四十六
肉球で王子の頬をモニモニとイタズラに揉んだ。
やめろと、初めは王子も嫌がったけど瞳がトロンとして目を瞑った。
――黙っちゃったけど、肉球が気持ちいいのかな?
私達はそれから三十分くらい部屋に篭った。
「リチャード様、落ち着きました?」
隣でゆったり寝そべる王子に聞いた。
「ミタリアのおかげで、だいぶ気持ちが落ち着いたよ」
「でしたら隣の部屋に戻りましょう。きっと皆さんがリチャード様を心配していますよ」
「わかってる……が、もう少しだけ俺はミタリアに甘えたい」
正直に嬉しいことを言う王子を、小さな体で抱きしめた。
「ふうっ、落ち着いた……癒してくれてありがとう、ミタリア」
頬にキスをして、服と一緒に落ちていたブレスレットを取り腕に付けようとした。
――まさか、私の目の前で着替えるきなの。
私は手を前に出して、王子の着替えを止めようとした。
「待って!」
「どうした、俺はミタリアに見られても平気だぞ?」
「わ、私が平気じゃありません。着替えるのでしたら言ってください、向こう側を向くので」
「はははっ、ワザとだよ。俺が部屋から出たらミタリアも着替えて出ておいで」
「……はい」
王子は制服に着替えが終わると"先に戻ってる"一声かけて部屋を出て行った。私も自分のブレスレットをはめて獣化した姿から戻り、学園の制服に着替えた。
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「入ります」
と、隣の部屋に戻って驚いた。
部屋の中は王子の炎で焼け焦げた跡が一つもなく、訪れたときと同じだった。ソファーに座り王子はリルと近衛騎士の二人に、何があったのかを聞いていた。
「着替え終わったんだね。ミタリア、俺の横に座って」
「はい、リチャード様」
呼ばれて、私は王子の隣に座った。
私はどこも焼け焦げていない部屋の中を、見渡しているのがわかったらしく王子が説明してくれた。
「部屋の中がどこも焦げていないのが不思議だよな。俺たちが隣の部屋に行ったあと、父上の魔法部隊が来て"修復魔法"を部屋にかけて直してくれたらしいんだ。みんなに『レジスト』をかけてくれた他の隊が伝えたのだろうな……城に戻ったら父上にお礼を言うよ」
"注意は受けるだろうけど"と、王子は笑った。
「リチャード様と一緒に王城に行ってもいい?」
原因となった手紙は焼けてしまったから、王子がどうして、炎を纏ってしまったのか国王陛下に説明しようと思った。
王子は首を振り。
「今日はもう遅い。父上には俺からちゃんと説明するから、ミタリアは心配しなくていいよ」
「……そうですか、わかりました」
まだ心配で王子に着いて行きたかったけど、やんわり断られてしまった。
「そうだ、皆さんは怪我をされませんでしたか?」
側近リルは平気だと頷き。騎士たちは胸に手を当て頭を下げた。リリネ君は炎を見て気絶してしまったらしく、すみの床に寝かされていた。
「リチャード様、みなさんに怪我がなくて良かったね」
「あぁ、良かった。俺がふがないせいで危険な目にあわせた……すまない」
リルは頭を下げた王子を止めた。
「心配はいりませんよ、リチャード様。誰しも愛している人の事を言われれば、あぁ、なります。……特殊能力はいきなりくるもんです」
とリル。
「そうです、リチャード様。たまたま、手紙がキッカケとなり、能力を呼び起こしてしまっただけです」
「自分も、リルさんとシア先輩の意見に賛成です。自分はまだ誕生日を迎えていませんので、どの様な"特殊能力"が自分に身に付くのか分かりません。もしかすると、今日のように不意にくるかもしれません……」
と近衛騎士、先輩とアラン。
もしかしてリルと近衛騎士の先輩――二人は特殊能力にお詳しい。二人は私達よりも年上で特殊能力を既にお持ちなのかも。……よかった、王子の側に頼もしい方がいて安心した。
いま、床で気絶中のリリネ君は、王子に怯えるかもしれないけど。
「リチャード様、ミタリア様、時間が経ちましたが、お茶の時間にいたしましょう。先程、隣で桃シャーベットを作ったんです。近衛騎士二人の分もありますよ」
リルはエプロンをひるがえして、隣の部屋に消えていった。




