元超能体の男
超能隊本部の地下は牢屋になっており、地下三階まで存在する。
地下へ行くほど危険な犯罪者が収容されており、地下へ向かうには本部内にある階段を利用するしかない。
当然、その階段の前には常に超能隊員が交代で見張りについている。
だが現在、超能隊の主力は門や街へ配置されていた。
本部に残っているのは非戦闘員ばかりである。
コン、コン、コン――
地下三階。
静まり返った通路に微かな足音が響く。
しかし、その足音の主の姿は見えない。
足音は最奥の牢屋の前で止まった。
「誰だ?」
牢屋の中の男が声を上げる。
緑色の短髪。
無造作に伸びた髭。
吊り上がった目尻が威圧感を与えている。
男の名はウィンド。
地下三階に収監されている危険人物の一人である。
パチン。
指を鳴らす音が響く。
すると何もなかった空間にコピの姿が現れた。
「はじめまして、ウィンドさん」
コピは優雅に一礼する。
「私はメシアという組織のリーダーをしております、コピ・クロームと申します」
「で、何しに来た?」
ウィンドは睨みながら尋ねる。
「あなたを勧誘しに来ました」
コピは微笑みながら手のひらを向けた。
「そうか」
ウィンドは興味なさそうに視線を逸らす。
「なら帰れ。お前らに協力する義理はねぇ」
そのまま目を閉じた。
「でしたら私達の目的についてお話ししましょう」
コピは構わず話を続ける。
「それを聞いた上で協力するかどうか決めてください」
ウィンドは反応しない。
それでもコピは語り始めた。
「私達の目的は――――」
⸻
「協力してやる」
コピの話を聞き終えたウィンドがゆっくりと目を開く。
その瞳には先程まで無かった闘志が宿っていた。
パチン。
コピが指を鳴らす。
するとウィンドの身体を拘束していた鎖が一斉に砕け散った。
ガシャン――!
重い音が地下通路へ響く。
「では行きましょうか」
コピは微笑む。
ウィンドは立ち上がり、自らの足で牢屋の外へ出た。
パチン。
再び指が鳴る。
今度は二人の周囲にピンク色のカーテンが現れた。
カーテンがぐるりと二人を囲む。
そして一周した瞬間。
地下三階からコピとウィンドの姿は消えていた。
-
東門ではサイユウの三人を相手に、イゾウが互角の戦いを繰り広げていた。
「結界」
ゴジョウが杖を地面に叩きつける。
するとイゾウを囲むように立方体の結界が出現し、その中へ閉じ込めた。
「巨手」
続けてハッカイの右腕が急激に肥大化する。
巨大な拳が結界ごとイゾウを押し潰そうと振り下ろされた。
「良いチームワークだな」
イゾウは感心したように呟く。
そして刀を結界へ向けると、そのまま伸ばした。
刀身は結界に阻まれる。
だがイゾウは構わず伸ばし続けた。
ピシッ――
結界に亀裂が走る。
さらに刀が伸びると結界は耐え切れず砕け散った。
結界は壊れた。
しかしハッカイの拳は既に目前まで迫っている。
イゾウは地面へ斜めに刀を突き刺した。
そのまま刀を伸ばす。
刀に引っ張られるように身体が移動し、ハッカイの拳の範囲から脱出する。
そして刀を元の長さへ戻した。
だが回避のため空中で体勢を崩していた。
その隙をゴクウは見逃さない。
「もらった!」
雲に乗ったゴクウが高速で接近し、棒を振り下ろす。
イゾウは咄嗟に刀を割り込ませる。
しかし空中では踏ん張れない。
「ぐっ!」
そのまま吹き飛ばされた。
地面を転がった後、イゾウは軽く肩を回しながら立ち上がる。
「いてて……やっぱり一筋縄じゃいかねぇな」
「避けてばっかじゃ勝てねぇぞ!」
ゴクウが再び突っ込んでくる。
「だから勝敗にこだわってねぇって言ってるだろうがよ!」
イゾウは刀を向けた。
「風穴」
刀身が一瞬で伸びる。
目で追えないほどの速度だった。
だがゴクウは寸前で身体を捻り回避する。
イゾウはすぐに刀を元へ戻す。
しかしその一瞬の隙を突かれた。
ゴクウの棒が再び胴体へ叩き込まれる。
「ぐぁっ!」
吹き飛ばされた先にはハッカイが待ち構えていた。
「巨手」
巨大な拳が迫る。
イゾウは刀を地面へ伸ばし、削りながら勢いを殺す。
さらに刀を伸ばして空中へ逃れようとした。
「なに!?」
だが上空で見えない壁に激突する。
ゴジョウが張った結界だった。
イゾウの身体は弾き返される。
そこへハッカイの拳が直撃した。
ドゴォン!!
イゾウは吹き飛び、地面を何度もバウンドしながら転がる。
やがて動きが止まった。
「はぁ……やめだやめ」
イゾウは仰向けのまま片手をひらひらと振る。
「ギブアップだよ」
ゴクウ達も追撃を止める。
イゾウは空を見上げながら笑った。
「十分時間は稼いだからな」
「これで給料分は働いただろ」
満足そうに呟くと、そのまま目を閉じた。




