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unlimited  作者: 轟号剛


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14/16

紫毒団

—北門


百人を超える盗賊達が、一斉にカインズの三人へ襲い掛かる。


「雑兵は私に任せて! 二人はリーダー格を倒しに行って!」


アブが叫ぶ。


百百分身(ドドブンシン)


その瞬間、アブの周囲に次々と分身が現れ始めた。


一人。


十人。


五十人。


最終的には盗賊達と同じほどの数にまで増殖する。


「行きなさい!」


アブの号令と共に分身達が一斉に駆け出した。


盗賊達も負けじと武器を振り上げる。


両軍が激突し、北門前は一気に乱戦状態となった。


「サンキュー!」


オーラは笑みを浮かべる。


「行くぞウェン!」


「はいはい〜」


二人は盗賊達の間を縫うように走り抜ける。


その先ではポインとイーツが待ち構えていた。


「二人ともこっちまで来るみたいだね」


ポインが口元を歪める。


「イーツ、分かれて戦うよ」


「分かったよ」


二人は左右へ別れて歩き出した。


それを見たオーラも進路を変える。


「サシでやろうってことか」


拳を鳴らしながら笑う。


「俺は紫髪の方をやる。ウェンはデカい方を頼む!」


「は〜……」


ウェンは大きくため息を吐いた。


「オーラを前に出して、僕が後ろから安全に攻撃する作戦だったのにな〜」


「文句言ってねぇで行け!」


「はいはい〜」


渋々といった様子でウェンはイーツの方へ向かう。


「アンタを倒して、さっさと姐さんのところに向かわせてもらうよ!」


イーツは大きな身体を揺らしながらウェンを指差した。


「僕はさっさと終わらせて家に帰りたいんだけどね〜」


ウェンは頭を掻きながら片手を前に出す。


水槍(スイソウ)


周囲に四本の水の槍が生み出される。


槍は一直線にイーツへ飛んだ。


だが。


大喰(オオグライ)


イーツが大きく口を開く。


吸い込まれるように水槍は口の中へ消えていった。


「え?」


ウェンが目を丸くする。


次の瞬間。


「お返しだよ!」


イーツの口から先程の水槍が飛び出した。


しかも勢いはそのままだ。


「なっ!?」


ウェンは咄嗟に両手を広げる。


水玉(ミズタマ)


全身を包む水の球体が現れる。


飛来した水槍は水球にぶつかり、そのまま砕け散った。


「私の能力は何でも食べることさ」


イーツは不気味に笑う。


「飲み込んだ物は好きな時に吐き出せる。アンタの攻撃なんて全部私の武器になるんだよ」


そう言うと地面へ顔を向ける。


ズズズズズ……


砂や石が渦を巻きながら口の中へ吸い込まれていく。


砂土出吸(サドンデス)


吸い込んだ砂礫を一気に吐き出した。


散弾のような砂と石がウェンへ降り注ぐ。


水壁(スイヘキ)


ウェンは前方に巨大な水の壁を作り出す。


バチバチと音を立てながら砂礫が弾かれていく。


攻撃を防ぎ切ったウェンは眉をひそめた。


「こっちの攻撃は全部吸い込まれる……」


イーツを睨む。


「しかも吸い込んだ物をそのまま返してくるのか〜」


頭を掻きながら小さくため息を吐く。


「めんどくさい相手だな〜……」


ウェンは防御を維持しながら、どうすれば攻撃を通せるのか考え始めた。


-


「あっちも盛り上がってるみたいだし、俺達も始めるか」


オーラは首を鳴らしながら目の前のポインを見据える。


同時に、体からオレンジ色のモヤが溢れ出した。


「……アンタ」


ポインの口元が歪む。


「昔、私をいじめてた奴に顔が似てるねぇ……」


隠れた目の奥から狂気が滲み出る。


「とことん痛めつけてやるよ」


ポインは右手を地面へ向けた。


毒煙(ポイズンスモッグ)


足元から紫色の煙が溢れ出す。


煙は生き物のように広がり、周囲一帯を飲み込んでいった。


「毒使いか」


オーラは広がる煙を見つめる。


「吸い込んだらヤバそうだな」


そう呟くと、大きく息を吸い込んだ。


そして――。


煙の中へ突っ込む。


「バカめ」


ポインは笑う。


「この煙は口からだけじゃない。皮膚からも侵入するんだよ」


普通の人間なら数秒で身体の自由を失う。


だが。


オーラは止まらない。


煙を掻き分けながら一直線に突っ込んでくる。


「なっ!?」


ポインが思わず声を上げた。


「何で毒が効いてないんだい!?」


オーラの全身を包むオレンジ色のモヤ。


煙が触れるたびにモヤが僅かに揺らぎ、毒を弾いている。


「この毒なら数秒で身体が動かなくなるはずだろ!」


「知らねぇよ!」


オーラは叫ぶ。


「俺の能力の方が強かったってだけだろ!」


そのまま距離を詰める。


ポインは舌打ちした。


「煙が駄目ならこれでどうだい!」


足元へ手を向ける。


毒流犬(ポイズンドッグ)


紫色の液体が集まり、一匹の犬の形を作る。


犬は地面を蹴るように走り出した。


一直線にオーラへ飛び掛かる。


「邪魔だ!」


オーラは拳を振り抜く。


ドォン!!


拳が毒犬に直撃する。


犬は耐えられず液体へ戻り四散した。


しかし。


飛び散った毒液がオーラの腕や肩へ降りかかる。


ジュゥゥ……


毒液がオレンジ色のモヤに触れる。


白い煙が上がり、毒は消滅した。


だが同時にオレンジ色のモヤも僅かに薄くなる。


「なるほどねぇ……」


ポインの口元が吊り上がる。


「その能力、毒を防げる代わりに消耗するみたいじゃないか」


オーラは返事をしない。


苦しそうな顔で煙の外へ飛び出した。


「ぷはぁっ!!」


肺いっぱいに空気を吸い込む。


「流石に息が続かねぇな……」


額から汗が流れる。


「しかもあの液体の毒……」


オレンジ色のモヤを見下ろす。


先程よりも僅かに薄くなっている。


「あれを受け続けたら能力の方が先に削られそうだな」


オーラは冷や汗を拭う。


対するポインは煙の中心で不気味に笑っていた。


「どうしたんだい?」


紫色の煙がさらに濃くなる。


「もう息切れかい?」


ポインの余裕の表情に対してオーラは苦しそうに対処法を考えを巡らせる。


-


オーラとウェンの後方では、盗賊達とアブの分身達が激しい戦闘を繰り広げていた。


盗賊達とアブの分身の数はほぼ同数。本来であれば能力を持つ盗賊達の方が有利なはずだ。


だが、既に半数近い盗賊達が地面に倒れている。


もっとも、アブの分身達も同じくらい消滅しており、現在戦っている人数に大きな差はなかった。


「分身相手に何を手こずってやがる!」


盗賊達の中でも一際大柄な男が怒鳴りながら、大斧を振るってアブの分身を次々と消し飛ばしていく。


「アンタは私が直々に相手をしてあげるわ」


近くで盗賊と戦っていたアブは、目の前の盗賊の顔面に蹴りを叩き込んで倒すと、大柄な男へ視線を向けた。


「あん? お前は分身じゃねぇのか?」


男は大斧を振り上げ、アブへ叩きつける。


アブは軽やかなステップで横へ回避すると、そのまま男の腹へ鋭い蹴りを放った。


だが――。


「はん! そんなショボい蹴り効くかよ!」


男の腹は鉄のように硬く、蹴ったアブの足の方が痛みを受ける。


男はニヤリと笑うと、大斧を横薙ぎに振るった。


アブは避けきれず、体を真っ二つに切り裂かれる。


しかし。


切断されたアブの体は煙のように消え去った。


「チッ! こいつも分身か!」


男が舌打ちした、その瞬間だった。


「隙あり!」


背後から声が響く。


振り返る間もなく、本物のアブが跳び上がりながら男の首へ蹴りを叩き込んだ。


「がっ――!」


男の体が大きく揺れる。


腹部とは違い、首までは硬化できないらしい。


「不意を突けばアンタの能力なんて関係ないみたいね!」


よろめく男の前に着地したアブは、そのまま回転しながら顔面へ追撃の蹴りを放つ。


ドゴッ!


強烈な一撃をまともに受けた男は仰向けに倒れ込み、そのまま動かなくなった。


「これで一人!」


アブは額の汗を拭いながら周囲を見渡す。


盗賊達の数は着実に減っていた。


分身達も次々と消えているが、このままなら押し切れそうだ。


そして視線をオーラとウェンへ向ける。


二人とも未だに苦戦しているようだった。


「まだ終わってないのね」


アブは肩をすくめる。


「さっさと片付けて加勢してあげなきゃ!」


そう言うと、アブは残る盗賊達へ向かって再び駆け出した。

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