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unlimited  作者: 轟号剛


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遠走高飛

ウィンドを追うアクアとフレイは、後方から水と炎による攻撃を放っていた。


しかしウィンドは風を操り、空中を自由自在に飛び回ってその全てを回避している。


「お前ら、空中戦で俺に敵うと思ってんじゃねーよなぁ?」


暴風域ボウフウイキ


ウィンドが挑発的に笑うと同時に、周囲一帯へ暴風が吹き荒れる。


突風によってアクアとフレイの飛行は大きく乱され、二人の体が空中で不安定に揺れた。


「くっ……面倒なことしてくれる」


アクアは苦々しい表情を浮かべながら隣を見る。


フレイは未だ迷いを抱えているようで、その表情は硬い。


「おいフレイ、覚悟を決めろ!」


アクアは怒鳴るように叫ぶ。


「そんな中途半端な気持ちで戦ってたら、すぐにやられるぞ!」


同時に、アクアは手足から噴射している水の出力を細かく調整し、なんとか飛行姿勢を安定させる。


「分かっている……頭では分かっているんだが……」


フレイの脳裏には、日々ボルトに稽古をつけてもらった記憶が浮かんでいた。


横にはいつもウィンドがいて、共に汗を流し、競い合いながら強くなっていった。


そんな日々が頭から離れない。


「お前の正義は、封印の宝玉を盗んだボルト達を逃がすことを許すのか!?」


アクアの叫びが空に響く。


「違うだろ!」


「お前はそんなことを許す奴じゃない! お前の正義は今ここで、あいつを止めろって言ってるはずだ!」


アクアは空中で、自身を包み込む巨大な水球を形成する。


水球は暴風に流されることなくその場に留まり、アクアは両手両足を自由に動かせる状態となった。


「道を作ってやる」


アクアは僅かに口角を上げる。


「一発、あの馬鹿野郎に入れてこい!」


その言葉を聞いた瞬間、フレイの瞳に再び炎が宿る。


水竜スイリュウ


アクアが人差し指をウィンドへ向ける。


すると背後から巨大な水の竜が現れ、轟音を上げながらウィンドへ突進していった。


暴風の影響すら受けず、水竜は一直線に空を駆ける。


「はっ! いきなり大技かよ。体力持つのか?」


ウィンドは笑みを浮かべたまま両手を前へ突き出す。


竜巻タツマキ


周囲に吹き荒れていた暴風がウィンドの前方へ集束していく。


風は巨大な渦となり、向かってきた水竜を丸ごと飲み込んだ。


水竜はそのまま上空へ巻き上げられていく。


――だが。


突如、水竜の腹部が赤く染まった。


次の瞬間。


ドォン!!


水竜の腹が内側から爆発し、その中からフレイが飛び出してくる。


「なっ!?」


突然の奇襲に、ウィンドは目を見開いた。


反射的に両腕をクロスし、防御姿勢を取る。


熱血拳ネッケツパンチ


フレイの拳は超高熱によって真紅に染まっていた。


拳がウィンドの腕へ直撃する。


「ちっ! 風の加護カゼノカゴ!」


ウィンドは咄嗟に全身へ風を纏う。


しかし勢いを殺し切れず、そのまま地面へ向かって吹き飛ばされた。


ドゴォン!!


地面へ激突した衝撃で砂煙が周囲へ舞い上がる。


「はぁぁぁ!!」


砂煙の中からウィンドの叫び声が響いた。


同時に凄まじい暴風が吹き荒れ、砂煙を一気に吹き飛ばす。


姿を現したウィンドの腕は赤く腫れ上がり、額からは血が流れていた。


「今のは……かなり効いたぞ」


痛みを堪えながらも、ウィンドは笑みを崩さない。


「なぁフレイ」


ウィンドは真っ直ぐフレイを見つめる。


「お前も俺達と一緒に来いよ!」


「今までみたいに、ボルトさんに稽古つけてもらいながらさ……二人で馬鹿やろうぜ!」


その言葉は、今のフレイにとって最も心を揺らす誘いだった。


覚悟を決めたはずの心が、僅かに揺れる。


「フレイ……」


アクアは心配そうにフレイを見る。


フレイは一度静かに目を閉じた。


そして深く息を吐く。


再び目を開いた時、その瞳から迷いは消えていた。


「俺はボルトさんを尊敬してる」


フレイは静かに口を開く。


「目標にもしてる」


「だけどな……俺はお前みたいに盲信はできないんだ」


フレイはアクアを一瞥し、小さく頷く。


もう大丈夫だ――そう伝えるように。


「封印の宝玉を盗んだお前達を、ここで止める」


「それが俺の正義だ」


ウィンドはその返答を聞き、一瞬だけ寂しそうに笑った。


だが次の瞬間、その笑みは消え去る。


凄まじい殺気が、アクアとフレイへ向けて放たれた。


「そうか」


ウィンドの声が低く響く。


「なら――殺す気でいくぞ」


-


「私を追ってきたのはブレイクさんでしたか」


サイコは森の中を駆けていたが、後方から迫る気配に気づき足を止める。


「あぁ」


木々の間から姿を現したブレイクは、そのまま速度を落とさずサイコへ向かって突進する。


「お前を説得しても意味がないのは分かりきってるからな。力づくで止めさせてもらうぞ」


「うふふ、お手柔らかにお願いしますわ」


サイコは口元に手を当てて微笑む。


すると、すぐそばに立っていた大木が根元から浮かび上がり、そのままブレイクへ向かって勢いよく飛んでいく。


「お前相手に手は抜いてられねーな」


ブレイクは迫る木へ右手を触れさせる。


次の瞬間――大木は跡形もなく消滅した。


念葉手裏剣ネンハシュリケン


サイコが腕を振るう。


すると周囲に舞っていた木の葉が一斉に宙へ浮かび、鋭利な刃物のような速度でブレイクへ襲いかかる。


「これでしたら、あなたの右手だけでは防ぎきれないでしょう?」


無数の葉は、障害物となる枝を簡単に切断しながら一直線に飛翔する。


ザザザザッ!!


葉は次々にブレイクが立っていた場所へ突き刺さっていく。


しかし。


全ての葉が地面へ落ちた時には、そこにブレイクの姿は無かった。


「そういえば……そういう事も出来ましたね」


サイコはすぐに状況を理解する。


彼女は自分の足元の地面を念力で浮かせ、そのまま空中へ上昇した。


直後。


ドゴッ!!


先ほどまでサイコが立っていた地面を突き破り、ブレイクが飛び出してくる。


「やはりバレていたか」


ブレイクは空振りした拳を引きながら、左手で体についた土埃を払った。


「宙に浮かんでしまえば、近接攻撃しかできないあなたは怖くありませんわ」


サイコは空中からブレイクを見下ろし、余裕の笑みを浮かべる。


「やっぱり相性が悪いな」


ブレイクは苦笑いを浮かべる。


「だが――役目は全うさせてもらうぞ」


ブレイクは真上に浮かぶサイコと、自身の右手を交互に見つめながら思考を巡らせる。


どうすれば、あの女に攻撃を届かせられるか。


森の中に静かな緊張が張り詰めていく。


-


「やっぱりチェスさんが私を追いかけてきたんだね」


ボニーは、空から追ってきたチェスを待っていたかのように静かに立っていた。


「お前は私の妻を使うつもりだろう? それなら私が相手をするべきだ」


ビショップが地面へ降り立つ。


チェスはその背から静かに降りると、自身の背中に背負っていた長槍を引き抜いた。


「そうだね」


ボニーは苦笑いを浮かべる。


「チェスさん強いから、リルさんを使わないと勝てないよ。だからこの場所を選んだの」


二人がいる場所は墓地だった。


無数の墓石が並ぶ静かな場所。


その中には――チェスの妻、リルの墓も存在している。


「お前はボルトとは違い、柔軟な考えを持つ」


チェスは悲しげな目をボニーへ向ける。


「考え直してはくれんかの?」


「超能隊にはすごくお世話になったし、超国も好きだよ」


ボニーはゆっくり首を横に振る。


「ただね、私にとってボルト兄さんは大切な家族なの」


「ボルト兄さんの行く場所なら、私はどこまでもついて行く」


その瞳に迷いは無い。


ボニーは左手を空へ掲げた。


生屍無活リビングデッド


地面が揺れる。


次の瞬間。


墓場の土を突き破るように、無数の骨が這い出してきた。


骨達は次々と人型を成していき、その数は千を超えようとしている。


「いきなさい」


ボニーが命令を下すと、骨兵達は一斉にチェスへ向かって走り出した。


「クイーン」


チェスが静かに呼ぶ。


すると地面から、純白の鎧を纏った女性騎士が現れた。


その巨体はチェスと同等の二メートルほど。


頭部には氷の結晶のような装飾があり、手には自身の身長ほどもある巨大な剣を握っている。


「キング。よろしいでしょうか?」


クイーンは膝をついたまま、チェスへ確認を取る。


「あぁ、やってくれ」


許可が下りる。


クイーンはゆっくり立ち上がると、迫り来る骨兵達へ剣を向けた。


ゼロ活動停止ヒアクティブ


剣から風が放たれる。


だがその風は弱々しく、涼しい風程度にしか感じられない。


骨兵達は構わず前進を続ける。


もう少しでチェス達へ辿り着こうかという、その瞬間――


クイーンが剣を静かに振り下ろした。


パキパキパキッ――!!


突如、全ての骨兵達が一斉に凍結する。


千体を超える骨達は、その場で氷像のように停止した。


「出たわね、チート能力」


ボニーは冷や汗を流しながら距離を取っていた。


クイーンが現れた瞬間から警戒していたおかげで、風を受けずに済んだようだ。


「お前も大概じゃと思うけどな」


チェスは落ち着いた様子で返す。


その余裕に、ボニーはわずかに眉をひそめた。


「ただ――まだまだいるわよ!」


ボニーが再び左手を掲げる。


すると、またしても大量の骨兵が地面から這い出してくる。


蘇生リバイブ


今度は右手の親指を噛み切り、流れた血を地面へ押し付けた。


すると、地中から現れた骨へ肉と皮膚が再生されていく。


やがて三人の人影が姿を現した。


「お主の父、メテオ」


チェスは低い声で呟く。


「ウィンドの母、シルブ」


そして、最後の一人へ視線が向けられる。


チェスの表情が僅かに揺れた。


「……リル」


それは。


チェスの亡き妻、その人だった。

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