四十ニ 兎ちゃんの名前はリリネ
彼は笑顔を崩さず糸目のままだった。
「リチャード王子は婚約者の黒猫ちゃんと仲が良くて羨ましいな。私にはまだ婚約者がいないのに……可愛い、婚約者がいて羨ましい」
糸目を開き、弓形な瞳で彼はじっと私を見た。
「失礼ですがカーエン王子。婚約者は獣人の国で探すよりも、自国で見つけた方がいいと思います。俺たちとでは生活習慣がかなり違いますよ」
「そうだけど……私は黒猫ちゃんのような、可愛い子が婚約者に欲しいな(獣化するし)」
「「……⁉︎」」
獣化する、と"私たちに聞こえない"小声でカーエン王子は言ったのだろうけど。彼の従者以外、耳のいい私たちに聞こえていた。
カーエン王子は獣化する特別な獣人を婚約者に迎えたいみたいだ。だったら兎君を気にいるとか? と、兎君を見た。戻った彼は薄ピンク色の髪と赤い瞳でヒロインと顔が似ていた。
(よく似ているわ、体型と顔がヒロインと瓜二つだもの)
彼は私がじっくり見ていたことに気付き頭を下げた。
「皆様、大切な母の形見――指輪を見つけていただき感謝いたします。僕の名前はリリネといいます」
リリネ? 彼は家名を言わず"リリネ"と名前しか言わなかった。あれっ、ヒロインは男爵家になっていないの。
「リリネ、その指輪を二度と外すなよ」
「は、はい、わかりました。……あの、リチャード王子殿下とミタリア様に折り入って話があるのですが、まだお時間はいいでしょうか?」
「時間はあるが、何の話だ?」
「リチャード様、すみません。ここで話せる内容ではありませんので……できれば、場所を移動してもよろしいでしょうか?」
彼はカーエン王子を見て言った。となると、カーエン王子に聞かれてはならない話を彼はするつもり。
王子は頷き。
「学園内にある俺の休憩室に移動しよう。カーエン王子、指輪を見つけてくれてありがとう失礼する。ミタリア、リリネ、リル移動するぞ……アランお前も着いて来い」
「アラン様?」
「あ、そうか。ミタリアには紹介がまだ、だったな。今日から俺の専属、近衛騎士となった伯爵家アラン・イエガーだ。入学式の後にミタリアにも紹介しょうと思っていたが。この様なことがあり紹介が遅れた」
王子に呼ばれてやってきたアラン様。
(ゲームと同じ赤い髪と琥珀色の瞳。狼犬の彼も攻略対象だ。彼はヒロインに恋をして最後に王子に決闘を申し込む、とても真面目な性格だった)
ちなみに決闘の勝ち負けはヒロインとの好感度で決まった。王子の次にファンが多かった攻略対象だ。その次は側近ルトで、まだ出て来ていない一つ下、ネズミ族の後輩でその次がカーエン王子だった。
「ミタリア様、本日付でリチャード王子殿下の、近衛騎士となりましたアランです。これからよろしくお願いいたします」
「私はリチャード様の婚約者ミタリアですわ。アラン様、よろしくお願いします」
アランは騎士の挨拶をして、私はスカートを掴んでお辞儀した。その後、カーエン王子とは庭園で別れて、私たちは王子の休憩室に移動したのだった。




