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追放アイテム士は倹約家 ─え、新しいパーティでは消耗品代をパーティ資金から出してくれるんですか!?─  作者: 藤咲理久


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第五話 厄災の写し身

 嬉し涙とはいえ、ダンジョン内で泣き始めるという醜態を晒した私。

 そんな私を、皆は優しく受け入れてくれた。


 改めて思う。このパーティに拾ってもらえて良かった。

 みんなのために頑張ろう。


「〈栄養棒〉と【道具使用(ユーズ)】の組み合わせはとても優れているけれど、当然ながら食事による充足感とかは無いから注意してね」


「それはそうだろうな」


 歩きながらの私の説明に、レオンが頷いている。

 今は〈栄養棒〉と【道具使用(ユーズ)】の組み合わせの注意点を説明していた。


「それと、もし仮に私が倒れちゃったりした場合、〈栄養棒〉を食べるのはとても大変なの。本当に、食べないといけないとわかっていても、体が拒否しちゃうぐらい不味いから。普段美味しい物を食べていると、空腹で死にそうなときでも吐いちゃったりするし。……そんな感じで、食事の充足感が無い事によるメンタルへの影響や、私が倒れた場合のリスクも考えると、〈栄養棒〉以外の食料もある程度は持ち込んだほうがいい」


「なるほどな。まぁ、それでもメインの栄養源を〈栄養棒〉に頼れるなら、食料は本当に必要最低限で済む。何にしろありがたい」


 ヴェイセル達は、私がデメリットについて話しても落胆しないでくれた。

 たぶん『光輝の剣』なら「なんだよそれ、結局使えねぇじゃねぇか」とか「期待させるんじゃねぇよ」みたいな言葉が飛んできていただろう。


 嬉しいな、冷静に聞いて、その価値を吟味してもらえるっていうのは。


※※※


 それから十一日が経った。

 ダンジョン内の探索は問題なく進行した。

 むしろ、褒められすぎて恐縮してしまう日々だった。


 現在、私達は『導の煌星』の最高到達階層である十階層にいた。


「さて、ここが俺達の最高到達階層なわけだが……アルマ、現状の物資ってあとどれぐらいある?」


「まだ持ってきた物資の四分の一ぐらいしか使ってないね。みんな体力も魔力も無駄遣いしないから、私も物資を節約できているよ」


 その報告に、『導の煌星』のみんなが喜びを現した。


「ここまででまだ四分の一ですか! すごいですね」


「ああ、これならこのまま十一階層も行けるんじゃねぇか?」


「ダメ。今回の目的はあくまでアルマとの交流と、アルマ自身に自分の実力を認識してもらうこと。先に進む場合は、そのための準備をしっかり整えてからにするべき」


「レティの言う通りだ。予定外の行動はトラブルの原因になる」


 そうやってみんなで話し合い、結局、今日一日軽く十階層を探索してから、明日以降帰路につくこととなった。


 十階層が最高到達階層ではあるものの、『導の煌星』の面々は慣れた調子で進んでいく。


「毎回、十一階層に行くには物資が心許ないってことで引き返していたんだ」


「少しずつ物資を節約してここまで来れるようにはなっていたが、十一階層へと進むには足りなかった」


 ヴェイセルもザシャも、悔しげだ。


「第十階層の試練獣(ボス)を倒す自信はあるのですけれどね。戦闘能力が十分かどうかと、物資が十分かどうかでは問題が別なので」


 階層試練獣(ボス)。それは、封印であるこのダンジョンが訪問者に対し、次の階層に進むに足る実力を持っているかを試すために用意する獣らしい。

 第十階層の試練獣(ボス)を倒せれば、少なくとも戦闘能力においては、十一階層へ進んでも問題ない力があるというになる。……で、皆その自信はあると。


「そういう状況なら、確かに私が役に立てそうだね」


 ここに来てようやく、私は自分が本当に必要とされているのだと理解した。

 同時に、そのことが心底うれしかった。

 こんな良い人達の役に立てるのだと思うと、モチベーションが上がる。

 ……『光輝の剣』にいた頃には感じたことのなかった高揚感だ。


「ああ、頼むぞ」


 微笑んでくれるヴェイセルに、私も微笑み返した。


※※※


 その後、軽く第十階層を探索して帰還しようという話になった。


 第十階層の探索も順調だった。……実のところ、いつもよりも随分魔物の数が多いと思っていたのだけれど、『導の煌星』の皆は容易く対処していた。確かに、戦闘能力には余裕があるらしい。

 そうして、そろそろ帰還しようかという頃に……私達はソレに遭遇した。


「みんな、止まれ」


 ザシャの言葉に、私達は足を止めた。

 慎重に、曲がり角の向こう側を窺うザシャ。


「みんなイメージを送る」


 ザシャがそういった直後、脳内にイメージが流れ込んできた。ザシャのスキルによるものだろう。

 流れ込んできたイメージは……胡散臭いイケメンだった。なにこれ? ……いや、まって、これって!


「まさか、厄災の写し身か?」


「ああ。間違いない。今回の探索で妙に魔物が多かった原因はこいつだろう」


 厄災の写し身。

 十階層以上で現れるという、レアモンスターだ。

 その姿は、厄災になる前の厄災……つまりは巫女と精霊と神を騙したペテン師の姿をしているらしい。


「確か目撃されるのは十数年に一度。大して強くはないけれど、放って置くとその階層の魔物の数が異常なまでに増加するんだよね?」


 そんな私の問いに、ヴェイセルが頷いた。


「そうだ。だから、見つけたら可能な限り討伐。無理なら可能な限り速やかにギルドと国に報告しなければならない」


「ついでに言うと、昔から国が求めている素材アイテムが、厄災の写し身から取れるらしいですね。そのアイテムが必要であることも、厄災の写し身から取れるということも、当時のSランク占い師が占った結果だとか」


「その入手がこの国の至上命題(グランドクエスト)の一つだよな」


「〈愚神の心臓〉だね。おそらくは文字通り、やつの心臓なのだろう。……だが、厄災の写し身は倒すとドロドロに溶けて、素材を取ることができないと聞く。その素材を気にするのは無駄だろう」


 アウラとレオン、レティシアの言葉を聞いて、私は一つのスキルを使うことにした。

 ……恐らく、範囲内のはずだ。


「【道具探知(アイテムサーチ)Ⅱ】……痛(つ)っ」


 これ、使うたび頭が痛くなるのが難点だなぁ、ほんと。


「いま使ったのはアイテムを探知するスキルだな? なぜソレを使った?」


 耳ざとく私の呟きを聞いていたらしいザシャに問われる。

 どちらにせよ情報共有は必要だし、伝えよう。


「うん……私なら、その素材アイテムを入手できるんじゃないかなって思って」


「なに?」


「そうなのか? アルマ」


 真剣に問うヴェイセルに、私はなんとか微笑んで答えた。


「うん、行けそうだよ。……ちょっとリスキーではあるけれど、上手く行けば私達『導の煌星』が、史上初めてこの国の至上命題(グランドクエスト)の一つをクリアしたパーティになれるかも」


 私の言葉に、皆は驚いた。

 ヴェイセルが真剣な表情で問いかけてくる。


「今から説明するね」


 そうして私は、私の持つ最上位スキルと作戦の内容を説明をした。


 だが──


「ダメだな」


「ダメですね」


「まぁ、ないわな」


 一気にヴェイセル、アウラ、レオンの三人からNGを食らってしまった。

 ふと、以前のことが頭によぎってしまう。


「そ、そっか……ごめん、そうだよね、私の考えた作戦なんて──」


「待て、アルマ。誰もお前の提案を悪いと言っているわけじゃない。むしろ、お前のその能力があるなら、チャレンジする価値は十分にある。変に卑屈になるな」


 ネガティブになった私を、ザシャがフォローしてくれた。


「アルマの考えた作戦では、アルマのリスクが重すぎる。加えて、私達の役割が軽すぎる。これでは私達は、非戦闘ジョブにばかりリスクを負わせる愚か者と堕してしまう。……もっと頼って欲しい」


「レティシア」


 感動して泣きそうになってしまった。

 今まで、頼るなと言われることはあっても、頼って欲しいなんて言われることはなかったから。


「レティでいい。長いだろう? 君は十階層に辿り着くまで十日以上、寝食を共にした仲間だ。もうちょっと馴染んでくれ。……私達に、一緒に命を賭けさせてくれるぐらいに」


 レティの言葉に皆が頷いた。

 ……こんな皆に出会えて、私は果報者だ。


「わかったよ、レティ、皆。……一緒に作戦を練り直そう」


 そうして、私達は厄災の写し身と戦うための作戦会議と準備に取り掛かるのだった。

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