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unlimited  作者: 轟号剛


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16/24

三兄弟 前編

—南門


南門では六人が三組に分かれ、それぞれ一対一の戦いを繰り広げていた。


その中でも最も激しい戦いとなっているのが、バンとロックの組み合わせである。


バンの背中からはコウモリのような翼が生え、耳も鋭く長く変化している。


服装も黒を基調としたものへ変わっており、普段より露出の多い姿になっていた。


対するロックは、全身がゴツゴツとした岩に覆われている。


肌は一切見えず、その姿はまるで岩石の巨人だった。


岩岩弾丸(ガンガンダンガン)


ロックが地面を思い切り殴る。


すると砕けた地面から無数の岩塊が飛び出し、弾丸のような速度でバンへ襲いかかった。


血操(ブラッドオペレーション)網防(ネットバリア)


バンが右手を軽く振る。


五粒の血が宙を舞い、それぞれが瞬時に網状へ変化した。


網は飛来する岩を包み込み、そのまま勢いを殺して地面へ落下させる。


ドドドドドッ!


岩が次々と地面へ転がった。


バンへ届いた岩は一つもない。


「やるガンス」


ロックは短く呟く。


だが感心している暇はない。


既にバンが距離を詰めてきていた。


手には巨大な血の大剣が握られている。


「もらったわ!」


翼を羽ばたかせながら一気に加速し、ロックへ斬りかかる。


岩岩拳点(ガンガンケンテン)


ロックは拳を覆う岩をさらに巨大化させる。


そして振り下ろされる大剣へ正面から拳を叩きつけた。


ガァァァン!!


轟音と共に衝撃波が広がる。


二人の体は反動で大きく吹き飛ばされた。


バンは空中で翼を広げ、華麗に体勢を立て直す。


対するロックは岩の塊のように地面へ激突した。


しかし何事もなかったかのように立ち上がる。


どちらも決定打にはならない。


実力はほぼ互角だった。


「ふふ」


バンは口元に笑みを浮かべる。


「あなた、中々いい男じゃない」


翼をゆっくり羽ばたかせながらロックを見つめた。


「殺し屋なんてやってるのがもったいないわね」


ロックは首を軽く鳴らす。


「物心ついた時からこの仕事で生きてきたガンス」


岩に覆われた顔の奥から低い声が響く。


「別に不満はないガンス」


「そう」


バンは血の大剣を肩に担いだ。


「なら遠慮なく潰せるわね」


「望むところガンス」


ロックも拳を構える。


再び二人の間に緊張が走った。


この接戦は、まだしばらく続きそうだった。


-


バンとロックの派手な戦いとは対照的に、ビースとスードの戦いは超高速で繰り広げられる肉弾戦となっていた。


スードが能力を発動すると、下半身の筋肉が異常なほど発達する。


太腿は丸太のように膨れ上がり、その脚力によって常人では目で追えない速度を生み出していた。


対するビースは、自身の足をチーターの足へと変化させている。


地面を蹴るたびに土が弾け飛び、獣のような俊敏さで駆け抜けていく。


ドンッ!


二人が同時に地面を蹴る。


次の瞬間には姿が消えた。


木々の間を縫うように走り、地面を蹴り、壁を蹴り、再び加速する。


あまりの速さに、残像だけが周囲へ残されていた。


「この速さについてこられる奴に会ったのは、お前が初めてザンス」


スードは急停止すると、振り返って笑う。


その足元には大きな轍が刻まれていた。


「それはこっちも同じだ」


ビースも立ち止まる。


口元から覗く長い八重歯を見せながら笑った。


「やっぱり楽しくなってきた!」


「同感ザンス!」


二人は同時に地面を蹴る。


ドォンッ!!


爆発音にも似た音を響かせながら、再び姿が消えた。


次の瞬間には拳と拳が激突し、衝撃が周囲へ広がる。


この戦いに小細工はない。


純粋な速さを競い合う、真っ向勝負だった。


-


三兄弟の末弟ヘアと戦っているのは、金髪の少女イスである。


ヘアは髪を自在に伸ばして操る能力を持ち、多方向からイスへ攻撃を仕掛けていた。


しかしイスは、右手の人差し指から伸びる青い糸を巧みに操り、ヘアの攻撃をすべてかわしている。


時には地面に糸を引っ掛けて自身を押し出し、時にはヘアの髪へ絡ませて軌道を逸らす。


たった一本の糸だけで、ヘアと互角以上に渡り合っていた。


「何でそんな一本の糸で、俺の髪の束が全部防がれるヤンスか!」


ヘアは自分の攻撃がことごとくいなされていることに恐怖を覚えたのか、徐々に後退していく。


「おいヘア! 心配すんな!」


猛スピードで近づいてきたスードが、ヘアの後方で足を止める。


「お前はあの女より十分強い。もう少し頭を使うザンス!」


その隙を逃さず、ビースが勢いの乗った蹴りを放つ。


スードも即座に反応し蹴りを合わせるが、助走のついたビースの方が威力は上だった。


ドゴッ!!


衝撃とともにスードは後方へ吹き飛ばされる。


「スードの兄貴!」


「心配するな! お前は自分の戦いに集中しろザンス!」


ヘアは心配そうな声を上げるが、スードはすぐに叫び返した。


「頭を使う……。俺は強いヤンス!」


何かを思いついたようにヘアの目が見開かれる。


髪千本(カミセンボン)!」


ヘアは頭を勢いよく振る。


すると無数の髪の毛が針のように飛び出し、イスへ襲いかかった。


螺旋糸(ラセンシ)


イスは青い糸を新体操のリボンのように高速で回転させ、螺旋状の防壁を作り出す。


大半の髪は弾かれた。


だが――


隙間をすり抜けた数本の髪がイスの体を切り裂く。


「ぐっ……!」


髪は体に突き刺さることこそなかったが、腕や頬に浅い傷を刻んでいく。


「これはかなりキツいよ……」


それでもイスは腕を止めず、防御を続ける。


やがて飛んでくる髪の気配が途絶えた。


不思議に思ってヘアを見ると――


そこには頭がツルツルになったヘアが立っていた。


「あっ、あれ?」


ヘアは自分の頭を触る。


「髪の毛が生えてこないヤンス! な、何でヤンスか!?」


慌てて頭を撫で回す。


だが髪は一本も生えてこない。


「こんなに連続で飛ばしたこと無かったヤンス! キャパオーバーしちゃったヤンスか!?」


「もう終わりみたいだね」


イスは肩で息をしながら微笑む。


「すごく痛かったんだから! お返しだよ!」


青糸危機一髪(アオイトキキイッパツ)


人差し指から伸びた青い糸がヘアの頭頂部に張り付く。


次の瞬間、ヘアの体が宙へ持ち上げられた。


「ちょっ! ちょっと待つヤンス! やめてくれヤンス!!」


ヘアは必死に叫ぶ。


だがイスは容赦しない。


糸が勢いよく引き下ろされる。


ドガァン!!


ヘアは頭から地面へ叩きつけられ、小さなクレーターを作りながら気絶した。


「今の一撃で表面に軽く傷ができただけなんだね」


イスは感心したように呟く。


「頭が頑丈で良かったね!」


ヘアの気絶を確認すると、イスはバンとロックの戦いへ目を向ける。


「ビースさんの戦いは速すぎてついていけなさそうだし、バンさんの助太刀に行こうかな!」


そう言って歩き出す。


そして――


体に傷を付けられた仕返しと言わんばかりに、倒れているヘアの頭をわざと踏みつけながら通り過ぎていった。


「いだっ!?」


一瞬だけ意識を取り戻したヘアの悲鳴が響いたが、イスは振り返りもしなかった。

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