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unlimited  作者: 轟号剛


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12/22

忠告

チューズはいつも通りゴクウとフレイと共にゴミ処理場で仕事をしていた。


そして、たった今その日の作業が終わったところだった。


「よし、今日もよくやったな! 俺はムサシのところに向かう!」


ゴクウはそう言うと雲の上へ飛び乗り、そのままどこかへ飛び去っていく。


「相変わらず忙しい人ですね」


チューズが苦笑する。


「さて、チューズ。先週できなかった分も含めて稽古をつけてやる」


フレイはそう言いながらチューズの方へ向き直った。


「はい! お願いします!」


チューズが勢いよく返事をする。


次の瞬間、フレイの全身から炎が噴き出した。


それを見たチューズも同じように全身へ炎を纏う。


「行くぞ!」


フレイが地面を蹴る。


一瞬でチューズとの距離を詰めると、炎を纏った右拳を振り下ろした。


チューズは咄嗟に腕を弾いて軌道を逸らす。


さらに体を捻りながらフレイの胴体へ蹴りを放った。


だが――。


フレイの足元から炎が噴射される。


その反動でフレイは一気に後方へ飛び退き、蹴りを回避した。


「まだだ!」


フレイは両手に炎を纏わせる。


そして猛烈な速度で拳を繰り出した。


炎の連打。


しかしチューズは落ち着いていた。


拳を受け流し、捌き、最低限の動きだけで全てを凌いでいく。


数秒後。


フレイは攻撃を止めた。


「やっぱり体術は合格点まで来ているな」


フレイは腕を組む。


「なら、こっちの方はどうだ?」


フレイが右手を空へ掲げる。


火輪(かりん)


上空に巨大な火球が現れた。


火球はみるみる膨れ上がり、人の数倍はある大きさになる。


そして轟音と共にチューズへ落下した。


「ちょっ!? いきなり大技すぎませんか!?」


チューズは冷や汗を流しながら叫ぶ。


それでも逃げない。


右拳に炎を凝縮させる。


爆熱炎拳(バクネツエンケン)!」


炎を纏った拳を火球へ叩き込んだ。


ドォン!!


激しい衝撃が発生する。


しかし火球は止まらない。


チューズの拳ごと押し込みながら迫ってくる。


「ぐっ……!」


徐々に後ろへ押される。


このままでは押し潰される。


チューズは残った左手を火球へ押し当てた。


炎流避(エンリュウヒ)!」


すると火球が左右へ流れ始める。


まるで川の流れを変えるように。


巨大な炎はチューズの両脇を通過し、そのまま後方で爆散した。


ゴォォォォッ!!


熱風が吹き荒れる。


「はぁ……はぁ……」


チューズは肩で息をしていた。


「避けたな」


フレイは満足そうに頷く。


「まだ火力の方は低いようだな」


「フレイさんの火力が高すぎるんですよ……」


チューズはその場に座り込みながら文句を言う。


フレイは苦笑すると手を差し伸べた。


チューズはその手を掴み立ち上がる。


「お前は体術の方はかなり良い」


フレイは真面目な表情になる。


「だからこそ火力不足が目立つ」


「そうですね」


チューズも素直に頷いた。


「俺は炎を飛ばしたり広範囲を焼くのは苦手です。だから体術と組み合わせて補っています」


先ほどの巨大火球を思い出す。


「ああいう大技と真っ向に太刀打ちできる火力が俺の課題ですね」


フレイは満足そうに頷いた。


自分の弱点を理解していることも強さの一つだからだ。


その時だった。


突然、頭の中にパシーの声が響く。


『緊急連絡! 超能隊本部に謎の男が現れて宣戦布告後に消えました! ブレイクさんから詳細を話すので、超能隊の皆さんは今すぐ本部へ来てください!』


突然の連絡に二人の動きが止まる。


「はぁ……」


フレイは大きなため息を吐いた。


「何でこうも毎回アクシデントが起こるんだ……」


頭を掻きながら露骨に嫌そうな顔をする。


「ため息吐いてないで急いで本部に戻りますよ!」


チューズは呆れながらフレイを注意した。


「はいはい……」


フレイは面倒臭そうに返事をする。


そして――。


もう一度ため息を吐いた。


次の瞬間、足元から炎を噴射する。


そのまま空へ飛び上がり、本部へ向かって飛行していった。


「だからため息吐かないでくださいって!」


チューズも慌てて後を追いかける。


二人は急ぎ超能隊本部へ向かった。


5分前――。


超能隊本部はいつも通り賑わっていた。


テーブルでは数人がトランプに興じ、バーのカウンターでは酒を飲みながら談笑している者もいる。


平和な昼下がり。


誰もが普段通りの時間を過ごしていた。


トントントン。


突如、本部の入り口をノックする音が響く。


「またバルのやつが道場破りにでも来たか?」


カウンターで酒を飲んでいたビートが笑いながら扉へ目を向けた。


だが――。


扉を開けて入ってきた人物はバルではなかった。


白い服を身に纏った男。


メシアのリーダー、コピだった。


「こいつは前に任務を邪魔してきたコピっていう奴だ!」


テーブルでトランプをしていたオーラが勢いよく立ち上がる。


同時に全身からオレンジ色のモヤが溢れ出した。


一瞬で戦闘態勢に入る。


周囲の隊員達も一斉に警戒を強めた。


「ご紹介いただきありがとうございます」


コピは優雅に一礼する。


「私はメシアのリーダー、コピと申します。本日は皆さんに忠告をしに参りました」


「関係ねぇ!」


オーラが床を蹴る。


「今ここでぶっ飛ばす!」


一直線にコピへ突っ込んでいく。


「オーラ! 止まってください!」


鋭い声が飛んだ。


オーラがコピへ届く寸前で足を止める。


「何だよ、ナーブ!」


オーラは不満そうに振り返った。


声の主は同じテーブルについていた少年だった。


ナーブ・フープ。


低い身長に茶髪のおかっぱ頭。


丸眼鏡を掛けた少年である。


「ナーブさんですね」


コピはナーブへ視線を向ける。


「話の分かる方がいて助かります」


薄く笑みを浮かべた。


「それで忠告とは何だい?」


ナーブは落ち着いた口調で問いかける。


幼い見た目とは裏腹に、その態度は冷静そのものだった。


「それでは単刀直入に申し上げます」


コピは両手を広げる。


自然とその場の全員の視線が集まった。


「明日の正午。私の仲間達がこの街へ攻め込みます」


部屋の空気が一変する。


誰も言葉を発しない。


「東西南北、四つの門から同時に侵攻しますので、どうかしっかりご準備ください」


まるで明日の天気でも伝えるかのような軽い口調だった。


「なぜそんなことを知らせる?」


ナーブが即座に質問する。


「奇襲した方が有利だったはずだ」


「ふふ」


コピは小さく笑う。


「それでは意味がないのですよ」


それ以上は語らない。


「忠告は以上です」


再び深々と一礼する。


「それでは失礼します」


「黙って帰すわけねぇだろ!」


その瞬間。


ビートが飛び出した。


鋭く伸びた爪を振るう。


空気を裂くほどの速度だった。


だが――。


パチン。


コピが指を鳴らす。


次の瞬間には姿が消えていた。


ビートの爪は虚しく空を切る。


「チッ!」


ビートが舌打ちする。


既にコピの気配はどこにも無かった。


「パシーさん!」


ナーブがすぐに声を上げる。


「超能隊の全員を本部へ招集してください!」


「分かった!」


パシーは即座に額へ人差し指を当てた。


そして能力を発動する。


『緊急連絡! 超能隊本部に謎の男が現れて宣戦布告後に消えました! ブレイクさんから詳細を話すので超能隊の皆さんは今すぐ本部へ来てください!』


パシーの声が超能隊全員の頭の中へ響き渡る。


本部の中には緊張感が広がっていた。


明日。


超国に大規模な襲撃が行われる。


誰もがそれを理解していた。


---10分後


本部には多くの超能隊隊員が集まっており、皆の視線は壇上に立つナーブへと向けられていた。


「先ほど、以前から話題に上がっていた『メシア』と名乗る集団のリーダー、コピという人物が本部に現れました」


ナーブは落ち着いた口調で話し始める。


「コピの話によれば、明日の正午に仲間達を率いてこの街へ攻め込むとのことです。四方の門から同時に侵攻すると宣言していました」


隊員達の間にざわめきが広がる。


「内容の真偽は不明です。しかし、何も対策をしないわけにはいきません」


ナーブは一度全員を見回した。


「そのため、各チームをそれぞれ配置します。ブレイクさん、配置を決めてもよろしいでしょうか?」


二階の手すりにもたれながら話を聞いていたブレイクは黙って頷く。


「ありがとうございます」


ナーブは手元の資料に目を落とした。


「では発表します。


北門をカインズ。


南門をブルーム。


西門をファビュラス。


東門をサイユウ。


そして街中の警備をネイチャーとファイターに担当してもらいます」


隊員達は真剣な表情で話を聞いている。


「異論がある方はいませんか?」


誰も手を挙げない。


「では各自、担当区域へ移動準備をお願いします。明日の正午とは言われましたが、本当にその時間に攻めてくる保証はありません。早めの警戒態勢を取ってください」


ナーブが説明を終えると、自然と視線がブレイクへ集まった。


ブレイクはゆっくりと前へ出る。


「全員よく聞くのだ!」


低く響く声が本部全体に広がった。


「今回の敵は何を考えておるのか分からん。戦力も未知数じゃ。しかし、お主達ならば問題なかろう」


ブレイクは力強く拳を握る。


「お主達は超国最強の自警団じゃ! メシアごときに好き勝手させるでない!」


その言葉に隊員達の士気が一気に高まる。


「「「「おおおおおっ!!!」」」」


本部を揺らすほどの歓声が響き渡った。

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