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unlimited  作者: 轟号剛


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20/26

敗北

ポートは自身へ迫る骨の雨を避けるため、瞬間移動でその場から姿を消した。


ボーンはどこに現れても対応できるよう警戒する。


しかし、一向にポートは現れない。


「どこへ行った?」


ボーンが首を傾げたその時。


先ほどまでポートが立っていた場所に再びポートが現れた。


「お待たせ〜」


脇腹には大きな傷を負っていたはずだが、既に綺麗に治っている。


「ストロングさんのところに行って治してもらったんだよ」


不思議そうなボーンに対し、ポートは軽い口調で説明する。


「なら一撃で終わらせる」


中途半端な傷では意味がないと判断したのか、ボーンは大技を使うことにしたようだ。


骸骨騎士(ボーンナイト)


ボーンを覆う骨鎧がさらに巨大化していく。


やがて手には骨で作られた剣と盾が握られ、巨大な骸骨騎士へと姿を変えた。


変化の途中。


既にポートはボーンの頭上へ瞬間移動していた。


両手には大きなバケツ。


その中には大量の水が入っている。


「よっと」


ポートはバケツの水をボーンへぶちまける。


しかしボーンは避けることなく、頭上のポートへ向かって剣を振り上げた。


だがその頃にはポートは既に消えている。


剣は空を切った。


再びポートが頭上へ現れる。


今度も両手には水の入ったバケツ。


そして再び水を浴びせる。


「何がしたい?」


ボーンは怪訝そうな声を漏らす。


ポートの移動先を予測して剣を振るうが、一向に当たらない。


そうして何度も何度も水を浴びせられた結果、骸骨騎士は全身ずぶ濡れになっていた。


「こんなもんかな〜」


ポートは満足そうに頷く。


そして再び姿を消した。


次の瞬間。


現れたポートの両手にはスタンガンが握られていた。


「!」


そこでボーンはようやく狙いを理解する。


即座に骨鎧を解除し、生身へ戻る。


そして骸骨騎士だけをポートへ突撃させた。


「焦ったね〜」


ポートは瞬間移動で骸骨騎士を回避。


そのままボーンの背後へ移動すると、生身のボーンへ両手のスタンガンを押し当てた。


バチバチバチッ!!


強烈な電流が流れる。


ボーンの身体を包んでいた赤い光が消失した。


そして白目を剥き、泡を吹きながらその場へ倒れる。


「致死量の電流なんだけど、強化されてたからちょうどよかったね〜」


ポートは息を切らしながら呟く。


続いてサムの元へ瞬間移動する。


そのままスタンガンを押し当てようとするが――


「甘い」


サムは振り返ると同時にポートの両腕を弾いた。


スタンガンが地面へ転がる。


「はぁ……はぁ……」


ポートは苦笑する。


「無理か〜。流石に限界だからベッドで休ませてもらうよ」


サムが最低限の体術を使えると判断したポートは、無理をせず退却を選ぶ。


瞬間移動。


その姿は一瞬で消え去った。


「戻ってくるまで十分ほどか」


サムは口髭を撫でる。


「それまでにウォーとクッパには決着をつけてもらわないとな」


そう言って拡声器を手に取る。


「ウォー! クッパ!」


戦場に声が響く。


「お前達はまだまだ強くなれる! 気合いを入れろ!」


その言葉を受けた瞬間。


二人を包む赤い光がさらに強く輝いた。


「二段階目まで上げると、後で死ぬほど苦しむことになるがな」


サムは小さく呟く。


「許せよ」


そう言って再び戦場へ視線を向けた。


-


レイは依然としてクッパが生み出したパクパク達に囲まれていた。


サムによる強化を受けたことで、パクパク達も凶暴化している。


今まで丸だった目は✕印へと変わり、口から生える歯もより鋭く長くなっていた。


「ヒッヒッヒッ。さらに強化されたこいつらに襲われたら、もう終わりだよ」


レイからはクッパの姿が見えていない。


だが、その声には勝利を確信した余裕が滲んでいた。


「さぁ、やれ!」


クッパの合図と同時に、パクパク達が一斉にレイへ襲いかかる。


「霊化」


レイが能力を発動する。


パクパク達はレイの身体をすり抜けていった。


そしてレイは顔を上げる。


すると、その身体がゆっくりと宙へ浮かび上がった。


包囲網から脱出するつもりらしい。


「ヒッヒッヒッ! 甘ぇよ!」


クッパは空中のレイへ人差し指を向ける。


次の瞬間。


指先から大量のパクパクが弾丸のように射出された。


だが当然、それらもレイの身体をすり抜けていく。


レイは少しずつクッパとの距離を縮めていった。


「5……6……7……」


それでもクッパはパクパクを撃ち続けながら秒数を数える。


「8……9……」


レイの鎌が届く距離まであとわずか。


だがクッパは笑った。


「10! 終わりだ!!」


歯喰歯喰(バクバク)


クッパの前に巨大な青い魔物が現れる。


今までの黄色いパクパクとは比べ物にならない大きさだ。


目は✕印。


鋭い牙が何重にも並んでいる。


巨大な魔物――バクバクは大口を開くと、レイへ食らいついた。


レイの身体を噛み砕き、そのまま喰らい尽くす。


はずだった。


「なっ……!?」


クッパの表情が凍りつく。


バクバクの牙は再びレイの身体をすり抜けていた。


「終わりだよ」


レイは静かに鎌を構える。


「舐めるなよ!」


クッパは強化された身体能力で殴りかかる。


だが、その拳もまたレイの身体を通り抜けた。


レイはクッパの身体をすり抜ける。


そして。


「カハッ――」


鎌の柄を首筋へ叩き込んだ。


クッパは白目を剥き、その場へ崩れ落ちる。


「僕の能力については知ってたみたいだけど……」


レイは倒れたクッパを見下ろす。


「僕自身のことを知らなかったのが敗因だよ」


レイの能力は、自身の身体を幽霊のような非実体状態へ変化させる能力である。


そしてその能力には弱点があった。


十秒以上連続で使用すると、一秒間だけ能力を使えなくなる。


この情報は以前コピが超能隊と戦った際に得たものだった。


コピはその情報をサムへ伝え、サムは幹部達へ共有していた。


だが。


「僕はね……」


レイは小さく呟く。


「攻撃をすり抜けた後、次の攻撃が当たるまでの一瞬だけ能力を解除してたんだ」


パクパクをすり抜ける。


解除。


次の攻撃が当たる直前に再発動。


解除時間はコンマ数秒。


その積み重ねによって十秒という制限時間をリセットし続けていた。


当然、その瞬間は浮遊能力も失われる。


だが落下する前に再発動しているため問題にならない。


それは常人には到底真似できない精密な能力操作だった。


これこそがレイが超能隊最強と呼ばれる理由。


能力そのものではなく、それを扱う才能が異常なのだ。


能力を模倣できるコピですら、この芸当だけは再現できない。


「相手が悪かったね……」


レイはそう呟く。


だが勝利したというのに嬉しそうな様子はない。


相変わらず自信なさげな表情のまま。


レイはまだ戦闘が続いているカードの方へと歩き出した。


-


残るはカードとウォーの戦いのみ。


しかし、カードの攻撃はことごとく無効化されており、防戦一方となっていた。


「相性が悪かったようだな」


ウォーの硬質化した拳が振り下ろされる。


カードは左手の盾で受け止めるが――


バキィッ!!


ついに限界が訪いた。


盾は粉々に砕け散る。


「こっからが本番だ」


盾を失ってもカードは動揺しない。


右手に持つ棍棒を両手で握り直す。


「火の星座・活動の羊」


カードが詠唱すると、棍棒から激しい炎が噴き上がる。


轟々と燃え盛る炎。


そして次の瞬間。


カードは一気にウォーとの距離を詰めた。


「なっ――」


ウォーは反応する。


だが遅い。


炎を纏った棍棒が身体を切り裂くように叩きつけられる。


「ぐあああぁっ!!」


ウォーは咄嗟に液体化する。


しかし炎までは無効化できなかった。


切られた箇所は真っ黒に焼け焦げている。


液体化では防げない。


そう悟ったウォーは即座に全身を硬質化させた。


そしてカードへ殴りかかる。


「無駄だ」


カードは冷静に言い放つ。


「連撃」


ウォーの拳を躱した瞬間。


カードの姿がぶれた。


炎を纏った棍棒が次々とウォーへ叩き込まれる。


肩。


腹。


脇腹。


背中。


硬質化した身体であるにもかかわらず、その度にウォーは悲鳴を上げた。


炎が肉体を焼き続けているのだ。


「ぐっ……!」


ウォーが膝をつく。


その隙を逃さず、カードは最後の一撃を振り下ろした。


燃え盛る棍棒が首筋へ叩き込まれる。


ウォーは白目を剥くと、そのまま地面へ倒れ込んだ。


「終わりだ」


カードは棍棒を肩に担ぐ。


ちょうどその時。


レイが歩いてきた。


「何だ、来る意味なかったね……」


レイは少し残念そうに呟く。


「おう」


カードは笑う。


「ポートはいねぇみたいだが、どうやら俺が最後だったみたいだな」


そう言うと遠くへ視線を向ける。


そこには戦況を見守っていたサムが立っていた。


「はぁ……負けだ」


サムは苦笑する。


そしてその場に胡座をかき、両手を上げた。


降参の意思表示だった。

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