三十三 国王陛下とお茶会
昼下がりに国王陛下とのお茶会が始まった。開口一番、陛下は王子を見てこう言った。
「リチャード、何か嬉しいことがあったようだな」
席に着いて、ハッとした王子。
「まさか、あの事が……父上にまで知れ渡っているのですか?」
「先程、私の執事が嬉しそうに語っていたぞ、ミタリア嬢を収穫祭に誘って、よい答えをもらったと聞いた……リチャード、良かったな」
「……はい」
困っような、照れているような顔を浮かべた。今日の王子は初めて見る表情ばかり、それが嬉しくて自分の顔が緩んでいる。
もちろんテーブルに用意されてた、果物をたっぷりデザートを食べているからでもある。
「ミタリア、これ美味いぞ。食べてみて」
王子に勧められたのは、油で揚げずにオリーブオイルを薄くひいたフライパンで焼いたポテト。それを一つ取り食べてみた。
「ンンッ!」
これは外は焼かれてカリッ焼かれていて、中はほくほく、ほんのり薄塩味だった。ジャガイモ本来の味を楽しめる、ジャガイモ好きには堪らないカリカリ焼きだった。
「美味しいです、外はカリッとして、中はほくほくしてる」
「なっ、美味いだろ!」
「そのジャガイモも料理は……集めたジャガイモレシピの中でリチャードの一押しだったな」
「そうです父上、これを初めて食べ時に病みつきになりました。父上も召し上がってください」
王子は陛下と喋るときなんていうか、お父さん大好きな男の子になってる。一緒に過ごせて嬉しいと尻尾も言っている。陛下も見ると、同じく揺れていた。
「リチャード様、他のオススメはないのですか?」
「他か? あるぞ、この桃のコンポートも絶品だ、ミタリア食べてみて」
「コンポートですか? ありがとうございます」
王子が食べてみてと渡したのは、冷やされたガラスの器に、半分に切った桃とシロップが入っていた。
見た目が、昔好きだった桃の缶詰みたい。
桃をフォークで食べやすく切り口に入れた。ほんのり甘くて桃が口の中に溶けていく、シロップも桃の味が溶け込んでいて美味しい。
「甘くて美味しいわ」
「それな、砂糖をいっさい使っていないんだ。その甘さは桃の甘さなんだ」
「こんなに甘いのに砂糖を使っていないのですか? こんなに美味しい桃の食べ物があるなんて知らなかった……リチャード様、もう一つ食べてもいいですか?」
「あぁ、好きなだけ食べていいよ。なんならもっと持ってくる?」
「嬉しいですけど……そんなに食べれません」
「そうか? ミタリアなら食べれそうだがな」
笑って、王子はご自分の桃のコンポートを私にくれた。
「ミタリア嬢はなんでも、美味しそうに食べるね」
陛下は微笑んでご自分のコンポートを一口分取っている、それを見た王子は陛下の前に手を出した。
「失礼ですが父上それはダメです。ミタリアは俺の婚約者です。それをしていいのは俺だけ!」
「婚約者なのは知ってるよ、少しくらいはいいだろう? 可愛い、ミタリア嬢に桃のコンポートを食べさせたい」
「父上、やめてください」
私の前で始まった、じゃれあいの様な言い合いしているわ、お二人とも仲がいいわ。
んんっ、桃のコンポート美味しい今度ウチでも作ってみようっと。
+
時刻は夕方前となり。
「楽しいひとときを過ごした。ミタリア嬢、舞踏会では大変世話になったな。それで君の願い事を一つ叶えたいなんでも言ってくれ」
「私の願いですか? ……そうだわ、持ち手が青色のブラッシングのブラシが欲しいのですか、どこで売っていますか?」
「持ち手が青色? ああ、私の知人が作るブラッシングのブラシだな待っていなさい。サワ、近くにいるか?」
陛下が呼ぶと、犬族の執事の方が側に現れた。
「はい、こちらに」
「私の部屋から、新品の青い持ち手のついたブラッシングをする、ブラシを一つ持ってきてくれ」
「かしこまりました」
私たちに礼をして執事はブラシを取りに向かった。陛下は私を見て首を傾げた。
「ミタリア嬢にどうして、あのブラシが欲しいか聞いてもいいかな?」
「はい、王妃殿下様との手紙のやり取りの中で、あのブラシがとても良いとお聞きいたしました」
「王妃と手紙のやりとりでか……それで、王妃はそのブラシの事について何か言っていたかな」
手紙の内容は王子の事と殿下の話だ。王妃様との手紙の内容は陛下の威厳にヒビが入りそうで言えないでいると、陛下は気付いたらしく。
「まさか、私のそのままの姿が手紙にかいてあったのかな?」
「はい、そのままです」
「そうか、私があのブラシで気持ちよくしていると、王妃の手紙に書いてあったのだな……」
王子は私たちの談話に入れず、陛下を見たり、私を見たりして、話に入ろうとしていた。
「ミタリア、その青いブラシに何かあるのか?」
「えっと、王妃殿下に凄くいいブラシだと、手紙で聞いて欲しくなったの」
「いいブラシ?」
王子にブラシについて説明をしていた、そこに一礼をして執事がブラシを持って現れた。
「陛下、リチャード王子、ミタリア様ご歓談中に失礼いたします。陛下、頼まれましたブラシをお待ち致しました」
執事がテーブルに新品のブラシをテーブル置き、下がっていった。王子はブラシを手に取る。
「このブラシ、ミタリアが使うにしてはデカくないか? 俺と父上ようだと思うが」
王子に説明の続きを話した。王妃殿下との手紙のやり取りの中に、このブラシで陛下をブラッシングすると気持ち良さげで、目を瞑ってうっとりしていると聞き、王子の為に欲しいと思ったのが本音。
「リチャード様は気になります?」
「気になる!」
「恥ずかしいですが……では、申します。そのブラシでブラッシングするとその……気持ちいいらしいと、王妃殿下に聞いて、リチャード様をブラッシングしたくなったんです」
「お、俺の為!」
+
「リチャード、顔が緩んでいるぞ。その顔はここか部屋の中だけにしなさい。ブラシはミタリア嬢に差し上げよう。私にして欲しいことが他にあったら言いなさい」
「はい、ありがとうございます」
この言葉で、陛下とのお茶会が終わった。
「ミタリア、ブラッシングに行くぞ!」
「えっ、リチャード様!」
「早くしないと、ミタリア嬢の帰る時間になってしまう!」
王子に手を引かれて部屋まで連れて行かれた。部屋に入るとカチッとブレスレット外して、狼の姿になった王子はベッドにドッシリ寝そべった。
「よろしく!」
「はい、お邪魔します。では、ブラッシングしますね」
ひと櫛でホワーンとした表情になった王子。気持ちいいのか目を瞑り気を抜いた。
「これは堪らん、もっとブラッシングして欲しい。明日もブラッシングに来てくれる?」
「明日も明後日もお呼びになれば……ずっと、雪が積もるまでは会いに来ます。……その、収穫祭楽しみにしています」
明日もブラッシングに来ると約束した。




