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最終話 ――二人の選択――

 数日後。


 二人は街道沿いの小さな茶屋で休んでいた。


 湯気の立つ茶を飲みながら、外のざわめきを聞く。


 浪士たちの声が耳に入る。


「なあ、聞いたか? 氷雨霧丸が死んだらしい」


「へえ……下手人は?」


「分かってねえそうだ」


「……氷雨を斬った奴、会ってみたいもんだな」


「俺はごめんだ。そんな奴、きっと化け物だぜ」


 笑い声が遠ざかる。


 雪ノ丈は、静かに息を吐いた。


「化け物、か……」


 小さく呟く。


 夏絵は、そっと袖を握った。


「気にしないでください、兄さま」


 柔らかな声。


「兄さまのことは、私が知っています」


 雪ノ丈は、わずかに笑った。


「……それで十分だな」


 外は夕暮れだった。


 西の空が赤く染まり、山の影が長く伸びている。


 雪ノ丈は立ち上がる。


 夏絵の手を取る。


「さて……お嬢さん」


 少しだけ、軽い口調で言う。


「次は、どこへ行きましょうか」


 夏絵は、少しだけ顔を伏せて――


 やがて微笑んだ。


「あなたとなら……どこまでも」


 風が吹く。


 暖簾が揺れる。


 二人は、歩き出した。


 夕陽の中へ。


 その背に、迷いはなかった。


 ――


 遠くで、滝の音がした。


 それはもう、届かないほど小さく。


 それでも確かに、流れ続けていた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。この作品は僕の初めての作品なので、完結までこれたのは嬉しいです。他の作品も書いているので、よければ読んでみてください

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