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unlimited  作者: 轟号剛


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剛毅果断

異形の姿へと変貌したダイナを前に、バンは再び皮膚を赤く染め上げ、悪魔のような形相を見せる。


イスもすぐに小指から赤い糸を伸ばし、バンの小指へと繋げて強化を施した。


「あまり長く持たない、すぐに倒すよ!」


悪魔(デビル)(ウル)血拳(ナックル)!」


赤い光を纏ったバンが一気に距離を詰め、ダイナへ拳を振り上げる。


恐打(キョウダ)


ダイナもノーモーションで拳を突き出した。


二つの拳が激突すると、赤黒い衝撃波が周囲へ広がる。


一瞬は拮抗したように見えた。


しかし。


「くっ……力負けする……!」


バンの表情が苦痛に歪む。


「吹き飛べ」


次の瞬間、バンの体は勢いよく弾き飛ばされた。


赤い糸で繋がるイスも引っ張られるように一緒に吹き飛んでいく。


「なに?」


追撃しようと走り出したダイナだったが、足元の地面と自身の両足が凍りついていることに気付く。


「その左胸の輝き……どうやら間に合わなかったようですね」


背後から現れたのは、純白の鎧に身を包んだ騎士――クイーンであった。


「チッ、新手か」


ダイナは力任せに氷を引き剥がす。


その強靭な鱗を纏う足には傷一つ付いていない。


「それが話に聞く、命を代償に強大な力を得る秘技……」


クイーンは大剣を構える。


「お手合わせ願います」


「誰が来ても潰すだけだ!!」


ダイナは氷の地面を砕きながら突進する。


(ゼロ)氷山(アイスマウンテン)


クイーンが大剣を地面へ突き立てる。


瞬間。


巨大な氷山が出現し、ダイナを内部へ閉じ込めた。


「ガァァァ!!」


しかし。


ダイナは力任せに氷山を粉砕し、そのままクイーンへ飛びかかる。


(純粋な力比べでは勝てませんね。正面から勝負してはいけない)


クイーンは地面から氷の鎖を生み出し、ダイナの体を拘束する。


だが、その鎖もすぐに引きちぎられる。


しかし、その僅かな時間でクイーンは距離を取っていた。


(半端な技では効かない……)


(ですが、大技を放つには溜めが必要。その間にやられてしまう)


(さて、どうしたものか……)


冷静に状況を分析しながら、クイーンは氷を生み出してダイナの足止めを続ける。


「俺を忘れるんじゃねぇぇぇ!!!」


突如、上空から大声が響く。


そのまま巨大な影が落下してきた。


正体は象へ変身したビース。


巨体と落下の勢いを利用した体当たりが、ダイナを襲う。


ドォォォォン!!


「グォォォ!?」


さすがのダイナも体勢を崩し、地面へ叩きつけられる。


(チャンスが来ましたか)


クイーンの瞳が鋭く細まる。


周囲を漂っていた冷気が、ゆっくりと大剣へ集束していく。


白い息が漏れるほどの極寒。


大剣から発せられる冷気は、周囲の空気さえ凍らせ始めていた。


「させるかよ!!」


ビースの下敷きとなっていたダイナだったが、その異常な膂力で象の巨体を吹き飛ばす。


すぐさま立ち上がると、クイーンへ向かって駆け出した。


悪魔(デビル)(ウル)破天矢(ハテンヤ)!」


その瞬間。


背後から放たれた一本の黒い矢が、ダイナの右脚を貫いた。


「クソがぁぁぁ!!」


黒い矢はすぐに消滅する。


だが、その一瞬の足止めで十分だった。


「皆さん、ありがとうございます」


クイーンは静かに礼を口にすると、大剣に集めた冷気を極限まで圧縮する。


刀身は白い輝きを放ち、周囲の空間さえ凍り始める。


「絶対零度」


クイーンは一気に距離を詰める。


避けられないと判断したダイナは拳を振るう。


恐打(キョウダ)!」


拳と大剣が衝突した。


しかし。


次の瞬間。


ダイナの拳から全身へ、純白の氷が広がっていく。


それは今までの透明な氷とは違う。


絶対的な死を思わせる、真っ白な氷。


一瞬にしてダイナの全身は完全に凍結した。


「終わった……のか?」


傷だらけのビースが問いかける。


クイーンは小さく頷いた。


「はい。この技を受けて生きていた者は、これまで一人もいません」


「たとえ秘技によって強化されていたとしても、脱出は不可能です」


そう答えるクイーンだったが、その体にも異変が起きていた。


足先から徐々に氷が広がり始めている。


「この技は強力すぎるあまり、氷に耐性のある私でさえ凍結してしまいます」


「そして、解凍されるまで数時間……」


「これ以上の戦闘は不可能です」


「後は頼みます」


言い終えると同時に、クイーンの体も完全に凍りついた。


「おいおい……冗談じゃねーぞ」


ビースが乾いた声を漏らす。


すると。


凍りついたダイナの左胸が再び光り始めた。


その輝きは徐々に強くなっていく。


それに呼応するように、純白の氷にヒビが入る。


パキッ……


パキパキパキッ!!


「ゴォォォォォ!!」


轟音と共に、ダイナは全身を覆う氷を粉砕した。


「負け……られねぇんだ……」


「……あいつらの……ためにも……」


「俺は……絶対……勝た……」


「な……いと……いけ……」


しかし。


氷を砕いた代償はあまりにも大きかった。


左胸の輝きは急速に弱まっていく。


やがて。


完全に光を失った。


「……」


ダイナはその場に崩れ落ちる。


もう二度と立ち上がることはなかった。


「後味わりぃな……」


ビースは悲しげな表情を浮かべる。


やがて大粒の涙が頬を伝い始めた。


「くそっ……」


顔を手で覆い隠し、涙を拭う。


しかし、その涙が止まることはなかった。


目の前に倒れている男もまた。


守りたい仲間のために戦った、一人の戦士だったのだから。

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