超能力-魔法-神剣
キーンコーンカーンコーン
「さぁ、今日も授業を始めるぞ」
鐘の音が鳴り響き、いつものようにチェスが教壇の前に立つ。
「今日は我々が使う超能力、他国で使われる魔法、そして神剣と呼ばれる持ち主に超常的な力を与える武具について学んでいこうと思う」
チェスは前方へ手をかざした。
「ポーン」
地面から黄色い鎧を纏った騎士が現れる。
兜には筋肉を模したような装飾が施されていた。
生徒達から小さな歓声が上がる。
「わしらはこのように千差万別の超能力を使うことができる」
チェスはポーンを指しながら説明を続ける。
「超能力を使うには、自身の能力を発現させる明確なイメージと生命力が必要じゃ」
生徒達は真剣な表情でノートを取っている。
「生命力と聞くと、自分の寿命や命そのものを削っていると思うかもしれん。しかし実際は少し違う」
チェスは胸元を軽く叩いた。
「言葉で説明するのは難しいが、体の中を巡る”気”や”活力”といったものを消費しておるのじゃ」
「だから能力を使い過ぎると、強い疲労感や倦怠感に襲われる」
説明を終えるとチェスはポーンに向かって頷く。
ポーンは光となって消えていった。
「ただし、この超能力を使えるのは超国の人間だけじゃ」
チェスは黒板に大きく『魔法』と書く。
「他国の人々は魔法という力を使う」
黒板には魔法陣が描かれていく。
「魔法は体内に宿る魔力を媒介に発動する力じゃ。しかし、わしら超国の人間には生まれつき魔力が存在しないため、魔法を使うことはできん」
続いて四つの文字を書く。
火
土
水
雷
「人が持つ魔力には基本的にこの四属性のどれかが宿っておる」
炎や雷の絵を描きながら説明を続ける。
「そして自分の属性に対応した魔法を扱うことができるのじゃ」
「ただし、ごく稀に複数の属性を持つ者もおる」
生徒達が少しざわつく。
「そうした者は複数の属性を組み合わせ、新たな属性の魔法を生み出すこともできるそうじゃ」
説明を終えると、今度は黒板に一本の剣を描いた。
「最後に神剣についてじゃ」
教室の空気が少し変わる。
子供達の興味が一気に集まった。
「神剣とは、超能力のような超常的な力を宿した特別な武具のことじゃ」
「持ち主に力を与えるという点では超能力にも似ておるな」
チェスは黒板の剣を杖で指す。
「神剣の大きな特徴は、使用者の生命力を必要としないことじゃ」
「超能力のように気や活力を消費する必要もない」
「神剣そのものが力を持っており、その力を借りているのだろうと言われておる」
生徒達は感心したように頷く。
「しかし、神剣は誰でも使えるわけではない」
チェスは人差し指を立てる。
「神剣に認められた者だけが、その力を引き出せるのじゃ」
「認められていない者が持ったところで、ただの剣と変わらん」
「王国の十騎士が神剣を所有しているという噂もあるな」
チェスは板書を終えると、子供達の様子を見渡した。
皆、必死にノートへ書き込んでいる。
その姿に満足そうに頷いた。
「これが超能力、魔法、神剣の大まかな説明じゃ」
一息ついた後、チェスの表情が少し真剣になる。
「つい先日、このベゴニアは敵の襲撃を受けた」
教室が静まり返る。
「そして今後も再び攻め込まれる可能性は十分にある」
チェスは生徒達一人一人の顔を見る。
「じゃが、お前達にできることは戦うことではない」
「家族を守ることじゃ」
その声は穏やかだが力強い。
「決して外へ飛び出して、自分も戦おうなどとは考えるな」
「お前達には未来がある」
チェスはそう言い切った。
キーンコーンカーンコーン
ちょうどその時、授業終了を知らせる鐘が学校中に響く。
「それでは今日はここまでじゃ」
生徒達は一斉に立ち上がり、挨拶をすると帰宅していった。
-
超能隊本部の前に、一人の男が息を切らしながら立っていた。
その男は勢いよく扉を開け放つ。
「帰ってきたぜぃ! ブレイクさんとナーブはいるか!?」
大声を響かせながら本部の中を見渡す。
帰ってきたムサシの視線の先には、机を挟んで話し込んでいるブレイクとナーブの姿があった。
「西の方を調査してたんだが、どうやらビンゴだったぜぃ!」
ムサシは二人の元へ歩み寄る。
「急いで準備しねぇと、とんでもねぇことになりそうだ」
⸻
ムサシは西の集落で見聞きした出来事を二人に伝え終えると、額から流れる汗を腕で拭った。
「西の集落か……」
ブレイクは腕を組みながら目を閉じる。
「やはりキクレンの残党は生き残っていたようだな」
その表情には怒りが滲んでいた。
「最近起きていた子供の誘拐事件も、おそらく奴らの仕業だろう」
ブレイクは拳を握り締める。
「子供を洗脳し、戦うための道具にするとは……卑劣な連中だ」
「今回は結構やばかったぜぃ」
ムサシは苦笑しながら肩をすくめる。
「たまたま道中で修行中のバルを拾ったから助かったようなもんだ」
「なるほど」
ナーブは納得したように頷く。
「そういえば、そのバルさんの姿が見えませんね」
周囲を見回すが、それらしい人物はいない。
「あいつはまだ修行中だからな。ここには来ねぇってよ」
「そうですか」
ナーブは小さく頷く。
「では、今度会った時は礼を言わなければなりませんね」
ブレイクも同意するように頷いた。
そして真剣な表情で二人を見る。
「ムサシの話が事実なら、敵が動くのは近いうちだ」
一瞬言葉を区切る。
「いや、明日にでも攻めてくる可能性がある」
部屋の空気が重くなる。
「ナーブ」
「はい」
「しばらく超能隊は警備に専念させる。各メンバーの配置を考えた後、パシーを通して全員に連絡してくれ」
「分かりました」
ナーブはすぐに返事をした。
ブレイクはそれを確認すると席を立つ。
「では、私は行く」
そう言って出口へ向かい始めた。
「ブレイクさんはどちらへ?」
ナーブの問いに、ブレイクは足を止めることなく答える。
「チェスさんの所だ」
その声には僅かな緊張が混じっていた。
「キクレンの残党が相手となれば、あの人の力を借りなければならないだろうからな」
そう言い残し、ブレイクは扉を開く。
夕日が差し込む中、そのまま本部を後にした。




