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第十七話 ――最終の一太刀 ――

 滝の音が、夜を裂いていた。


 白い霧が漂い、月光が水の粒を銀に変える。


 野橋雪ノ丈と氷雨霧丸は、向かい合っていた。


 互いに、動かない。


 ただ、衣の裾だけが風に揺れている。


 鼓動が、やけに大きく聞こえた。


(……これで終わる)


 雪ノ丈は、静かに息を整える。


 氷雨が、ふと呟いた。


「……やはり、美しいね」


 その声に、恐れはない。


 ただ、静かな歓びだけがあった。


 雪ノ丈は応えない。


 わずかに、切っ先を上げる。


 氷雨も同じように構えた。


 風が止む。


 音が消える。


 滝の流れさえ、息を潜めたようだった。


 ――次の瞬間。


 どちらが先に動いたのか、分からなかった。


 光が、閃いた。


 音はない。


 ただ、世界が一瞬だけ切り裂かれた。


 風が戻る。


 滝の音が、再び流れ出す。


 氷雨の身体が、わずかに前へ出た。


 雪ノ丈は、その場に立っていた。


 静寂。


 氷雨が、ゆっくりと口を開く。


「……ああ……ようやく……」


 息が揺れる。


「見えたよ……未来が……」


 その膝が、崩れた。


 白い霧が、その身を包む。


 血は見えない。


 ただ、月光と水だけがそこにあった。


 雪ノ丈は、動けなかった。


 滝の音の奥に、声が残る。


 ――「君なら、未来を斬れると思っていたよ」


 風が吹く。


 霧が流れる。


 勝負は、終わっていた。

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