表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
unlimited  作者: 轟号剛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/35

来訪者

「師匠! 今日も稽古をつけてくれ!」


元気よく声を張り上げたのは、ウィンド・エリファー。


二十年後に地下牢へ収監されていた男である。


若き日のウィンドは、後の無精髭姿とは違い顎周りもすっきりしており、緑色の髪には軽くパーマがかかっている。どこか軽薄そうな雰囲気すら漂わせていた。


「ウィンドだけずるいぞ! 俺も稽古をつけてください!」


ウィンドの隣に立つフレイも、負けじと大声を上げる。


フレイは二十年後と変わらず高身長でガタイが良く、赤髪の坊主頭が特徴的だ。


「お前らは本当に暑苦しいな……。ボニーさん、サイコさん、私達はお茶でもしていませんか?」


熱血な二人とは対照的に、冷静な様子で話すのはアクアである。


二十年後とは違い、水色の髪は腰まで伸びており、眼鏡もかけていない。表情にも幼さが残っていて、全体的に可愛らしい印象を受ける。


「二人まとめて稽古をつけてやる。修練場に来い」


ウィンドに“師匠”と呼ばれた男が短く告げると、本部の奥へ向かって歩き出した。


男の名はボルト・カース。


褐色の肌に、左側を坊主、右側をドレッドヘアにした奇抜な髪型が特徴の人物である。


「「ありがとうございます!!」」


ウィンドとフレイは声を揃えて礼を言うと、嬉しそうにボルトの後を追いかけていく。


「はぁ、任務終わりだっていうのに元気すぎるでしょ、あいつら」


呆れたように肩をすくめたのは、ボルトの妹であるボニー・カース。


兄と同じ褐色の肌に、腰まで伸びた黄色い髪をしており、長いまつ毛が印象的な女性だ。


「アクアさんは、一緒に稽古をつけてもらわなくてよかったのですか?」


丁寧な口調で問いかけるのは、茶髪のツインテールが特徴のサイコ・ノースィスである。


「私は任務外で汗をかきたくないので、遠慮しておきます」


アクアは苦笑いを浮かべながら答えた。


――その時。


[緊急連絡! 機国からミサイルを確認! 東北のロベリア海岸へ向かって飛行中! 超能隊は至急対応してください!]


街中に設置されたスピーカーから、女性の緊迫した声が響き渡る。


「スーザンさんの声ですね。すぐ向かいましょう」


アクアは即座に反応すると、ボニーとサイコを含めた三人の足元へ水を集め始める。


しかし次の瞬間、三人の頭上を凄まじい速度で何かが通過した。


見上げると、ウィンド、フレイ、ボルトの三人が既に空へ飛び出している。


「……彼らに任せておけば大丈夫そうですね」


アクアは集めていた水を散開させながら、小さく息を吐いた。


「ふふ、頼もしいですね」


サイコも三人の背中を見上げ、穏やかに微笑む。


一方その頃――。


ロベリア海岸へ向かった三人は、迫り来る巨大なミサイルを既に視界に捉えていた。


-


ウィンドは風、フレイは炎、ボルトは雷をそれぞれ身に纏いながら、凄まじい速度で空を駆けていた。


既に三人はロベリア海岸上空付近まで到達している。


遠方には、機国から放たれた巨大なミサイルが白煙を引きながら迫っていた。


「俺がミサイルを破壊する。ウィンドとフレイは爆発の影響を抑えろ」


ボルトは短く指示を出すと、大きく口を開く。


口内では激しい雷光が弾け始めていた。


ボルトは迫り来るミサイルへ狙いを定める。


雷吠ライバイ


口の中で圧縮していた雷を、咆哮と共に一気に撃ち放つ。


ドカァァァン!!!!


雷撃とミサイルが衝突した瞬間、上空で巨大な爆発が巻き起こった。


抑炎ヨクエンシュク


フレイが爆炎へ向かって手をかざす。


すると、拡散しようとしていた炎が急激に圧縮され始め、それ以上広がることなく徐々に小さくなっていく。


暴風域ボウフウイキ


続けてウィンドが両手を左右に広げる。


瞬間、海岸一帯に暴風が吹き荒れ、爆発による衝撃波を押し返していく。


轟音と暴風がしばらく続いた後、やがて爆炎も衝撃も完全に消え去った。


静寂を取り戻した海の上で、二人は大きく息を吐く。


「はぁ……はぁ……やっと収まったか」


フレイは額の汗を腕で拭う。


「はぁ……はぁ……ボルトさん、終わりました!」


ウィンドも肩で息をしながら、海岸へ降下していく。


ボルトは先に砂浜へ着地しており、二人へ視線を向ける。


「二人とも、よくやった」


不器用ながらも、僅かに口角を上げて二人を労う。


その言葉を聞き、ウィンドとフレイも嬉しそうに笑みを浮かべた。


「一旦本部へ戻る。状況報告だ」


「「はい!」」


二人は力強く返事をすると、再び能力を纏う。


雷、炎、風――。


三つの光が夜空を駆け抜け、本部へ向かって飛び去っていった。


-


「何でだ、チェスさん! 納得できませんよ!」


ボルトは目の前に立つチェスへ怒声をぶつける。


感情の高ぶりに呼応するように、全身から雷が激しく弾けていた。


「これは元老院の決定だ。お前がどれだけ反発しようと覆りはせん」


チェスは怒りを露わにするボルトに対しても、一切動じることなく毅然と答える。


二十年後と比べると、チェスは髪も髭も短く、年齢も五十代前後ほどに見える。まだ杖も持っておらず、その立ち姿には衰えを感じさせない威厳があった。


「何もやり返さねぇから、機国の連中が調子に乗って攻撃してくるんだ! 俺達だけでも行かせてくれ!」


ボルトは怒りのままチェスの胸ぐらを掴み上げる。


バチバチと雷が周囲へ散った。


「おい、ボルト。やりすぎだ。手を離せ」


低い声と共に、側にいたブレイクがボルトの腕を左手で払いのける。


二十年後には白髪混じりだったブレイクの髪も、今はまだ黒一色だ。顔にも深い皺はなく、全盛期の威圧感を漂わせている。


「チッ……」


ボルトは舌打ちすると、乱暴にチェスから手を離した。


「頭冷やしてくる」


吐き捨てるように言うと、そのまま本部の出口へ向かってズカズカと歩いていく。


そんなボルトの後ろを、ボニー、サイコ、ウィンドの三人が無言のまま追いかけていった。


本部には重苦しい空気だけが残される。


-


ボルト達四人は、現在森の中を歩いていた。


どうやら海岸へ向かっているようだ。


「ボルト兄さん、謝りに戻った方がいいんじゃな〜い?」


ボニーが軽い口調でボルトへ話しかける。


「別に師匠は間違ったこと言ってねぇんだから、謝る必要なんてねーだろ」


ボルトの隣を歩くウィンドが、不機嫌そうにボニーへ言い返した。


「そうですよ。ボルトさんはいつだって正しいんですから」


続けて、ボニーの横を歩くサイコも口元に手を添えながら上品に微笑む。


「はぁ……信者二人の相手は疲れるわ……」


ボニーは額に手を当て、呆れたようにため息を吐いた。


「海岸で頭冷やしたら戻る」


ボルトは険しい表情のまま短く答える。


ボニーの方を見ることなく、ただ真っ直ぐ前を歩き続けていた。


「ちょうど話していたら海岸が見えてきましたわ」


サイコの言葉通り、四人は森を抜け、ロベリア海岸へ辿り着く。


――その時。


「誰だ、お前!」


ボルトが鋭い声を上げる。


四人の視線の先。


海岸の上空には、一人の男が浮かんでいた。


男は黒髪の短髪で、派手かつ豪華な衣装を身に纏っている。


「おー、ちょうど良かった。お主ら男二人、先ほどミサイルを処理しておったな!」


男はボルトの問いを無視し、楽しそうに四人へ話しかけてきた。


「おい! 師匠の質問に答えやがれ!」


ウィンドが怒気を露わにしながら叫ぶ。


「あー、すまんすまん」


男は悪びれもなく笑う。


「余の名はヒエン・リンカン。今年から帝国の王になった男よ!」


その言葉を聞いた瞬間、四人の表情が変わる。


まさかの帝国の王の登場に驚きながらも、即座に全員が戦闘態勢へ移行した。


「違う違う! 余は戦いに来たわけではない」


ヒエンは両手を振りながら否定する。


「余は王になったばかりでな。今、各地で優秀な側近を探しておるのだ」


「……それで、今日ミサイルを止めた俺達を勧誘しに来たってわけか?」


ボルトは警戒を解かぬまま問い返す。


全身にはバチバチと雷が走っていた。


「あぁ、その通りだ」


ヒエンは空中で腕を広げる。


「帝国の幹部になれば、金も名誉も好きなだけ手に入る。それに帝国は、機国や王国から攻撃を受ければ必ず報復する」


ヒエンは不敵に笑った。


「だが超国は違う。ミサイルを撃ち込まれても、何もせんのであろう?」


その言葉に、ウィンドとボルトの表情が僅かに険しくなる。


ヒエンはその反応を見て口角を上げた。


ウィンド、ボニー、サイコの三人は黙ったままボルトの反応を窺っている。


「……その誘いを受けたら、本当に幹部にしてくれるのか?」


ボルトは興味を示したように低い声で問いかけた。


「もちろん、ただではない」


ヒエンは人差し指を立てる。


「条件が一つだけある」


「超国が保有している“封印の宝玉”を持ってこい。それを手土産として差し出せば、幹部の座を約束しよう」


ヒエンは満面の笑みで告げる。


「今すぐ返答を求めるつもりはない。余はもう帝国へ帰る」


ヒエンの身体がふわりと上昇する。


「帝国は、お主達をいつでも歓迎しよう」


次の瞬間。


ヒエンは凄まじい速度で空へ飛び去り、あっという間に空の彼方へ消えていった。


静寂が海岸を包む。


「……ボルト兄さん、どうするの?」


ボニーが静かに問いかける。


ボルトは海を見つめたまま、しばらく口を開かなかった。


「俺は――」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ