時
中央広場
ビースとダイナは、それぞれ鷲とプテラノドンへ姿を変え、空中で激しく激突していた。
「ヒャッヒャッヒャッ! 俺たちもさっさと始めようぜ!」
タイムは両手から白い光を放つ球を生み出すと、イスとバンへ向けて放つ。
「イス、避けなさい!」
二人は左右へ飛び退く。
だが、白い球は軌道を変え、二人を追尾してきた。
「血操・網防」
バンの指先から飛んだ数滴の血液が網状に広がり、白い球を包み込む。
すると白い球は消え去り、網状の血液もその場で静止した。
「青い糸」
対するイスは右手の人差し指から青い糸を伸ばし、白い球を弾こうとする。
しかし、糸が白い球に触れた瞬間――イスの動きも止まってしまった。
(直接触れなくても駄目なのね。糸を介して接触しただけでも能力が発動するのか)
バンは素早く能力を分析する。
「血操・破魔矢」
今度は血液で作った矢をタイムへ放つ。
「無駄無駄ぁ!!」
タイムは顔の前に白い球を出現させる。
血の矢は白い球へ触れ、その場で停止した。
「こんなこともできるんだぜ!!」
「反転」
タイムが指を向ける。
停止していた血の矢が反転し、今度はバンへ向かって飛び出した。
(時間停止だけじゃない……巻き戻しもできるの?)
「血操・散」
血の矢はバンへ届く寸前で爆散する。
「私の能力が私に効くわけないでしょう?」
イスを行動不能にされた状況でも、バンは余裕を崩さない。
「ヒャッヒャッヒャッ! その澄ました顔を苦痛に満ちた表情で止めてやるよ!!」
タイムは高笑いすると、全身から白い光を放った。
「加速」
次の瞬間。
タイムは一瞬でバンの眼前へ現れ、その腹部へ拳を叩き込む。
「ぐっ!」
バンは咄嗟に体を捻る。
それでも拳は横腹へ突き刺さり、鈍い衝撃が走った。
「ヒャッヒャッヒャッ! 終わりだ!!」
タイムが白い光を纏ったままバンへ触れる。
イスと同じように、バンの動きも止まった。
「血操・分裂」
しかし次の瞬間。
バンの身体は十匹の蝙蝠へと分裂する。
一匹はその場で静止したままだったが、残る九匹はタイムから距離を取るように飛び去った。
離れた場所で再び集結すると、バンは元の姿へ戻る。
だが、その身体は先程より一回り小さくなっていた。
「ヒャッヒャッヒャッ! そういうのを無駄な足掻きって言うんだよ!!」
タイムは再び白い光を放ち、超高速でバンへ接近する。
「あなた、少しうるさいわよ?」
その瞬間。
バンの表情から余裕が消えた。
代わりに浮かんだのは怒り。
「血操・悪魔」
全身の血管が浮かび上がり、皮膚が赤黒く染まる。
血液は異常な速度で循環し、その身体から禍々しい圧力が放たれる。
だがタイムは怯まない。
「無駄なんだよぉぉぉ!!」
白い光を纏い、一瞬でバンの背後を取る。
――しかし。
「なっ!?」
タイムの足には青い糸が絡み付いていた。
動きを止められていたはずのイスが、いつの間にか糸を伸ばしていたのだ。
青い糸はタイムの身体を勢いよく上空へ引き上げる。
「なにっ!? ストップ!」
タイムが地面へ叩きつけられそうになった瞬間、青い糸へ停止の力を発動する。
青い糸は空中で静止し、タイムの体も宙に固定された。
しかし次の瞬間、タイムの周囲が真っ赤に染まる。
「これは……?」
タイムを中心に放たれる白い光。
その光へ触れないよう、無数の血液が半径一メートルほど離れた位置を球状に覆っていた。
「あなたの能力は三つ」
バンが右手を向ける。
「停止、加速、巻戻」
血の球体に閉じ込められたタイムを見据えながら続けた。
「でも、その三つは同時に使えない。切り替える時には必ず隙ができる」
タイムの表情が強張る。
「だからあなたは加速で私の近くまで来ても、一度止まってから能力を切り替えていた」
バンは確信していた。
「今は停止で私の能力を防いでいる。でも加速か巻戻に切り替えた瞬間――」
バンの瞳が鋭くなる。
「その時が終わりよ」
血の球体の中でタイムの額から汗が流れる。
(まずいまずいまずい……完全に見抜かれてる!)
タイムは必死に思考を巡らせる。
そして覚悟を決めた。
「バック」
(血を巻き戻して消す。その瞬間に加速へ切り替えて距離を取る!)
白い光が広がる。
しかし――
血は消えなかった。
血液は一斉に槍へ変形する。
「なっ――」
次の瞬間。
無数の血槍がタイムの体を貫いた。
「ガァァァァァ!!」
絶叫が中央広場へ響く。
白い光が消え、タイムは地面へ崩れ落ちた。
「だから言ったでしょう」
バンは静かに言う。
「切り替える瞬間を狙うって」
「なんでだ……」
タイムは血を吐きながら呟く。
「その女は……動けなかったはずだ……」
タイムの視線がイスへ向く。
その肩には一匹の蝙蝠が止まっていた。
先ほどバンが分裂した時の蝙蝠だ。
「まさか……」
「そのまさかだよ~!」
イスが笑顔で答える。
「蝙蝠さんに能力範囲の外まで運んでもらったの!」
タイムの目が見開かれる。
「市民を避難させた時に分かったんだ。能力範囲の外なら動けるってね!」
イスは肩の蝙蝠を優しく撫でる。
「見事な連携だったわね」
バンが手を掲げる。
タイムに刺さった血槍が溶けるように変形し、そのまま全身を拘束した。
「少し眠っていなさい」
タイムは悔しそうな表情のまま動かなくなった。
バンは空を見上げる。
「さぁ、イス。まだ戦えるわね?」
「はい! 傷もないので元気です!」
二人は同時に上空へ視線を向ける。
そこでは今なお、ビースとダイナの激しい空中戦が続いていた。




