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unlimited  作者: 轟号剛


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熊狼

北区 ハッカの森


ハット帽の女性・アミと、チーム・ファイターのムサシ、マグ、ゴエモンの三人による戦闘は激しさを増していた。


そんな中、三人の頭にパシーからの連絡が響く。


【戦闘中の皆さん緊急連絡です! 今回の敵は追い込まれると命を犠牲に強大な力を得るようです! 可能な限り早急に意識を奪ってください!】


「手早く仕留めろって? それができたら苦労しねーぞ」


狼の鉤爪をかわしながら、ゴエモンは愚痴をこぼす。


そして手に持つハンマーを勢いよく振り抜いた。


狼の横腹に直撃した一撃で、巨体は吹き飛ばされる。


だが狼は空中で体勢を立て直し、四本足で着地した。


「騒いでもしょうがねぇぜぃ!」


巨大な熊と対峙していたムサシは、二本の刀を巧みに操りながら熊の体へ傷を刻んでいく。


しかし次の瞬間。


熊の姿が掻き消え、代わりにアミが現れた。


「っ!」


不意を突かれたムサシの腹部に、一文字の深い斬撃が走る。


「急によく分からないことを言い始めたが……何かの能力で連絡を取り合っているのか?」


アミは刀を振って血を払いながら、被っているハット帽のつばに触れる。


「引力」


アミの肩が青く光る。


同時に、離れた位置で熊と向き合っていたマグの手が赤く光った。


するとアミの体は見えない力に引かれたかのようにマグへ向かって飛んでいく。


「ウルフ」


だが引き寄せられていたアミの姿は途中で消え、代わりに巨大な狼が現れた。


狼はそのままマグへ襲いかかる。


さらに背後からは熊も迫っていた。


完全に挟み撃ちだ。


しかしマグは慌てない。


赤く光る手を真上へ掲げる。


すると頭上の木の枝が青く光り、マグの体は引き寄せられるように空へ跳ね上がった。


熊と狼は寸前で攻撃を止め、同時に上を見上げる。


「今だ!!」


マグの掛け声が響く。


その瞬間。


ムサシが二本の刀を閃かせた。


これまでの戦闘で傷を重ねていた熊と狼の膝裏を正確に切り裂く。


二匹は支えを失い、その場に崩れ落ちた。



「煙玉」


一方その頃。


ゴエモンはアミの鋭い剣技によって少しずつ傷を増やしていた。


だが突然、手に持っていたハンマーが消える。


代わりに現れたのは灰色の玉だった。


ゴエモンはそれを地面へ叩きつける。


瞬く間に周囲は濃い煙で覆われた。


しかしアミは動揺しない。


その場で体を回転させながら剣を振るう。


巻き起こった風が煙を吹き飛ばした。


「あの時見せた消える能力か……」


アミは辺りを見渡す。


ゴエモンの姿はどこにもない。


だが次の瞬間。


アミは何もない空間へ向けて剣を振り抜いた。


「チッ、やっぱりバレちまうか」


声と共にゴエモンが姿を現す。


眉間に皺を寄せながら後退した。


剣はギリギリでかわしたらしく、新たな傷はない。


「結構気配を消すのには自信があるんだけどな」


「グローブ」


ゴエモンが呟く。


両手に黒い手袋が現れた。


手の甲には大きく”G”の文字が刻まれている。


しかしアミは待たない。


しゃがみ込むような姿勢から鋭い突きを放つ。


(避けられたらベアかウルフと入れ替わる。まずは距離を取る)


アミは冷静に次の手まで考えていた。


だが――


ゴエモンは避けなかった。


剣先が腹を貫く。


鮮血が飛び散る。


それでもゴエモンは前へ進む。


「なに!?」


アミの目が見開かれる。


完全に想定外だった。


ゴエモンの拳が顔面にめり込む。


アミは大きく吹き飛ばされた。


「クッ……そこまでの捨て身を……」


アミは体勢を立て直す。


そして気づいた。


「剣が……ない!?」


確かに握っていたはずだった。


「盗ませてもらったぜ」


ゴエモンはニヤリと笑う。


アミの剣はいつの間にかゴエモンの手の中にあった。


空いている手は、腹部の傷口を押さえている。


「返せ!!」


アミは即座に駆け出す。


その瞬間。


アミの肩が再び青く光った。


「引力」


同時に、離れた場所にいたマグの右手が赤く輝く。


そして。


アミへ向かって一直線に飛び出した影があった。


ムサシだ。


刀を突き出したまま、弾丸のような速度でアミへ向かって射出される。


アミの瞳が大きく見開かれた。


「俺は気づいてるぜ」


向かってくるムサシに気づき、足を止めたアミに対してゴエモンがしたり顔で言う。


「お前が熊や狼と位置を入れ替える時、毎回その剣を軽く振っていたのをな。恐らくその剣がなきゃ、さっきまでみたいな位置の入れ替えはできねぇんだろ?」


図星だったのだろう。


アミは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら思考を巡らせる。


「ベア! ウルフ!」


(恐らく光の対象を引き合わせる能力は、あの坊主頭の能力だ)


アミの視線がマグへ向く。


(あいつさえ潰せば、この引力も解除される。刀がなくとも、重傷の二人相手ならまだ勝ち筋はある)


アミの呼びかけに応じるように、熊と狼が立ち上がる。


膝裏を切り裂かれているため足は震えていたが、それでも主の命令に従った。


二匹は同時にマグへ襲いかかる。


巨大な鉤爪が振り下ろされる。


完全にアミへ意識を向けていたマグは回避できない。


「ぐっ!」


直撃。


マグの体が吹き飛ばされる。


地面を転がり、頭部から血が流れる。


それでも――


能力は解除されない。


マグの瞳は真っ直ぐアミとムサシを見据えていた。


「一刀流・一点針(イッテンシン)


その瞬間。


ムサシが突き出していた刀がアミの肩を貫く。


「がはっ――!!」


肩口から鮮血が噴き出す。


アミは耐え切れず片膝をついた。


「終わりだぜぃ」


ムサシは間髪入れず左手の刀を振るう。


刃ではなく峰。


その一撃がアミの首元へ叩き込まれた。


衝撃でアミの体が揺れる。


そして瞳から光が消えた。


白目を向いたまま地面へ崩れ落ちる。


アミの意識が途切れると同時に、熊と狼の姿も消え去った。



「ふぅ……全員ボロボロだな」


ゴエモンは奪った剣を地面へ突き立てると、その場へ座り込む。


「俺は一応歩けますけど……三人を本部まで運ぶのは無理っすね」


マグも何とか立ち上がる。


だが右腕は力なく垂れ下がり、左手で支えている状態だった。


「いててて……傷口が開いちまったぜぃ」


ムサシも刀を地面へ突き刺し、杖代わりにして立っている。


三人とも勝利はした。


だが満身創痍だった。


特にムサシとゴエモンは出血が激しい。


早急に治療しなければ危険な状態だ。


その時だった。


「おい! 誰か来るぞ!!」


ムサシが鋭く声を上げる。


刀を構える。


ゴエモンも立ち上がる。


マグも拳を握る。


「これ以上は本格的にまずいぞ……」


緊張が走る。


ムサシは強化された視力で森の奥を見る。


走ってくる人影を捉えた。


そして。


「ビビらせないでくれぃ……」


力が抜けたように座り込む。


「遅れてすみません! こちらの戦闘は終わってしまったようですね!」


森の奥から現れたのは黄色い鎧を纏った騎士――ポーンだった。


「いや、助かった……」


ゴエモンは安堵の息を吐く。


「そこの女と俺らを本部まで連れてってくれ」


そう言い終えた瞬間。


張り詰めていた糸が切れた。


ゴエモンはそのまま前のめりに倒れ込む。


意識を失ったのだった。

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