表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
unlimited  作者: 轟号剛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/16

四カ国

キーンコーンカーンコーン。


学校中にチャイムの音が響き渡る。


「時間じゃぞ。みんな席につくのじゃ」


教壇の前に立つ老人が、生徒たちへ声をかけた。


老人の名はチェス。


長い白髪と腰近くまで伸びた白髭が特徴的な老人だ。


かつて超能隊を率いていた英雄であり、今は学校長として子供たちに知識を教えている。


その一声で、生徒たちは遊ぶのをやめて自分の席へ戻っていく。


「では授業を始めるぞい。本日は四ヵ国の現状についてじゃ」


チェスは黒板に四つの円を描いた。


北に超国。


西に王国。


東に機国。


南に帝国。


それぞれの名前を書き終えると、生徒たちへ向き直る。


「まずは超国と王国について説明できる者はおるかの?」


一人の少年が勢いよく手を挙げた。


「マイルズか。では頼むぞい」


「はい、チェス先生!」


マイルズは元気よく立ち上がる。


「まず超国です。超国ではほとんどの人が超能力を使えます。同じ能力を持つ人は存在せず、犯罪や他国からの侵略は超能隊が守っています。また政治は元老院の三名によって行われています」


「うむ、その通りじゃ」


チェスは満足そうに頷く。


「ただし昔の人物と同じ能力が発現した例は確認されておる。そこは補足しておこうかの」


マイルズは頷いて説明を続ける。


「王国は王族の血筋を重視する国です。また神教という宗教が広く信仰されています」


「よくできましたじゃ」


チェスは拍手をする。


「王国のアース王は超国に友好的じゃ。しかし神教では超能力を悪魔の力と教えておるため、国同士の関係は少々複雑なのじゃよ」


生徒たちは真剣にノートへ書き込んでいく。


「では次に帝国と機国じゃ。誰か説明できる者はおるかの?」


教室が静かになる。


その中で一人の少女が恐る恐る手を挙げた。


「カーナか。ありがとう。頼むぞい」


「は、はい!」


カーナは緊張した様子で立ち上がる。


「帝国は実力が全ての国です。身分に関係なく王になることができます。現在の王であるヒエン王は二十年間も王座を守り続けています」


「うむ。素晴らしい」


チェスは黒板にヒエンの似顔絵を描き始めた。


しかし完成した絵は、人なのか動物なのかも分からない代物だった。


教室内が微妙な空気になる。


それでも誰も何も言わない。


触れてはいけないのだ。


「ヒエン王は最新技術への関心が強く、近年は機国との交流を積極的に進めておる」


チェスは何事もなかったように話を続ける。


「最後に機国です」


カーナは小さく息を吸う。


「機国は機械技術が発達していて、多くの仕事を機械が行っています」


「その通りじゃ」


チェスは頷いた。


「しかし機国は超国を良く思っておらん」


教室の空気が少し変わる。


「昔、超国のある人物が魔王をこの世界へ招いてしまった」


生徒たちがざわつく。


「その事件で機国は大きな被害を受けた。以来、機国は超国への報復を続けておるのじゃ」


黒板は既に文字で埋め尽くされていた。


「魔王事件については、また別の機会に話そうかの」


チェスはチョークを置く。


「本日の授業はここまでじゃ。みんな気をつけて帰るのじゃぞ」


キーンコーンカーンコーン。


ちょうどその時、終業のチャイムが鳴った。


生徒たちは一斉に立ち上がる。


その瞬間だった。


『業###です。超能##部で道##りが現##した! ブレイク#んが####と修##で試#をす#み#いなので#時間が###る方##ぜひ###だ##い!』


突然、チェスの頭の中にパシーの声が響く。


しかし通信状態が悪いのか、内容のほとんどが聞き取れない。


チェスは目を細めた。


「ほう……」


長い髭を撫でる。


先ほどまでの穏やかな教師の顔ではない。


かつて超能隊を率いた男の顔だった。


「何やら面白そうなことになっておるのう」


そう呟くと、チェスは静かに教室を後にした。


「ウェンくん、起きてくださーい! あー、二度寝しちゃダメですよ! ウェンくんが二度寝することくらい知ってるんですからね! 今日はアクアさんと畑の水やりです! ちゃんと起きてくださいよ〜!」


頭の中にパシーの声が響く。


その声で目を覚ました青年――ウェン・ウィークは、大きな欠伸をした。


「ふぁぁ……もう朝かぁ……」


青い天然パーマの寝癖を適当に手で整えながら体を起こす。


今日は水曜日。


火曜日担当のチューズから身体を引き継いだのは、怠け者のウェンだった。


「あと五時間くらい寝たいな〜」


そう呟きながら時計を見る。


そして迷うことなく再び布団へ潜り込んだ。


「やっぱり寝よ〜」



ドンドンドン!


勢いよく扉が叩かれる。


「おいウェン! 起きろ! どうせ寝直すから起こしに行けってパシーさんに頼まれたんだ!」


聞き慣れた声だった。


「もういないよ〜」


布団の中から返事をする。


「返事してる時点でいるじゃねーか!」


ガチャリ。


鍵の開く音が響いた。


オレンジ色のオーラが鍵穴へ流れ込み、勝手に鍵が開く。


部屋へ入ってきたのはオーラ・ナックスだった。


「入るぞ」


「ちょっ――」


オーラは容赦なく布団を剥ぎ取る。


「やめてよ〜」


「ダメだ。仕事だ」


オーラはウェンの腕を掴み、そのまま玄関まで引きずっていく。


「俺も今日はハッカイさんと家作りなんだよ。お前だけサボるな」


「分かったから引っ張らないでよ〜」


ようやく解放されたウェンは不満そうに頬を膨らませた。



家を出るとオーラはすぐに走り去った。


「じゃあな!」


「はいはい〜」


ウェンは気の抜けた返事をする。


そして畑へ向かって歩き始めた。


「雨でも降ってくれたら仕事なくなるのにな〜」


空を見上げながらため息を吐く。


その時だった。


「ウェンじゃないか!」


元気な声が飛んでくる。


振り向くとアクア・ムツナがこちらへ歩いてきていた。


短い水色の髪に眼鏡。


背の高い女性だ。


「ちょうど良かった! 一緒に飛んで行こう!」


「飛ぶのは嫌です」


ウェンは即答した。


「歩いて行きましょうよ」


「根性が足りん!」


アクアは笑う。


「いい訓練だ!」


足元に大量の水が集まり始める。


ウェンの顔が青ざめた。


「ちょっと待っ――」


次の瞬間。


ドォン!


二人の身体が空へ打ち上げられた。


「うわああああああああ!!」


ウェンの悲鳴が空へ響く。


一方アクアは平然としていた。


むしろ足元から水を噴射し、さらに加速している。


「アクアさん楽しんでません!?」


「楽しいぞ!」


「ですよねぇぇぇぇ!!」



やがて畑が見えてくる。


アクアは華麗に着地した。


対するウェンは慌てて能力を発動する。


「水玉ミズタマ!」


身体を包む水球が形成される。


そのまま地面へ激突。


バシャアッ!


水が弾け飛んだ。


「いてて……」


ウェンは尻もちをつきながら立ち上がる。


「上手く着地できたじゃないか」


アクアは満足そうに頷いた。


「では仕事だ」


「少しくらい休ませてくださいよ〜」



二人は畑へ向かって手を掲げる。


「「雨降レインシャワー」」


巨大な水球が空へ打ち上がる。


二つの水球は空中でぶつかり、細かな雨となって畑へ降り注いだ。


乾いた土が潤っていく。


しかし水が届いたのは畑全体のわずか一部だけだった。


「あと十九回くらいですね〜」


「気合いだ」


「うへぇ……」


ウェンはげんなりした表情になる。



その時だった。


『業務連絡です!』


頭の中にパシーの声が響く。


『超能隊本部で道場破りが現れました! ブレイクさんが修練場で試合を行うそうです! 時間が空いている方はぜひ見に来てくださーい!』


ウェンの目が一瞬で輝く。


「アクアさん!」


「ダメだ」


「まだ何も言ってないですよ!?」


「仕事を終わらせてからだ」


「そんなぁぁぁぁ……」


ウェンは膝から崩れ落ちた。


ブレイクの試合。


超能隊最強格の戦い。


絶対に見たい。


だが目の前には、まだほとんど手つかずの畑が広がっていた。


ウェンは静かに空を見上げる。


「今から大雨にならないかな〜」


もちろん、そんな都合の良いことは起きなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ