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unlimited  作者: 轟号剛


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武装

ベゴニア 西門前


「バスターソード!」


アムドがカインズの三人へ向かって走り出す。


その右手に、一瞬で巨大な大剣が現れた。


「散れ!」


チューズの声と同時に三人は左右へ散開する。


真っ先に動いたのはオーラだった。


全身にオレンジ色のモヤを纏いながら一直線に突っ込む。


「おらぁ!」


振り下ろされる大剣に対し、両腕で受け止めようとする。


しかし――


ドォン!!


圧倒的な重量と威力。


オーラの体は西門まで吹き飛ばされ、壁へ激突した。


「ぐっ!」


土煙が舞い上がる。


「爆熱炎拳!」


今度はチューズが横から飛び込む。


炎を纏った拳がアムドへ迫る。


赤糸縅鎧(アカイトオドシヨロイ)


アムドが呟いた瞬間。


全身が真紅の甲冑に包まれた。


ドガッ!!


拳は確かに命中する。


しかし鎧は砕けない。


それどころか――


ボォォン!!


殴られた瞬間に鎧が爆発した。


「なっ!?」


チューズは爆風に飲まれ、西門近くまで吹き飛ばされる。


「はっはっはっ!!」


アムドは機嫌よく笑う。


大剣を頭上で振り回しながら声を張り上げた。


「この程度で僕に挑むなんて笑わせてくれるね!!」


「調子乗ってんじゃねぇぞ!」


土煙の中からオーラが飛び出す。


「また吹き飛ばしてあげるよ!」


アムドは再び大剣を振り抜いた。


だが――


手応えがない。


「なに!?」


大剣が当たったはずのオーラは消え去った。


「偽物に引っかかるなんてマヌケだな!」


声は真上からだった。


オーラは空中にいた。


拳にオレンジ色のモヤを集中させる。


「おらぁぁ!!」


ゴォン!!


拳が兜へ直撃する。


兜が砕ける。


さらに鎧全体へ亀裂が走った。


炎足(エンソク)!」


続けてチューズが飛び込む。


足裏から炎を噴射しながら急加速。


鎧を失ったアムドの腹部へ飛び蹴りを叩き込む。


ドォォン!!


アムドは吹き飛ばされる。


「ぐっ……」


全身の鎧は砕け散り、口元から血が流れる。


「こんなはずじゃない……」


アムドの表情が歪む。


「こんな惨めな姿を僕が晒すわけがない……!」


拳を握り締める。


「油断していただけだ!」


そして大剣を消した。


代わりに現れたのは一本の巨大な刀。


「破邪の御太刀(ハジャノミタチ)


刃だけで三メートル以上。


柄を含めれば四メートルを超える異形の長刀だった。


「あれだけ長い刀よ」


アブは冷静に分析する。


「振り抜いた後は大きな隙ができるはずだわ」


「隙は作る!」


チューズが頷く。


(マスク)分身(アバター)


チューズの隣にもう一人のチューズが現れる。


二人は交差しながら走り出した。


どちらが本物なのか分からない。


「どっちが本物かなんて関係ない!」


アムドは刀を横薙ぎに振るう。


ブォォォン!!


超長刀が空気を裂く。


二人のチューズは同時に真っ二つになった。


しかし――


どちらも炎となって消える。


「なっ!?」


陽炎(カゲロウ)。俺が使える唯一の搦手だ」


声は背後。


アムドが振り返るより早く、チューズが炎の拳を叩き込む。


「舐めるなぁぁぁ!!」


アムドは強引に刀へ力を込める。


その場で体ごと回転。


巨大な刀で周囲を薙ぎ払った。


「っ!」


チューズは即座に攻撃を中断する。


地面へ伏せる。


刃が頭上を通過する。


数本の髪が宙を舞った。


「危ねぇ……!」


しかしその瞬間。


「もらったぁ!!」


オーラが飛び込む。


刀を振り切ったアムドの懐へ。


拳には再びオレンジ色のモヤが集中していた。


長船秀光(オサフネヒデミツ)


アムドは判断した。


全長の長い大太刀では間に合わない。


そう考えた瞬間、手にしていた巨大な刀が消え、代わりに刀身の短い刀が現れる。


キィンッ!


鋭い一閃。


オーラの体に斜めの斬撃が走った。


「ぐっ!」


オーラは咄嗟に全身へオレンジ色のモヤを纏う。


だが完全には防ぎ切れない。


右肩から左太腿にかけて大きな切り傷が刻まれた。


その直後。


アムドの背後に三人のアブが現れる。


「今よ!」


三方向から同時に襲いかかる。


しかし――


「遅い」


アムドの刀が閃く。


三人のアブは一瞬で消え去った。


全て分身だった。


炎拳(エンケン)!」


その隙を逃さずチューズが飛び込む。


拳に炎を纏い一直線に突き出した。


赤糸縅鎧(アカイトオドシヨロイ)


アムドの全身を再び赤い鎧が包む。


先ほど砕かれたはずの鎧。


だが今纏われたそれは新品同然だった。


ドォォン!!


拳が当たると同時に爆発が起きる。


しかし――


チューズは吹き飛ばされなかった。


「なに!?」


アムドが目を見開く。


チューズの全身を覆う炎が爆発の衝撃を相殺していた。


橙拳爆散(トウケンバクサン)!」


今度は背後。


オーラが拳を振り上げる。


炎拳(エンケン)!」


正面からはチューズ。


左右ではなく前後からの挟撃。


(まずい!)


アムドの思考が加速する。


(一度に二つは防げない!)


汗が流れる。


(どちらを防ぐ!?)


チューズの拳が迫る。


オーラの拳も迫る。


「はぁぁぁぁ!!」


(正面の炎使いの攻撃は既に見た!)


アムドは決断した。


(未知なのは後ろだ!!)


正面のチューズを無視する。


そしてオーラが鎧へ触れた瞬間。


背後に爆発が発生する。


しかし――


「なっ!?」


オーラの姿が消える。


また分身だった。


そしてそのさらに後ろ。


本物のオーラが拳を振りかぶっていた。


「また偽物かぁぁぁぁ!!」


アムドが叫ぶ。


だがもう遅い。


ドゴォォン!!


前方からチューズ。


後方からオーラ。


二人の拳が同時にアムドへ叩き込まれた。


激しい爆発が発生する。


チューズとオーラは即座に後退した。


やがて煙が晴れる。


そこには――


全身傷だらけのアムドが立っていた。


皮膚は所々焼け焦げている。


鎧は完全に砕けていた。


「そんな……」


アムドの瞳は焦点を失っている。


「この僕が……」


震える声。


「二度もこんな無様な姿を晒すなんて……」


「諦めるんだな」


チューズが静かに言う。


警戒は解かない。


だが勝敗は決したと判断していた。


「お前の負けだ」


「僕の……負け?」


アムドは呆然と呟く。


そしてゆっくり俯いた。


「いや……」


声色が変わる。


「僕らに負けは許されていないんだ……」


「……?」


オーラが眉をひそめる。


「君達は知っているかい?」


アムドは力なく笑う。


「死より怖いものを」


風が吹く。


「僕らは……」


拳を握る。


「ウェザー様の逆鱗に触れることの方が、死ぬより怖いんだよ」


チューズとオーラが顔を見合わせる。


アムドの様子がおかしい。


「おい……」


オーラが一歩下がる。


「あいつ変だぞ」


「僕らは死兵だ」


アムドは空を見上げた。


「死ねば恐怖から解放される」


黒く濁っていた瞳。


その瞳が一瞬だけ澄んだ青色へ戻る。


「皆……」


小さく笑う。


「一足先に逝ってくるよ」


そして静かに呟く。


「皆と過ごした日々は……悪くなかった」


次の瞬間。


その青い瞳は再び闇に染まった。


遠い昔。


キクレンと共に滅びた禁術。


命を代償に限界を超えた力を得る秘術。


アムドの左胸が眩く輝き始める。


「……Unlimited」


アムドは微笑んだ。


まるで全てを受け入れたかのように。

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