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追放アイテム士は倹約家 ─え、新しいパーティでは消耗品代をパーティ資金から出してくれるんですか!?─  作者: 藤咲理久


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第三十一話 お嬢様はアグレッシブ

「それで、貧乏人用のスキル構成ってどういうものなの? というか、オリハルコン級なら結構稼げるんじゃないの? なんで貧乏人向け? 稼げるようになる前にスキル構成が全部決まっちゃったって訳でもないでしょう?」


「あー……まぁ、色々あってお金を節約しなくちゃいけなかったんです」


「敬語も無しで」


「あ、はい。……わかりま……わかった。とりあえずお金を節約する必要があって、貧乏人型にしたんだよ」


「なんでお金を節約しないといけなかったの? 何かどうしても欲しいものがあってお金を貯めてたとか?」


 ……グイグイくるなぁ。

 どうしよ……?


「純粋にお金がなくて」


「なんでお金がなかったの?」


「……うーん」


「無駄遣いでお金が無くなっていたわけじゃないんでしょ? そんな雰囲気じゃないもの貴女」


「……まぁ、無駄遣いをしていたつもりはないね」


「それで……じゃあ、なんで貧乏だったの?」


 こ、このお嬢様……遠慮というものを知らないのだろうか?


「教えないとだめ?」


「教えてほしいわ!」


 んー……まぁ、隠すほどのことでも無いし、いいけどね。


「……私が前に別のパーティに居たのは知ってる?」


「もちろん! 王都で活動しているオリハルコン級パーティのもう一方。最近落ち目と噂の『光輝の剣』よね」


「落ち目……いやまぁ、そういう噂が広まっちゃってるよね」


「実際そうなんじゃないの? 討伐依頼に関してはかなり強い魔物も倒している実績があるみたいだけれど……第八階層から引き返して来てからは、結局一度もダンジョンに潜っていないのでしょう? 暗に深層に潜る能力を失いましたってことじゃないの?」


「それについてはギルドがそういう依頼を回しているから……」


「つまり、ギルドが『光輝の剣』はダンジョンの深くに潜れないって認めているってことでしょう?」


「……」


 ……まぁ、確かにその通りなんだけどね。


「それで、その『光輝の剣』がどうしたの?」


「んー……私のスキル構成が確定するまで……駆け出し冒険者になった日から、あの日追い出されたときまで、『光輝の剣』で冒険者をやっていたの。だから、私のスキル構成が確定したのはあのパーティの一員としてそれが一番活躍できたから」


「ふむ……なるほど? 分かったわ。つまり、節約が必要だったというのは、パーティでアイテムに掛けるお金を可能な限り抑える方針になったのね」


「え?」


「あら? 違うのかしら? 私は立場的に探索の前準備に直接関わらないから気付くのが遅れたけれど……普通、探索のための消耗品なんかはパーティの資金で購入するものでしょう? だから、節約する必要があったとしても、それは貴女のお金が無いのではなく、貴女の所属するパーティのお金がないと考えるのが自然よね? それはそれで、なんでパーティがアイテムにお金を掛けない方針になったのか気になるけれど」


 ……うん、そっか。普通はパーティ資金で消耗品準備するらしいもんね。


「いや、『光輝の剣』では消耗品は私の所持金から出さないといけなかったよ。アイテムはアイテム士が使うものだろって言われて」


「あ、あら? そうなの? ……それは結構大変ね。王都のダンジョン深層まで潜るなら結構掛かるでしょう。だからこその貧乏人型なのね。でも、少し酷いのではない? 貴女一人に出費を押し付けるなんて」


「いやぁ、他のメンバーも自分の装備の手入れとかはしていたからね。私は武器や防具を整備したりはあまり必要なかったから」


「あら? 魔道具の整備は?」


「魔道具は使っていなかったよ」


「ええ!? そうなの!? どうして!? 繰り返し使える魔道具のほうが結果的に消耗品よりも経済的ではないかしら?」


「……その分初期投資が必要だからね。整備費用込みでも長く使えば魔道具の方が安上がりなのはわかってた。……それでも、買う余裕がなかったんだよ」


「……んん? そうなの? でも、やっぱりオリハルコン級冒険者ならいろんな魔道具を買い揃える事ができると思うのだけれど」


 ……んー、言いづらいなぁ。

 ちょっと目を逸らしながら言う。


「……私だけ報酬を絞られてたからね」


「どのぐらい?」


「オリハルコン級になってからは……私の分前は、毎回一律金貨五枚。報酬や探索で得られた利益の額に関係なく、常に五枚」


「はいぃぃ???」


 お嬢様、絶句。


「きんかごまい……金貨五枚!? え? 嘘よね? そのぐらい、ちょっとお食事しただけで無くなっちゃうじゃない!?」


「え、無くならないよ?」


 これは断固否定させてもらう。

 金貨五枚がすぐに無くなっちゃう食事って何!?


「……あ、あら? 私の金銭感覚がおかしいのかしら? 金貨五枚ってちょっとした子供のお小遣い程度ではないの?」


「絶対違う。一般市民は一ヶ月働いて給料が金貨五枚ならかなり高給取り」


「え……? 嘘……そうなの?」


「そうなの」


 この子……だいぶ常識がズレている!


「……うん、今考えるのはやめましょう。今度お父様に色々と資料を見せてもらうことにするわ。……で、話を戻すけれど……一般人基準では大金かも知れないけれど、オリハルコン級冒険者の活動資金は金貨五枚では足りないんじゃないの?」


「うーん……まぁ、普通は足りないらしい」


「よかった。これに関しては私の認識はズレていないのね。……で、それにもかかわらず、貴女は金貨五枚で……生活費も必要と考えるともっと少なくかしら? 金貨五枚未満で準備をしていたと」


「まぁ、その認識であっているよ。とはいえ、ほぼ金貨五枚丸々冒険の準備に使っていたけれどね。生活費はゼロに近い費用に抑えていたから」


「……そんな状態なら、スキル構成も節約に全力を尽くすものになるわね。……でもどうして貴女の報酬は金貨五枚だったの? 明らかにオリハルコン級冒険者の報酬としては少なすぎるじゃない」


「んー……あっちに居た頃は、私は戦闘もできない足手まといなんだから、お前の分の報酬は少なくて当然だろって言われてたね」


「……んん? 冒険の準備はアルマがしているのに、戦闘ができないから足手まとい? はい? 探索では戦闘能力より物資支援能力の方が大事だと思うのだけれど?」


「んー……まぁ、私が駆け出しの頃から一緒で、あまりそのあたりの実感がなかったんじゃないかなと」


「えぇ? ちょっと予想外ね。オリハルコン級でもそんなやつらがいるのね」


 なんかエレオノーラが不機嫌になった。

 ……なんで?


「そもそも、アイテム士が戦闘能力が無いというのは反論したいわ! ちゃんと報酬をアルマに渡して、アルマが魔道具を揃えられていたなら、一定の戦果を上げられたはずだもの!」


「え? ……いやいや、いくら魔道具があっても、非戦闘ジョブだから厳しいのでは?」


「そんな事無いわ。事実として、私はパーティ内でアタッカーを務めることもあるもの」


「え、そうなの!? すご」


「すごいでしょう! もっと褒めてもいいのよ」


 それからしばらく、私がエレオノーラを褒めるタイムには入った。

 少ない語彙で「すごい!」とか「強い!」とか言っただけだけど……なんか案外エレオノーラは満足してくれた。


「ふふんっ! 気分がいいわ! それにしても、アルマは追い出されて……そして『導の煌星』に拾ってもらえて良かったわね。今のほうがずっと良いでしょう?」


「もちろん。今はほんとうに、生きてて楽しい」


「はじめからこちらにいれば、スキル構成ももっと『導の煌星』に最適化されたものだったでしょうに」


「そうかもね。でも、それはそれとして貧乏人型のビルドもしっかり皆の役に立てているよ。そもそも『導の煌星』が第十階層で詰まっていたのは、物資不足が原因だったしね」


「あら、そうなの? それなら……やっぱり貧乏人型のスキル構成も気になってくるわね。……改めて貴女のスキル構成がどんなものか、どんな強みがあって、何が欠点なのか、教えてくれない?」

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