四十五 特殊能力
「「リ、リチャード様!」」
私の叫び声に『どうされました!』と隣の給湯室と入り口が開き、エプロン姿の側近リルと近衛騎士アラン様ともう一人、王子の近衛騎士が部屋に入ってきた。
彼らは燃え上がる王子を止めようとした。
「リチャード様、落ち着いてください」
「リチャード、やめろ!」
「リチャード王子殿下、荒ぶる、気持ちを抑えてください!」
「うるさい、うるさい、落ち着いてなどおれるか!」
王子の声と共に炎は勢いを増した。
みんなは炎の熱さに吹き飛ばされて、王子に近付けないでいた。
「……リチャード様」
「ミタリア様とリリネ君はリチャード様から離れて、炎が当たらない部屋の隅に避難してください」
側近リルに部屋の隅に行くように指示さてれた。
(目の前で燃え上がる炎ーー獣化する私たちは十六歳ぐらいで特殊能力が芽生える。王子の特殊能力は火なんだ、彼の怒りの感情に魔力が暴走してる)
止めなくては。
「リチャード様、落ち着いて」
私は怒り狂う王子を腕の中に抱きしめた。
「「ミタリア様」」
(あれ? 炎が熱くない。これならば王子を止められる!)
「私は平気です……お願いがあります。みんなはしばらく耳を塞いで目を瞑っていてください!」
と、みんなにお願いした。彼らは「かしこまりました」と、もふもふの耳を両手で押さえて目を瞑ってくれた。
(恥ずかしいけど……)
「リチャード様、好きだよ。あなたが一番大好き!」
チュッと怒りに燃える王子の唇を奪った。いきなりのキスに驚いた王子に、もう一度キスして離れようとしたのだけどガシッと後頭部を掴まれた。
「んっ、んん!」
王子にチュ、チュと何度も唇を奪われる。
「……っ」
「はぁっ、はぁっ、ミタリア、ミタリア好きだ。俺は君を愛してやまない……すまない、まだ、怒り狂う気持ちが収まらない……収めるのに君のが必要だ!」
「へっ?」
いまだ火を纏う王子に肩に担ぎ上げられた。
「ちょ、ちょっ、リチャードさま?」
王子は給湯室とは逆の扉を開けて入ると、私のブレスレットを外してポイッと投げた。猫になった私はくるっと一回転して綺麗に着地する。
――もふん、この感触とふんわり感は高級オフトゥン⁉︎
「ミタリア!」
「う、ぎゃっ!」
ブレスレットを外した狼王子にほっぺをベロン、ベロン舐められた。
(うひゃ、激しい!)
ベロン、ベロンと舐めて……気持ちが落ち着いてきたのか王子の火はしだいに消えていった。でも、まだ足りないらしく、鼻でほっぺをグリグリ、グリグリ力一杯に押された。王子よりも小さい私は少し痛い。
耐えろ私……でも。
「リチャード様、少しだけ落ち着いてください!」
「ごめん、ミタリア……気持ちが膨れ上がって押さえきれなかった。くそっ、ミタリアとみんなを危険な目に合わせてしまった……一歩間違えれば…………おれは、うわぁっーー!!」
今度は王子がガタガタ震えて、絞り出すように声を出した。
「ほんとうに、よかった……っ、父上の部隊が直ぐに『レジスト(特殊な攻撃に耐える)』をみんなにかけてくれた。俺は自分に特殊能力が現れたとき……この様にならぬよう日々訓練してきたのに、怒りに我を忘れるなんて……ぐっ」
歯を食いしばり、肩を落として落ち込む王子。彼の頬を両手でモミモミして、頬を擦り寄せてスリスリした。
「……ミタリア、ごめん。みんなも俺のことを怖がるだろうな」
「悪い方に考えてはダメです。その事は自分で考えるよりもみんなにちゃんと聞かなくてはなりません。私はリチャード様を怖がっていないし、怒ってもいません。あんなに怒るほどの愛を貰ったから私は許します!」
「ミタリアは俺を許すか……はははっ」
ポロ……ポロ、ポロッと彼の瞳から涙が落ちた。
肉球で涙を拭いたけど、王子の涙は止まらない。
しばらく王子は『……ミタリアに怪我がなくてよかった』と嗚咽を漏らして、私の小さな胸の中で体を震わせ泣いた。
+
泣いて、落ち着いてきた王子と並んでベッドに寝そべっていた。
「ねぇ、リチャード様」
「ん、なんだ?」
「リチャード様の特殊能力が判明しましたね」
「えっ? あ、あぁ、そうだな俺は火属性か。はぁ……特殊能力がわかっても規則だから、四月生まれの俺は獣化研究所に行き調べないと……な」
渋い顔の王子……わかるよ、研究所には嫌な思い出しかない。
「だったら、一緒に行きますか?」
「えっ、ミタリアが一緒に行ってくれるのか?」
「はい。私は五月の生まれなので研究所から『特殊能力検査』の通知が来ていたと思います」
「よし、学園の休みの日に一緒に行こう」
「はい」
ヒロインの手紙にあった通り、私の特殊能力は闇属性なのかな?




