四十七 獣化研究所
リルが作った桃のシャーベットは格別だった。リリネ君も甘い香りに目を覚ましたして王子を怖がるかと思ったけど。
『特殊能力って凄くかっこいい。僕にもあんなカッコいい特殊能力が欲しい!』
王子を怖がるところか、彼の瞳はキラキラと輝いていた。
『そうか? お前は俺を怖がると思ったがカッコいいか……。リリネ、俺の様にならないよう誕生日前にしっかり姉と研究所で検査を受けろよ』
『はい、リチャード王子殿下!』
と、シャーベット食べながら色々話して。双子の姉に伝えるために彼は家に帰っていった。
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私と王子は馬車に乗り移動中。
馬車の中で本を読んでいた王子は、本を置き。
「そうだ、ミタリアに伝えることがあった。いま向かっている研究所に視察も兼ねて向かうことになった……特殊能力検査前に研究所の所長と獣化族について話をする」
と、ふかふかオフトゥンに転がる。
獣化していない私の言った。
「わ、わかりました。グルグル、グルグル……(うっ、喉が鳴った)」
「ミタリア、気持ちよさそうだな」
王子は本を閉じると、こちらに飛んできた。
「ぎゃっ、重い。リチャード様の方が体格も身長もあるのに乗らないください」
「なんだよ、逆ならいいのか?」
「ふぇっ? ま、ま、待って、ワンピースのスカートが捲れちゃう、リチャード様のえっち!」
――今日は学園の三連休の初日。
私たちはオフトゥン付きの馬車に揺られて王都より離れた場所にある、特殊能力検査を受けに獣化研究所に向かっていた。
馬車が止まり研究所の前に降り立つ。
(着いた……うわぁ、ドキドキする。あの時のように、大勢の研究者の前で丸裸にされるのかな?)
研究所を見上げて、私と王子の足は重くなった。
「足が重いな……」
「……はい」
「だが、ここにいても仕方がない。ミタリア……行くか」
「は、はい、リチャード様」
お互いの手をガッチリ握った。
従者は馬車に残り、側近リルと近衛騎士の二人は研究所の外に待機した。
研究所に二人並んで入ると、お髭が立派でダンディで、白衣を着た虎の紳士が立っていた。その紳士は私たちに気付くと胸に手を当てて深く頭を下げた。
私と王子はそれぞれ挨拶を紳士に返した。
「お久しぶりです、デンス所長」
「リチャード王子殿下、お久しぶりです。大きく立派になられましたね。初めまして婚約者のミタリア様お待ちしておりました」
「はっ、初めましてよろしくお願いしますぅ」
緊張して、か、かみかみだ……そんな私に紳士は微笑み。
「ミタリア様、そんなに緊張されなくても大丈夫ですよ。特殊能力検査はすぐ終わります」
すぐ終わる?
前の時は半日も猫の姿だったのに?
「ここで立ち話もなんですから、リチャード王子殿下、ミタリア様、応接間に行きましょう」
紳士の案内で応接間に入ると、テーブルに桃のコンポートと桃の果実水が用意されていた。
「ミタリアはそれを食べていて、少し所長と話をするね」
王子は隣に座る私にそう伝えると、所長と話を始めた。大事な話の様だけど私も聞いてもいい話なの? 初めは躊躇したけど、話の内容は私にも関する内容だった。
所長は少しお待ちをと用意してあった資料をテーブルに広げた。
「リチャード様、昨年より獣化する者の数は減ってはおりませんが……特殊能力が現れる前に連れ拐われる、ケースが何件か出ております」
「その話は父上から聞いている。特に誘拐されているのは小型ーー主に猫族と犬族が多いらしいな。稀なケースだと子虎、子ライオンなど子供が拐われているとも聞いた、あと隣国、竜属種ーー子竜も狙われているそうだ」
「竜人ですか……彼らは二十歳になるまでは少年期の姿のままでしたよね」
「よくご存知で、そうです外見は可愛い少年に見えますが、中身は大人です」
(猫族、犬族⁉︎ 虎とライオン! そして竜……竜、りゅ……!)
「あっ!」
声を上げてしまい、二人の視線を集めてしまった。
「す、すみません。リチャード様、デンス所長さん話を中断してすみません。なんでもありませんので続けてください」
忘れていた、竜人と言えば。
このゲームの隠しキャラがいた。たしか竜人国、第三王子シック・トルナード、見た目は青いの短髪とサファイアの瞳。一年の終わりか二年に転校してくるはずだ。
(当時。ツイツイで隠しチャラ"キタァーッ"て賑わっていた。確か自分をわしと呼ぶキャラだったはず……私は、攻略雑誌でシルエットしか見たことがないから、存在すらすっかり忘れていた!)
私の驚きに何か感づいたのか、隣の王子の視線が痛い。彼は小さく息を吐き。
「……後で聞くかな」
そんなことを言って、王子は話を再開させた。
「リチャード王子殿下、裏で大きな組織が動いているのでしょうか?」
「父上もそう考えて特殊部隊を各地に放っている。しかし、奴らの手口が巧妙なのか……情報を掴めずにいるとも言っていた。あ、かすかに魔法を使った痕跡が、あったとも言っていたかな?」
「魔法ですか? それは厄介ですね」
「あぁ、厄介だ。うちの軍は匂いによる追跡は何処の国にも負けないが……」
「魔法で跡形もなく消えてしまうと、追えなくなりますね。完璧に後を終える『追跡魔法』を持つ者はいませんからね」
「そうだ……だから、いま魔導具での実験の途中だな」
「はい。この実験が実れば連れ去り事件が解決しますね」
「だから――デンス所長。父上が『研究所には期待している』と言っていたよ」
「はははっ、その言葉は重いですね。しかし、大切な仲間を守る為です。――私たちの能力を持って解決できるよう協力いたします」
「ありがとう、助かるよデンス所長」
「いいえ、私たちに出来ることはこれくらいですからね」
「大いに期待しているよ。よし、これで父上からの話と俺の話も終わりだ。俺とミタリアの特殊能力検査をしてもらおう」
ついにきた特殊能力検査。
「移動するのもなんですから、ここでチャチャっと行いますね」
「ここで、いいのか?」
「はい、すぐに終わります。お茶でも飲んで待っていてください」
所長は準備しますねと、応接間を出ていった。
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しばらくして所長と助手らしき人が水晶玉を持って現れた。テーブルに水晶玉が台に乗り置かれた。
「検査は簡単、これに両手で触るだけです」
「触るだけか……わかった。俺から触るな」
王子が水晶玉に両手を乗せた。水晶玉が光り赤く光り読めない文字が現れた。助手はその文字を読みメモを取っている。
「リチャード王子殿下は立派な特殊能力ですね。さすが王族。国王陛下と同じく特殊能力が一つではありませんな」
自分の特殊能力は人に漏らしてはならない。
悪用されたり、連れ去りの原因になるためだ。
となると、王子は火属性と他にも能力があるんだ。
「リチャード王子殿下の検査は終わりました。次、ミタリア様、水晶玉に両手を乗せてください」
「はい」
私は闇属性だけかな? しかし、両手を乗せたあと、所長と助手の二人が目を見開いた。
(まさか、闇属性はそんなに珍しいの?)
「これは特殊の中の特殊。何十年と特殊能力を見て来ましたが……この様な特殊能力は初めてだ!」
デンス所長は声を上げた。




