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追放アイテム士は倹約家 ─え、新しいパーティでは消耗品代をパーティ資金から出してくれるんですか!?─  作者: 藤咲理久


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第五十二話 精霊達の報酬

 翌朝、気付くと私達は神殿の中の部屋で寝かされていた。

 ……ベッドは、干し草のベッド?

 何の干し草だろう。アイテムとして判定されていないのか、鑑定できなかった。


 ベッドはいくつかあり、レオンとアウラとレティが寝ている。

 ヴェイセルとザシャが寝てたと思われるベッドは空。もう起きていたのね。


「おはようございます」


 着替えて部屋を出る。……着替える前は、なんか私の持ち物ではない薄いワンピースのようなものを着て寝ていた。たぶん精霊さん達のものだろう。

 部屋を出たあと適当に歩いていると、精霊さん達を見つけたので挨拶する。

 向こうも挨拶を返してくれ、更に少し待つように言われてその部屋の椅子に座らされた。

 一人の精霊さんが部屋を出ていき、残りの面々が私の髪の手入れをしてくれたり色々お世話してくれる。

 え、こんなに至れり尽くせりでいいのかな?


 しばらくすると、部屋を出ていった精霊さんが戻ってきた。

 戻ってきた精霊さんはいくつかの木の実を持ってきてくれた。朝食代わりということらしい。

 一応食べて問題ないこと確認。ちゃんと秘境の外のものらしい。一応ね。


 更に盛られた木の実は多種多様。みずみずしい甘酸っぱい果実、お芋のような食感の果実、サクッとした食感のナッツの類。いろんな味と食感が楽しめてありがたい。


 そうやって朝食を楽しんでいると、レティが起きてきた。


「おはようレティ」


「ああ、おはようアルマ」


 レティも私と同じ様に精霊さん達にお世話される。

 運ばれてきた木の実を見て、私に視線を向けてくる。笑顔で頷いてあげる。私は先に精霊さんに安全確認したし……何なら実は全部鑑定もしてるからね。食べてここからでられなくなるような効果は無いよ。

 私が頷いたのをみて、レティは一つずつ食べ始めた。まず口に運んだのはベリーだ。


「ん、美味しい。……甘酸っぱい」


「それ美味しいよね」


「そう言ってもらえると準備した甲斐がありました!」


 精霊さん達も喜んでいる。


 レティはそれからしばらくゆっくりと木の実を摘んでいた。

 レティはダンジョン内だとそうでも無いんだけど、ゆっくりできる日の寝起きはこんな感じ。朝は動作がスローだ。……朝に弱いとかではなく、恐らくゆっくりできる時間を楽しんでいるんだろう。


 そうしていると、また別の精霊さんがやってきた。

 ティーポットとカップを持ってきて、お茶を入れてくれた。


「ハーブティー?」


「ハーブティーだね」


「どうぞめしあがれ~♪」


 あ、落ち着く味わい。

 ……ん? これ……


「このお茶、魔力回復するね」


「みたいだね」


「魔力は大事だから~♪」


 なんか、お茶を入れてくれた精霊さん楽しそうだな。愉快なひとだ。


 そうこうしている内にアウラもやってくる。


「おはようございます」


「おはよう」


「おはようアウラ」


 私達同様に精霊さん達が群がってお世話。木の実とハーブティーでくつろぐ。


 ……なんか気付いたら精霊さん達は私達の髪を弄って遊び始めた。

 なんか魔法で私達の髪伸ばしたり、伸ばした髪を編み込んだりしてる。

 ……後で元の長さに戻してくださいねと伝えたら、「えー」と言いつつ渋々了承してくれた。

 ここにいる間は伸ばしたままでも良いけどね。流石に森を歩くのにこの長さはちょっとね……。


 ま、そんな感じで朝はゆっくり過ごした。

 昨晩のレティは〈不眠草〉の効果が切れてから久しぶりの睡眠だったけれど、ちゃんとゆっくり休めたらしい。良かった良かった。


※※※


 その後、ヴェイセル、ザシャと合流。その頃にレオンも起きてきた。

 レウケーさんから報酬を受け取る事になった。


「それでは皆さんへの報酬ですが、ここの庭にある分ではなく、奥にあるものを持っていってもらえればと思います」


「奥ですか?」


 質問するのはヴェイセル。

 こういうときの対応はリーダーであるヴェイセルの役目。


「はい。ここの庭にある柘榴やミント、その他ハーブなどは私達が使うために植えているもの。緊急事態で大量に採取したので、できればここのものはこれ以上採らずに残しておきたいのです。……報酬分については、奥の……冥界にほど近い場所にある秘匿領域で採取していただこうかと思います。そもそもこれらの植物も元来そこのものなのです」


「なるほど、わかりました」


 へぇ……あそこにあるので全部じゃなかったんだ。

 それは良かった。……精霊さん達を元に戻すのに大量に使ったからね。ここで更に私達が採取して良いのかとちょっと心配だったんだ。


 それから、レウケーさんに案内され、秘境の奥地へと進む。

 道中は特になんの問題も起きなかった。

 動物もいるが……穏やか。

 私達を襲ってくるような獣はいない。


 自然豊かで、いい景色だ。


 ただ、ところどころ植物が死に絶えている場所がある。

 あのドラゴンゾンビが瘴気を撒き散らした場所だろう。

 景観が損なわれていて残念だ。……いや、景観どころの話ではないのはわかっているんだけれどね。今現在の私の感想がそうなっちゃうのは許して欲しい。


 そうしてしばらく歩いていると……うん、なるほど。

 説明しづらい感覚だけれど……段々と自分が「死」に近づいていることが分かった。

 けれど、恐ろしい「死」ではない。喪失の恐怖もない。

 イメージとしては、安らかな眠り。

 そこに向かって歩いているような感覚。


 そうして、巨大な扉。

 それは突然現れた。

 この扉のサイズなら、もっと早くから見えてないとおかしい。

 なのに突然現れた。

 流石秘境。世界の在り方がメチャクチャだ。


「これが、その秘匿領域の扉?」


「いいえ。これは冥界の扉です。これではありませんよ。……こちらへ」


 レウケーさんはその扉から少しそれたところに歩き出す。

 その後についていくと……突如、周囲の光景が変わった。


 それまでとは全く別。

 白ポプラの木はなく、〈冥神の柘榴〉の木が並んでいる。

 他にもいくつかの果実を付けた木々。

 足元には〈プネウマミント〉を含む様々なハーブ類。


「ここがその秘匿領域。冥神の果樹園です」


「……ここが」


「はい。ここから、好きなものを……この袋に入る分だけお持ち帰りください」


 そう言ってレウケーさんは一つの麻袋を渡してくれた。鑑定鑑定。……〈冥神の麻袋〉? ……冥界に由来する物を冥神の裁きを受けずに運搬可能。なおかつ劣化させずに保管可能?

 ……重要アイテムだ。


 収納できるアイテム量が増える効果はない。見たまんまの麻袋サイズしか入れられないな。


「わかった。ありがとう。……みんな、まずは〈プネウマミント〉。それから〈冥神の柘榴〉を回収しよう。……アルマ、もしかしたら何か他にも興味深いものがあるかもしれない。それを探してもらえるか?」


「わかった」


 皆がミントを摘み始めるなか、私は周囲を見渡し、【道具探知(アイテムサーチ)Ⅱ】を使用した。

 頭に走る激痛。……ここ、周りにアイテムが多すぎる。本当に頭が痛い。


 情報の整理も大変だ。


 スキルで得た脳内の情報を一つずつ整理していく。

 良い効果のアイテムが多すぎて取捨選択に悩むよこれ。……といっても、どれもそのまま使うと冥界に属する存在に変容して死んじゃうけど。


 どうせ麻袋に入る量までなのだから、何か特別有用なものが無いかと考えているわけだが……難しいねぇ。


〈黄金りんご〉とか〈ガオケレナ〉とか……不老不死になるって書いてあるけれど、同時に冥界の住人になるとも書かれている。なんだそりゃ。

〈道化神の胡桃〉? これはたぶん駄目なやつだな。見なかったことに。


 ……あれ?


 白ポプラがこの場所にはないと思っていたけれど……一つだけあった。

 これは……スキルによると、この白ポプラのアイテム名は……〈レウケーの枝〉? ……レウケー?


「あら、見つかってしまいましたか。では、貴方達には一人につき一つ、こちらを送らせていただきましょう。もちろん、こちらも持ち帰るときは麻袋に入れてくださいね?」


 いつの間にか横に来ていたレウケーさんから、葉のついた白ポプラの枝を六本渡された。

 ……鑑定によると、〈レウケーの枝〉。素材アイテム。……装飾品の素材になる?


 よくわからないが……おそらく、レウケーさんの反応的に、これが一番の当たりなのだろう。

 とりあえず、これを持ち帰ることとしようか。

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