。
四人のウェザーが現れた。
「一筋縄じゃいかなそうだな……」
フレイの額から一筋の汗が流れ落ちる。
汗が地面へ落ちる、その瞬間。
超能隊の面々は、一斉に分裂したウェザーへと駆け出した。




