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unlimited  作者: 轟号剛


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43/59

群雄割拠

添削版


北区 ハッカの森


森の中を一人の女性が歩いていた。


青いハット帽を被り、腰には一本の剣を携えている。


その前方では、周囲の木々と同じほどの大きさを持つ熊と、トラックほどの巨体を誇る狼が森を荒らしていた。


木々をなぎ倒しながら進むその姿はまさに災害そのものだ。


(はぁ……私の役割がベゴニアの環境破壊とはな……)


女性は内心でため息をつく。


(まぁ、血生臭い役目よりはマシか)


そう考えながら熊と狼の後ろをゆっくり歩く。


しかし次の瞬間。


女性は腰の剣を抜き放ち、何もない背後へ振り向きざまに斬りつけた。


キンッ――


「おいおい! 危ねぇな!!」


空間のどこからともなくゴエモンの声が響く。


女性の剣先には赤い血が付着していた。


やがて景色に溶け込んでいたゴエモンの姿が現れる。


頬には浅い切り傷が走っていた。


「煙玉」


ゴエモンは即座に煙玉を地面へ叩きつける。


ボフッという音と共に煙が広がり、辺り一帯を覆い尽くした。


その直後。


煙の中へムサシが飛び込む。


「ベア」


女性が短く呟く。


すると次の瞬間――


女性の姿が消えた。


代わりに、先ほどまで森を荒らしていた巨大熊がその場へ現れる。


「っ!」


ムサシは一瞬だけ目を見開く。


その隙を逃さず、熊が巨大な腕を横薙ぎに振るった。


しかしムサシは後方へ跳躍して回避する。


まるで攻撃が来ることを予測していたかのような動きだった。


熊の一撃は空を切る。


だが周囲を覆っていた煙を吹き飛ばすことには成功していた。


「ゴエモン!」


今度は後方からマグが駆け込んでくる。


「おう!」


ゴエモンは即座に返事をした。


マグがゴエモンの頭上を飛び越える。


その瞬間、ゴエモンは小ぶりなハンマーを出現させ、マグの足裏へ叩きつけた。


ドンッ!!


マグの体が砲弾のように加速する。


一直線に女性へ向かって飛んでいった。


「ウルフ」


女性が再び呟く。


今度は狼と位置が入れ替わる。


だがマグは動揺しなかった。


先ほど熊と入れ替わった様子を見ていたからだ。


拳へ青い光を纏わせる。


そして――


狼の鼻面を思い切り殴りつけた。


ゴォッ!!


巨狼の頭が大きくのけぞる。


しかし狼も即座に反撃する。


鋭い爪を振り下ろし、マグを切り裂こうとした。


斥力(せきりょく)


マグの全身から青い光が放たれる。


同時に狼の鼻にも青い光が灯る。


次の瞬間。


互いの光が反応し合い、強烈な反発力が発生した。


マグと狼は同時に吹き飛ばされる。


やがて狼と熊は女性の元へ戻る。


マグもムサシとゴエモンの隣へ着地した。


両陣営が再び向かい合う。


「結局、戦わないといけないのか」


女性は小さく息を吐く。


「だが、こうなった以上は全力でやらせてもらう」


剣を構える。


「アミ・カキツバタ――推していく!」


アミが地面を蹴った。


熊と狼も咆哮を上げる。


それに応えるようにムサシたち三人も武器を構えた。


森を揺らす激突が、今まさに始まろうとしていた。


-


超能隊本部前


超能隊本部の前には、ムサシが西の集落で遭遇した二人の女性が立っていた。


メイド服に身を包んだ姉――チヨ・エンゼルランプ。


そしてゴスロリ服を纏った妹――ライム・エンゼルランプ。


二人は姉妹である。


「ここが超能隊のアジト〜?」


ライムは建物を見上げながら感心したように声を上げる。


「うち達の所より全然豪華だね〜」


「壊し甲斐があっていいじゃねぇか!」


チヨは手にした薙刀をブンブンと振り回す。


風を切る音が響く。


「さっさとやろうぜ!!」


そのまま超能隊本部へ向かって突撃した。


「行かせねぇよ!」


進路を塞ぐように一人の男が飛び出す。


カード・レッドミルだった。


巨大なオレンジ色の盾を構え、チヨの前に立ちはだかる。


「邪魔なんだよ!!」


チヨは薙刀を横薙ぎに振り抜く。


カードも即座に盾を合わせた。


ガァンッ!!


甲高い衝突音が響く。


衝撃で二人は同時に後方へ押し戻された。


「頑丈な盾だな」


チヨは笑みを浮かべる。


全力で振り抜いたにもかかわらず、盾には傷一つ付いていない。


「ったく……」


カードは盾を構え直した。


「よりによってダイヤの日に襲ってくるんじゃねぇよ」


ぼやきながらも戦闘態勢を崩さない。


「おねーちゃんは取り込み中だから〜」


その様子を後ろから見ていたライムが歩き出す。


「私が代わりに壊そっかな〜」


その瞬間だった。


ライムの背後にポートが現れる。


瞬間移動。


手にしたナイフを振りかぶる。


狙いは首。


しかし――


ドバッ!!


ライムの足元に広がっていた緑色の粘液が突如噴き上がる。


ポートの体は上空へ吹き飛ばされた。


「あはっ♪」


ライムは振り返る。


首を傾げながら楽しそうに笑った。


「私の相手はあなたなのね〜」


「ダイナから瞬間移動の能力を持つ人がいるって聞いてたから警戒してたけど〜」


「まさか本当に私が当たるなんてね〜」


「有名人になれてたみたいで光栄だよ!」


ポートは空中で笑う。


次の瞬間、姿が消えた。


そして――


ライムの真上。


再び瞬間移動。


ナイフを両手で握り締める。


一直線に振り下ろした。


「甘いね〜」


ライムが微笑む。


足元の粘液が瞬時に全身を覆い、半透明の球体となる。


ギィンッ!


ナイフは粘液の表面で止まり、内部へ届かない。


「……ったく」


ポートは即座に距離を取る。


数十メートル先へ瞬間移動すると額を押さえた。


「なんで俺はこうも相性の悪い奴ばっか引くんだかね」


ライムはケラケラと笑う。


「ふふっ♪」


「私は相性バッチリだと思うけどな〜?」


緑色の粘液が地面を這いながら広がっていく。


ポートはそれを見て、さらに深いため息を吐いた。


-


首都ベゴニア郊外


首都ベゴニアの各地で激しい戦闘が繰り広げられている中、一人だけ街から離れていく人物がいた。


小柄な体格。


その背には体に不釣り合いなほど巨大な鎌が背負われている。


超能隊最強と名高い男――レイ・クアンタである。


彼は空中を飛びながら、先日ムサシが発見した西の集落へ向かっていた。


「まさか今日襲撃してくるなんてなぁ……」


レイは小さくため息を吐く。


ベゴニアへ雷が落とされた瞬間、彼は既に街を離れていた。


事前にナーブから指示を受けていたのである。


「僕の任務は西の集落にいる子供達の保護……」


レイは下を見下ろしながら呟く。


「戦力はベゴニアに集中するから手薄になるって言ってたけど……」


少し間を置く。


「そんな上手くいく気がしないんだよなぁ……」


いつものように後ろ向きな思考が頭を埋め尽くす。


そんなことを考えているうちに、地上に一つの集落が見えてきた。


「あった!」


レイは高度を下げる。


集落へ降り立とうとした、その瞬間だった。


地面から無数の金色の柱が飛び出す。


四方八方から迫るそれは、まるで巨大な檻のようだった。


ドゴォン!!


柱同士が激突し、レイを押し潰そうとする。


しかし。


「はぁ……」


攻撃の中心から聞こえてきたのは呆れた声だった。


「やっぱり強そうな人がいるじゃないか……」


レイは何事もなかったかのように地面へ降り立つ。


彼の能力によって攻撃は全てすり抜けていた。


目の前には一人の男が立っている。


黒いスーツ。


黒いサングラス。


周囲には何本もの黄金の柱が浮かんでいた。


ゴードである。


「アジトの場所が露見した以上、誰かしら来るとは思っていた」


ゴードは静かに言う。


黄金の柱がゆっくりと回転しながらレイを取り囲んだ。


その背後には粗末な小屋が建っている。


小屋の隙間から何人もの子供達が不安そうにこちらを見ていた。


レイはその姿を見て目を細める。


「あの子達のためにも頑張らないとね」


そう呟くと背中の大鎌を握った。


ジャリ、と靴が土を踏む。


「できれば強い人とは戦いたくないんだけど……」


レイは苦笑いを浮かべる。


そして次の瞬間――


地面を蹴った。


「任務だから仕方ないよね!」


レイは一直線にゴードへ向かって駆け出した。

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