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第二十話 ――旅立ちの後に ――
――氷雨霧丸が死んだ。
その報せは、数日後に江戸へ届いた。
切原善蔵は、文を読み終えると、静かに目を閉じた。
誰と戦ったのか。
分かっていた。
だが、口にはしない。
それは、あの男の選んだ結末だ。
他人が語るべきものではない。
切原は文を火にくべた。
紙が黒くなり、灰となる。
それが風に乗り、夜へと消えていく。
「……氷雨霧丸……そして、野橋雪ノ丈」
小さく呟く。
「一度くらい、刃を交えたかったが」
空を見上げる。
答えは、もうない。
「……達者でな」
誰に向けた言葉かは、自分でも分からなかった。
夜は静かだった。
ただ、どこか遠くで――
滝の音が、まだ続いているような気がした。




