四十三 ヒロインからの手紙
兎君ことリリネ君に話があると、学園内にある王子の休憩室に移動した。当然、人族であるカーエン王子とは庭園で別れた。庭園をさる間際『僕だけのけ者かよ』と、カーエン王子が囁いた声が聞こえたけど、聞かないふりをした。
それは、リリネ君がずっとカーエン王子を警戒していだからだ。
王子の近衛騎士となったアラン君は『自分は扉の前でリチャード王子殿下を警備します』といい、休憩室の扉の前で警備を始めた――彼は真面目な近衛騎士だ。
「では、お茶の準備をしてきますね」
側近リルは休憩室の隣り部屋でお茶の準備を始めた。ここは王子の休憩室というより王城で見た執務室と言った方がいいだろう。来客用のソファーも真ん中に置いてあった。
「急な客とか書類とかをここで確認するんだ。後は他の生徒に邪魔をされず、ミタリアと過ごすこともできるよ。さぁ、座って」
「はい」
二人掛けのソファーに王子、私、反対側にリリネ君が座った。
「それで、リリネ。俺たちに話ってなんだい?」
「はい、僕が寝ている間に獣化したのは……誰かに指輪を取られたかもしれないんです。でも僕はグッスリ寝ていてしまっていて、わからないんですけど……リ、リチャード王子殿下、ミタリア様、お気を付けてください」
リリア君の衝撃な告白に驚いた。この獣人だらけの学園で獣化する魔導具を外す者などいない……。あ、いた、私の腕輪を気にするカーエン王子。
今日、リリネ君の指輪を見つけたのは彼だ。かなり怪しいけど……疑えない。だって誰もカーエン王子がリリネ君から指輪を取った所を見ていない。
「うむ。偶然に外れたのではなく、故意にリリネの指輪を取ったものがいるのか……リリネ、指輪をはめたまま指を見せて」
「は、はい」
リチャード様はリリネ君の指にはまった指輪を見て、考えて、うんと頷いた。
「リリネの言う通り故意に外された――そう言ってもいいかもな。その形見の指輪は君の指のサイズにぴったりだ。偶然には外れまい」
「やっぱり、僕の指輪は誰かにはずされてのですね……どうりで、姉が学園に来るのを怖がるはずだ」
(ヒロインが学園を怖がった?)
それはわかるかも……私の側には王子がいるから安心だけど。獣化する者は獣人の中でごく僅かだ。捕まれば知らない所に連れて行かれて、オークションにかけられて、高額な額で取引される。
――この学園に獣化する獣人を狙う人がいる。
狙われるとしたら主に兎、猫、子犬などが人気があると、お父様から聞いたことがある。だから王子の側以外で腕輪を絶対に外すなと言われている。
もし、王子が側にいない時に腕輪を外されてしまったら? 私は爪で引っ掻くか、噛むか、後は声を上げて騒ぐことしかできない。
ブルッと、スカートの上に置いた手が震えた。
その手に王子の大きな手が重なる。
「ミタリア、安心しろ。この学園には俺もリル、アランもいる。そして内緒だが父上の部隊が何人か紛れ込んでいる」
「リチャード様……(それ、内緒じゃなくなる)」
「だから、ミタリア安心して欲しい」
私は頷いた。
「それで話とはなんだ」
「本当なら、ここに姉が来るはずでした。しかし前日になって、やっぱり『怖い』と言って、僕に手紙を託しました」
「手紙?」
「はい、姉はこの学園にミタリア様という令嬢がいると。その令嬢にこの手紙を渡してと頼まれてんです」
(ヒロインからの私に手紙?)
「姉は母さんの再婚相手と会ったときに頭を抑えて倒れて、次に目覚めたとき『嘘よね? 私って、この世界のヒロイン⁉︎ 』と叫び目を覚ましました。以後、何故か僕と姉が獣化することを知っていて。姉は獣化する事を怖がりました」
(ヒロインが獣化するのを怖がる? 乙女ゲームの攻略対象の中にヒロインを溺愛する人はいたけど。彼女を傷付ける人なんていないはずじゃぁ?)
私の知っている、ゲームと話が変わった。
チョココの後から、かな?
「それで、その姉からの手紙とはどれだ? 俺は読んではダメなのか?」
「まずはミタリア様が一人で読んでから決めて、と姉は言っていましたので、ミタリア様が読んだ後にお決めください」
リリネ君は胸元から姉、ヒロインの手紙を取り出した。




