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unlimited  作者: 轟号剛


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4/18

任務

今日は木曜日。


ウィークの身体を動かしているのは、木曜日担当のサース・ウィークだった。


チューズやウェンが使っていた部屋。


そこに今いるのは、緑色のマッシュヘアと知的な瞳を持つ青年だ。


サースは椅子に腰掛け、静かに目を閉じていた。


「そろそろ時間ですね」


他の人格たちと違い、サースはパシーの起床連絡を必要としない。


ゆっくりと立ち上がると家を出た。



街外れの森。


木々に囲まれた広場へ到着したサースは、切り株の上に腰を下ろす。


「少し早かったようですね」


目を閉じ、静かに瞑想を始める。


十分後。


二人の人物が姿を現した。


「サース、待たせたぜぃ!」


ムサシだった。


その後ろには大柄な坊主頭の男、マグもいる。


「いえ。今来たところです」


サースは微笑みながら立ち上がる。


そして地面へ手を触れた。


瞬間。


ゴゴゴゴ――


何もなかった広場から大量の木々が生え始める。


「相変わらず便利な能力だぜぃ」


ムサシは刀を抜いた。


次の瞬間。


ザンッ!


ザンッ!


ザンッ!


生えた木々が次々と切り倒されていく。


「マグ!」


「うす」


マグは無駄なく木材を台車へ積み込んでいく。


そしてサースは倒れた木を見ながら、再び能力を使う。


切り株から新たな木が生える。


伐採。


再生。


伐採。


再生。


三人は慣れた手付きで作業を進めていった。



やがて台車が木材でいっぱいになる。


「こんなもんだろうぜぃ」


ムサシは刀を肩へ担いだ。


「そういえばサース」


「はい?」


「ブレイクさんがお前たちカインズに用があるらしい」


サースが首を傾げる。


「ブレイクさんが?」


「詳しくは知らねぇぜぃ」


「分かりました」


サースは二人へ頭を下げる。


「ありがとうございました」



超能隊本部。


到着すると、既にアブとオーラが待っていた。


「サース!」


「遅いぞ!」


「僕が最後でしたか」


「いや、今来たところだ」


オーラは笑う。


三人はそのまま二階へ向かった。



部屋の中ではブレイクが椅子に座っていた。


「よく来たの」


三人は机の前に並ぶ。


「カインズに頼みたい仕事がある」


ブレイクが口を開く。


「ある人物を超能隊へ勧誘してきてほしい」


「勧誘ですか?」


サースが尋ねる。


「そうだ」


ブレイクは頷く。


「名はドラゴ」


その名前を聞いた瞬間、部屋の空気が少し変わった。


「能力が強すぎて制御できず、現在は山に籠って修行しているらしい」


「強すぎて制御できない……」


アブが呟く。


「場所はアネモネ山」


ブレイクは三人を見る。


「超能隊に必要な人材だ」



本部を出た後。


「面白そうじゃねぇか!」


オーラが拳を握る。


「能力が暴走するほど強いんでしょ?」


アブも興味津々だ。


「アネモネ山は南です」


サースが説明する。


「今から向かえば夕方には着くでしょう」


「じゃあ決まりだな!」


三人は歩き出した。



その頃。


別の場所。


「ピエロくん」


コピは椅子に腰掛けながら本を閉じる。


「アネモネ山へ行こう」


お手玉をしていたピエロが顔を上げた。


「ハハ、また盗み聞きですか?」


「面白い話が聞けたんだ」


コピは微笑む。


「超能隊が新人を勧誘しに行くらしい」


「ハハ」


ピエロが笑う。


「邪魔しに行くんですか?」


「いや」


コピは立ち上がった。


「先に会いに行くだけさ」


パチン。


指を鳴らす。


次の瞬間、コピの背中から巨大な翼が生えた。


足は鋭い鉤爪を持つ鳥の脚へ変化する。


ピエロは慣れた様子でベランダへ出る。


「ハハ、よろしくお願いします」


コピはピエロの肩を掴んだ。


そして翼を大きく広げる。


バサァッ!


二人の身体が空へ舞い上がった。


遠く南。


アネモネ山へ向かって。


--


アネモネ山。


カインズの三人はドラゴに会うため山道を登っていた。


階段は整備されているが、それでもかなりの距離がある。


「はぁ……はぁ……」


アブは既に息を切らしていた。


「まだ着かないの〜?」


「もう少しですね」


サースが周囲を見渡しながら答える。


「山に住んでいるなら小屋があるはずです」


その時だった。


「おい!」


先頭を歩いていたオーラが声を上げる。


「あれ見ろ!」


指差した先。


山頂付近に小さな小屋が見えた。


「恐らくあれでしょう」


サースが頷く。


「よし!やっと着くな!」


オーラが笑う。


「少し休憩したら――」


「そうはさせませんよ」


突然、上空から声が降ってきた。


三人が顔を上げる。


巨大な翼を生やした男が空から降下していた。


男は静かに地面へ着地する。


「誰だお前」


オーラが前へ出る。


男は微笑んだ。


「メシアのリーダー、コピです」


だがその笑顔には妙な不気味さがあった。


「ドラゴさんは私達に必要な人材なのでね」


コピは眼鏡を押し上げる。


「ここで足止めさせてもらいます」


アブの表情が変わる。


「なるほど」


「先に誰かをドラゴのところへ向かわせたのね」


「ご想像にお任せします」


否定しない。


サースは地面へ手を置いた。


「つまり時間が無いという事ですね」


「だな」


オーラが拳を鳴らす。


「なら、さっさとやっちまおうぜ!」


オレンジ色のオーラが全身を包む。


オーラは地面を蹴り、一直線にコピへ突っ込んだ。


パチン。


コピが指を鳴らす。


炎球(フレイムボール)


掌から放たれた火球が一直線に迫る。


だが。


三木壁(サンモクヘキ)


サースが地面へ手を触れる。


直後、三本の大木が地面を突き破り、火球を受け止めた。


轟音。


炎が木々を包み込む。


燃え上がる木々の陰からオーラが飛び出した。


さらに左右からアブの分身。


後方ではサースの木々が逃げ道を塞いでいる。


完全包囲だった。


「いいチームワークだ」


コピが微笑む。


パチン。


「霊化」


「らぁぁぁ!」


オーラが拳を振るう。


アブ達も同時に飛び込んだ。


だが。


拳は当たらない。


コピの身体をすり抜けた。


「なっ!?」


三人の攻撃が空を切る。


勢い余ったアブの分身同士がぶつかり合い、煙となって消えた。


そして。


ドゴッ!!


コピの蹴りがオーラの腹へ突き刺さる。


「ぐっ!」


オーラが数歩後退する。


しかし倒れない。


オレンジ色のオーラが衝撃を吸収していた。


「なんなんだよ……!」


オーラが歯を食いしばる。


「能力が変わりすぎだろ!」


サースも眉をひそめる。


「炎に変身……そして今のは透過能力でしょうか」


アブはコピから目を離さない。


「もしレイさんの能力なら――」


そこで何かに気付いた。


「二人とも合わせて!」



周囲に十人以上のアブが現れる。


同時に走り出した。


サースも能力を発動する。


包樹圧木(ホウジュアッキ)


コピの周囲を囲むように巨大な木々が生えた。


枝が蛇のように伸びる。


逃げ場はない。


しかし。


コピは空中へ浮かび上がった。


木々をすり抜けながらオーラへ向かう。


「今よ!」


アブが叫ぶ。


分身の群れからオーラが飛び出した。


コピが腕を上げる。


だが遅い。


ドゴォッ!!


拳が炸裂した。


コピの身体が吹き飛ぶ。


地面を転がり、木に激突した。


「ぐっ……!」


コピが顔を歪める。


右手の指があり得ない方向へ曲がっていた。


「やった!」


オーラが叫ぶ。


アブは口元を上げる。


「やっぱりね」


コピが顔を上げる。


「なるほど」


「見抜かれていましたか」


アブは頷いた。


「その能力、ずっと使い続けられるわけじゃない」


「霊化には時間制限がある」


「だからわざと分身をぶつけて時間を稼いだのよ」


コピは感心したように笑った。


「流石ですね」



パチン。


回復(ヒール)


緑色の光が指を包む。


折れていた指がみるみる元通りになった。


オーラの顔が引きつる。


「おいおい……」


サースの額から汗が流れる。


「今のはストロングさんの能力ですね」


コピは笑う。


「別に何でも使えるわけではありませんよ」


「例えばウィークさんの能力は使えませんでした」


その言葉にサースの目が僅かに開いた。


パチン。


コピが指を鳴らす。


その瞬間、姿が消えた。


「消えた!?」


オーラが目を見開く。


次の瞬間。


ドサッ。


鈍い音が響いた。


振り向くとアブが力なく地面へ倒れていた。


その背後には、いつの間にかコピが立っている。


「アブ!!」


オーラが叫ぶ。


サースの表情も僅かに変わった。


「瞬間移動ですか……」


サースは地面へ手を押し当てる。


「超能隊の能力が使えるのなら、ポートさんの能力も警戒すべきでしたね」


悔しさを滲ませながら能力を発動する。


地面が盛り上がる。


大量の木々がコピへ襲い掛かった。


しかし。


パチン。


コピが指を鳴らす。


そして向かってくる木へ手を触れた。


触れた瞬間。


木々は跡形もなく消滅した。


まるで最初から存在しなかったかのように。


「今度はブレイクさんの能力ですか……」


サースの額を汗が伝う。


能力の数が多すぎる。


何が本来の能力なのかすら分からない。



「アブをよくも!!」


オーラが怒号を上げる。


オレンジ色のオーラが激しく揺らめいた。


一直線にコピへ突っ込む。


「殺していませんよ」


コピは落ち着いた声で答える。


「彼女は貴重な戦力ですからね」


そして右手を前へ出した。


だが。


針樹雨(シンヂュウ)


サースが先に動く。


地面から無数の木の針が空へ打ち上がった。


空を覆い尽くすほどの数。


次の瞬間。


雨のように降り注ぐ。


アブの身体は木々が包み込み守っていた。


一方オーラは全身のオーラを右腕へ集中させる。


オレンジ色のモヤが傘のように広がった。


降り注ぐ木の針を弾いていく。


「これは流石に右手だけでは防げなさそうですね」


コピは微笑む。


パチン。


オレンジ色のオーラが現れる。


それはオーラと同じように傘の形へ変化した。


ガガガガガッ!!


無数の木針が二人へ降り注ぐ。


しかし一本たりとも届かない。


全て弾かれていた。



やがて木の雨が止む。


その瞬間だった。


オーラが地面を蹴る。


「らぁぁぁぁ!!」


一直線にコピへ向かう。


だが。


ボン!!


突然、小屋のある方角の空で爆発が起きた。


赤い光が空へ広がる。


オーラの視線が一瞬だけそちらへ向く。


その僅かな隙。


コピが笑った。


「時間ですね」


パチン。


「ピンクボール」


桃色の球が現れる。


「ピンクカーテン」


球が弾けた。


コピを中心に桃色のカーテンが閉じていく。


「待て!!」


オーラが飛び込む。


しかし遅い。


カーテンが完全に閉じた。


そして。


静かに消える。


そこにはもう誰もいなかった。



「クソッ!!」


オーラの拳が地面へ叩きつけられる。


土が砕け散った。


サースは小屋の方を見つめる。


「恐らく……終わったのでしょう」


「終わった?」


オーラが振り返る。


「ドラゴの勧誘です」


サースは静かに言った。


「先程の爆発は合図だったのでしょう」


「つまりコピは足止め役だった」


その言葉にオーラは歯を食いしばる。



「うぅ……」


倒れていたアブが目を覚ます。


すぐに立ち上がり周囲を見渡した。


「あいつは!?」


しかし姿はない。


その反応だけで全てを理解したようだった。


「逃げられたのね……」


「アブ!」


オーラが駆け寄る。


涙目になりながら肩を掴んだ。


「無事でよかった……!」


「大げさよ」


アブは苦笑する。


しかし少し嬉しそうだった。



「一応、小屋を確認しましょう」


サースが言う。


「その後ブレイクさんへ報告です」


アブは頷いた。


「そうね」


「恐らくもう誰もいないでしょうけど」


その言葉通り。


カインズに与えられた任務は失敗に終わった。


ドラゴ。


コピ。


メシア。


新たな謎だけを残して。


三人は重い足取りで小屋へ向かった。

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