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追放アイテム士は倹約家 ─え、新しいパーティでは消耗品代をパーティ資金から出してくれるんですか!?─  作者: 藤咲理久


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第四十八話 死線を超える

【レオン視点】


 嫌な予感はしていた。

 元が強力な邪竜。そこから強い怨念でアンデッド化したなら、こんなに容易い相手じゃねぇだろうってな。

 案の定だった。


 まさか自爆してくるとはな。

 察知して、警告のための矢を撃ったアウラには感謝だな。


 警告してくれたおかげで至近距離で巻き込まれることは無かったが……それでも回避しきれる距離じゃなかった。

 俺も爆風を防ぐのに【戦女神の守護領域(アイギスフィールド)☆】を使わされた。あの爆発は毒も瘴気も含んでいたからな。仕方ない。


 この後は俺も自爆を警戒しねぇとな。


 それにしても、やはり最上位スキルはスタミナをかなり持っていかれる。

 まだまだ使えるが、接近している状態で自爆されると毎度使わされることになり、厄介そうだ。


 で、この竜の腐肉はまた再生してやがるが……さっきより再生がはええな。

 ……ああ、ヴェイセルが斬ったんじゃなくて、自分で自爆したからか。こいつは厄介なこったな。


 レティとアルマが来るまでは持久戦だ。ペース配分を考えねぇと。


「レオン、再生終了直前に突っ込むぞ」


「おうっ」


 ま、そうだろな。それでまた、再生完了直後の隙を突いてバラバラにしてやろう。それが一番手軽に時間を稼げる。

 ……とはいえ、ヴェイセルのスタミナが心配だな。攻撃スキルはクラスⅤスキルだが、両手にずっと最上位スキルを宿し続けている。あれは維持しているだけで延々とスタミナを消耗するタイプだ。最上位二つともなれば、かなりのスピードで消耗しているはず。下手すると突然倒れるなんてことになりかねない。


 なら、俺がやるべきは、他のことに無駄な体力を使わせないようにすることか。


「ヴェイセル。お前は回避も防御も考えず、真っすぐ行ってスキルを使うことだけ考えろ。……そこまでは俺が護りきってやる」


「ああ、頼んだ」


 頼まれたからには、確実に遂行しねぇとな。


 再生を終えた骨の周りに、肉が再生されていく。

 骨は周囲に飛び散った骨が戻ってきて再生するが、肉はそうじゃない。飛び散った腐肉はそのままで、骨の周囲に新たな肉が生まれる。……どういう理屈かは知らんが、こういう再生をする以上、骨は重要なんだろう。……なんとか骨を再生不可能なレベルで破壊することができればいいんだが……あいにく、ヴェイセルの攻撃はそういうタイプじゃない。本気でその案を検討するとした場合、それを実行するのはアウラの役割になるが……【狩猟月女神の一射《アルテミスティモーリア》☆】の連発は負担がでかいらしいから、その選択肢はおそらく取れないな。


 考えている間に、肉の再生は進んでいた。

 肉の再生が終わりかけたタイミングで、俺達は踏み出した。


 体を前方に弾くように、駆ける。

 再生状態が完璧でなくても、骨が十分ならこいつは動く。


 案の定、触手だらけの右前足を振り上げたゾンビ。

 だが、俺の勘はソレを無視していいと告げる。


 考えるまでもなく無視。ヴェイセルを護れる位置取りを維持し、前へ前へ!


 右前足が振り下ろされようとした瞬間、その足首を光が貫通し、そのまま触手だらけの前足が千切れる。千切れた先は遠心力のままあらぬ方向に吹っ飛んでいった。

 うちの後衛はいい仕事をする。


 さて、次はもう一方の前足。こちらは俺が防ぐしかないな。

 鞭のようにしなるかつて指だったモノ。その性質と、ヴェイセルの移動速度を考慮して……ここだ!


「【要塞盾(フォートレスシールド)Ⅴ】!」


 ドンピシャ! この位置での防御なら、この肉触手がしなろうがどうなろうが、ヴェイセルに影響はない!


 ヴェイセルはそのまま懐へ!


 ……そのとき、背筋にヒヤリとしたものを感じた。


 思考することもなく、盾を押そうとしてくる触手を弾きつつ、反動を利用してヴェイセルへと駆け寄る。


 シューッという、空気が漏れるような音。

 ヴェイセルは気にせず攻撃態勢に入る。信頼してくれてありがとよ!


「【戦女神の守護領域(アイギスフィールド)☆】!!!!」


 ヴェイセルを効果範囲に捉えた直後に、俺は【戦女神の守護領域(アイギスフィールド)☆】を発動した。 


 直後、周囲に黒い霧が立ち込める。……それは、ドラゴンゾンビの体の各所から吹き出していた。

 ……さっきの音からして、恐らく、黒い霧になる前からガスは漏れ出していたのだろう。黒くなったのは瘴気が混ざったからだ。


 そして、その黒い霧が……突如爆発した。


 黒い霧の中にいた俺達に、全方向から爆風が押し寄せる。

 だが、俺が使っているスキルは【戦女神の守護領域(アイギスフィールド)☆】。災厄を払いのける神の盾の名を冠するスキル。このスキルは全方向への防御が可能だ。


 全く問題なく防ぎ切る。今回は体外にガスを噴射した上での爆発。さっきの自爆より威力は数段落ちる。


 周囲の爆炎が晴れたタイミングで、スキルを解除。

 自爆での妨害は連打はできないだろ?


「【剣嵐(ブレードテンペスト)Ⅴ】」


 ヴェイセルも完璧なタイミングでスキルを使用した。


 世界が真紅と暗紅に刻まれる。


 その剣速は、およそ人間業ではない。それはそうか、スキルによる動作は人の挙動も物理法則も大きく無視する。

 物理的にありえない速度で剣が閃き、ドラゴンゾンビをバラバラに切り裂いた。


「下がろう」


「おう」


 言葉少なく、俺達は後退。

 再び、攻撃のタイミングを測る。


 敵の攻撃パターンは増えたが、問題ない。

 再生は厄介ではあるが、こちらは再生直後に相手をバラバラにできる。そもそもゾンビ化している分、防御力も低いし攻撃速度だって遅い。最上位スキルを躊躇わずに使えば、この人数でも問題なく戦える。

 まぁ、最上位スキルを使う分スタミナ消費は若干問題だが……レティが来るまでなら大丈夫だろう。


 さっきは自爆を使ってきたし、ここから新たな攻撃が来ないかも警戒する。

 正直、普通のドラゴンゾンビならこんな警戒をする必要は無いんだが……前足の骨が無かったり、この土地では体をバラバラにしても倒せなかったり、様々な条件が重なって、メチャクチャ厄介な敵になっている。

 再生するほどに異形に変わっていくし、能力が増えてもおかしくない。


 骨が再生し、肉が再生していく。

 そして、喉が部分的に再生したあたりで、ドラゴンゾンビが叫んだ。


「ニンゲンンンン! シネエエエエ! キエロオオオ!」


 ドラゴンの声がうるさい。

 気分が悪くなって気がやる。……いや、まて、マジで吐き気がしてきた。

 これ……クソ、マジか!


「こいつ! 声に呪い乗せはじめやがった!」


「本当に面倒だなこいつ」


 元来、ドラゴンゾンビは鱗が生前のような防御力を持たないため、生前より倒しやすい。知能も下がるしな。

 そうでなければ、瘴気をまとう強大なアンデッドであるドラゴンゾンビは、極めて厄介だ。

 で、防御力を不死身性で補っているこいつも、相応に厄介な相手だ。


 ドラゴンゾンビは瘴気のブレスも吐く。

 さっきの呪いの叫びもある以上、喉は真っ先に潰すべきだな。


 再び接近のタイミング。

 さっきまでよりだいぶ早いタイミングで踏み込む事になったが、喉はもう潰しておいたほうがいい。


「ニンゲン! ニンゲン! ニンゲン! ニンゲンンン!!」


 本当にうるさい。音だけでも鼓膜が破れるのではないかと不安になる。

 加えて呪いのせいで頭が痛い。ヴェイセル、さっさと切り裂いてくれ。


 迫りくる触手を防ぐ、弾く、弾く、弾く、躱す、防ぐ!!!!

 ヴェイセルには一つたりとも触れさせない。


 足元を這うような一撃は、スキルを使うまでもない。盾を地面に突き刺すように防ぐ。

 斜めに頭からこちらを叩き伏せるような攻撃もアクティブスキル不要。攻撃を僅かに逸らしてやればいい。盾で受け流すように。

 正面からの強撃は真っ向勝負。【要塞盾(フォートレスシールド)Ⅴ】で防ぎ切る!


「【剣嵐(ブレードテンペスト)Ⅴ】!」


 奔る剣閃。

 だいぶスタミナきつかろうに、衰えず一瞬でバラバラだ。


 爆発が来る前に即座に撤退。

 だが、今回は爆発攻撃はなかった。


 さて、ここからは……!?


 一瞬一息つけるかと思ったところで、攻撃の予感がし、体が動いた。

 盾に衝撃。甲高い音。


 ……何の攻撃だ!?


「骨?」


「マジか」


 肉の再生途中のまま、自身の骨を飛ばして攻撃してきやがった。

 ……くそ、今後は一息つくタイミングもなさげだな。


 ドラゴンゾンビがゾンビらしい姿に再生するまでは、ドラゴンスケルトンが相手ってことかよ。

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