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unlimited  作者: 轟号剛


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33/59

決着

空から落ちてくる白い雷と、ボルトの手から放たれた黒い雷。


二つの雷はゴクウとブレイクへ向かって一直線に迫る。


「超転移」


メタが叫ぶ。


次の瞬間、白い雷と黒い雷はゴクウとブレイクの真横へ転移し、地面を激しく抉った。


二人は無傷のまま生き残る。


「なっ!?」


ゴクウは驚いたように振り返る。


「メタ! お前、雷まで転移できたのか!?」


そして目を見開く。


「って、お前……ボルトと同じで胸が光ってるぞ!?」


「ゴクウ、ブレイクさん!」


メタは笑顔を浮かべる。


だが、その額には大量の汗が滲んでいた。


「雷は私が何とかする!」


「だから二人は私を信じて突っ込んで!!」


「あれは……なるほど」


ボルトはメタの胸元の光を見る。


「メタも捨ててしまったのか」


静かに呟く。


「ならば、なおさら手加減はできないな」


(先ほどの雷を転移できるということは、遠距離攻撃は封じられたも同然)


(ならば体術で攻めるしかない)


ボルトは瞬時に状況を分析する。


神具カング


黒い雷が全身を包む。


その瞬間、ボルトの姿が掻き消えた。


次に現れたのはブレイクの背後。


そのまま手刀で胸を貫こうとする。


しかし――


ボルトを覆っていた黒い雷が突然消滅した。


「チッ!」


それでも構わず拳を振り抜く。


ブレイクは反応しきれず吹き飛ばされた。


「ぐっ!」


地面を転がるが、すぐに体勢を立て直す。


その間にゴクウが白い煙に乗って接近する。


「黒煙・ブラックスモーク・ニードル


腰の黒玉が二つ浮かび上がる。


瞬時に巨大な針へ変化し、ボルトへ飛んでいく。


(雷を飛ばしても転移される)


(ならば防御にだけ使う)


ボルトは迎撃の瞬間だけ黒い雷を纏う。


拳で針を迎え撃つ。


だが。


針はボルトに触れる直前で消えた。


「なに!?」


次の瞬間。


消えたはずの針がボルトの背後に出現する。


メタの転移だ。


ボルトは凄まじい反応速度で振り向く。


しかし、その瞬間には黒い雷が消されていた。


「隙ありだぜぇ!!」


ゴクウの棒が唸る。


一撃。


二撃。


三撃。


連続で叩き込み、最後に全力で吹き飛ばす。


(まずいな)


吹き飛ばされながらボルトは考える。


(メタがいる限り、俺の雷はことごとく無効化される)


(ならば狙うべきは――)


(メタだ)


だが。


吹き飛ばされた先にはブレイクが待ち構えていた。


右手を突き出しながら一直線に駆けてくる。


「気付いているぞ!」


ボルトは左手に黒い雷を纏う。


地面へ叩きつけることで爆発的な推進力を生み出し、上空へ逃れる。


「落ちておけよ!!」


ゴクウの声が響く。


上空には黒煙で作られた巨大な手が待ち構えていた。


ボルトの体を掴むと、そのまま地面へ叩き落とす。


轟音が響く。


「待っていたぞ」


土煙の中。


ブレイクが右手を構えていた。


「クソォォォ!!」


ボルトは咄嗟に黒い雷を放つ。


しかし。


雷はブレイクの右手に触れた瞬間、全て消滅した。


「終わりだ」


ブレイクの右手がボルトの胸を貫く。


「グフッ……!」


大量の血が口から溢れる。


それでもボルトは諦めない。


左手に黒い雷を纏い、ブレイクを殴ろうとする。


だが。


発生した黒い雷もまた一瞬で消滅した。


結果として、ただの拳が振り抜かれる。


ブレイクはその一撃を受けながら後退する。


そして距離が開いた。


ボルトはその場に立ったまま動かない。


胸の中央には拳大の穴。


そこから絶え間なく血が流れ続けていた。


(すまない。


ボニー、サイコ、ウィンド。


負けてしまった……)


胸から流れ続ける血の温かさが徐々に失われていく。


意識も霞んでいく。


(俺についてこさせたのに……)


最初に思い浮かんだのはウィンドだった。


(ウィンド。


お前らは俺を師匠と慕ってくれていたな)


修練場で何度も稽古をつけた日々が脳裏を過る。


(だが俺は大した人間じゃない。


こんな不器用な生き方しかできなかった)


苦笑する。


(お前は俺らと違う。


この国が好きだった。


それなのに俺らのために裏切らせてしまった)


申し訳なさが胸を締め付ける。


(お前には才能がある。


だから頼む。


俺みたいな生き方だけはするな)


続いて浮かんだのはサイコだった。


泥だらけの少女。


怯えながらこちらを見上げていたあの日。


(サイコ。


最後まで返事をしてやれなくて悪かったな)


静かに目を閉じる。


(俺はお前をボニーと同じように妹だと思っていた)


だから応えられなかった。


それがずっと心残りだった。


(だが、あの世ではちゃんと返事をするつもりだ)


少しだけ口元が緩む。


(だからその時は――ゆっくり話そう)


そして最後に。


一番大切な存在を思い浮かべる。


(ボニー)


幼い頃からずっと隣にいた妹。


いつも明るくて。


いつも自分を信じてくれていた。


(すまない)


胸が痛む。


(お前の夢を見届けてやれなかった)


戦争のない世界。


国同士が分かり合える世界。


あの日、山の頂上で語っていた夢。


(こんな不甲斐ない兄を許してくれ)


その時だった。


“ううん”


聞き慣れた声が響く。


“ボルト兄さんは不甲斐なくなんかないよ”


ボルトはゆっくりと目を開く。


そこには――


宙に浮かぶボニーがいた。


“不器用だったけど、いつも私のことを見ていてくれた”


“ちゃんと知ってるよ”


(ボニー……)


ボルトは自然と笑みを浮かべる。


(そうか)


(お前も死んでしまったのか)


悲しいはずなのに。


不思議と心は穏やかだった。


“ボルト兄さんは私の自慢の家族だよ”


その言葉を聞いた瞬間。


ボルトの瞳から一筋の涙が零れる。


(俺にとっても)


(お前は自慢の妹だ)


左胸で輝いていた光が静かに消えていく。


体から力が抜ける。


ボルトは最後に優しく微笑んだ。


そして。


目の前のボニーへ向かうように倒れ込む。


だが。


その体はボニーをすり抜け、そのまま地面へ崩れ落ちた。


ドサリ――


静かな音が響く。


ボニーは倒れたボルトを見つめる。


そして少しだけ視線を動かした。


ゴクウ。


メタ。


ブレイク。


三人の姿が映る。


ボニーは悲しそうに微笑んだ。


“皆、ごめんね”


その言葉を残し――


ボニーの姿は朝靄のようにゆっくりと消えていった。

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