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追放アイテム士は倹約家 ─え、新しいパーティでは消耗品代をパーティ資金から出してくれるんですか!?─  作者: 藤咲理久


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第二話 ようこそ『導の煌星』へ

 周りが騒がしくなったので、ギルドの一室を借りて、改めて話し合う事になった。


「それで、改めて訊(き)くが、俺達のパーティに入らないか?」


「えっと……とてもありがたいお誘いなのですが、その……よろしいのですか?」


 正直、信じられなかった。

 冒険者パーティ『導の煌星』。この王都に存在する二組のオリハルコン級冒険者パーティの一組。もう一組のパーティは『光輝の剣』だ。

『光輝の剣』が六人パーティなのに対し、『導の煌星』は五人でオリハルコン級に達したパーティだ。そのため、一部では『光輝の剣』より『導の煌星』のほうが格上だという意見もある。

 ……『光輝の剣』のみんなは「六人といってもそのうちの一人が足手まといのアルマだから、それで劣っているなんてことにはならない。むしろ足手まといを抱えて戦えている自分たちのほうが強い」と言っていたけれど。

『光輝の剣』とどちらが上かはともかく、『導の煌星』の実力は間違いなくこの王都……どころかこの国……下手をするとこの世界全体でも最上位に位置するだろう。


 そんな素晴らしいパーティに、最近ではシルバー級のパーティにすら断られた私が、本当に入って良いのだろうか?


 だが、そんな疑問は真っ向から否定された。


「よろしいのですよ。私(わたくし)達は真実、貴女の力を必要としているのです。貴女に、私(わたくし)達のパーティに入って欲しいというのは、同情などではありません」


 若干緑がかった金髪のエルフの弓使い、アウラティアさんが優しげにそう言った。


「そう、言ってもらえるのは嬉しい……のですが……あの、私にそんなお役に立てる力があるとはとても……」


『光輝の剣』で足手まといだった私は、きっと『導の煌星』でも足手まといになってしまう。

『導の煌星』の方々は私の実力を過大評価しているみたいだけれど、失望させることになるだろう。

 ……そして、失望されれば、また、雑用として搾取されるかもしれない。……いえ、そもそも彼らは使い捨てられる雑用が欲しいのでは?

 ……心に満ちる猜疑心と、それに対する自己嫌悪を抱く。なんて酷いことを考えているのだろう、私は。自分が嫌になる。

 さっき、彼らはきっと、私のために怒ってくれていた。なのに、そんな人達が、自分を使い捨ての雑用とし迎え入れようとしているだなんて。そもそも、そんなのはどう考えても合理的じゃない。そんなことをするはずがないと、考えればわかる。

 にも関わらず、そんなことを考えてう。そんな自分の愚かで恥知らずな性根に、自分で失望した。


「アルマは自己評価が低すぎるな」


「……え?」


 ヴェイセルさんの言葉が、上手く咀嚼出来なかった。


 私は足手まとい。この数年、そう言われ続けてきた。つまり、私が足手まといというのは私の主観ではなく、他者からの客観的な評価だ。

 だから、私の自己評価が、客観的な評価とズレているなんてこと、おそらくない。

 やっぱり、ヴェイセルさん達が優しいのだろう。


「……はぁ、納得してなさそうな顔だな。だが、俺達が君の実力を評価していて、だからこそ仲間にしたいというのは事実だ。だから君に、俺達の仲間になって欲しい」


「もし仮に、本当に仮にですが、私(わたくし)達の貴女に対する評価が過大評価だったとして、それはそれで構いません。そのときは、一緒に成長していきましょう?」


「仮に過大評価だったところで、お前さんを雑用扱いしたりしないと誓うさ。何なら契約書を書いてやったっていいぞ?」


 ヴェイセルさん、アウラティアさん、それから、大盾を持ったレオンさんがそう言ってくれた。


 そこまで言ってもらえてようやく、自分は仲間に誘ってもらえているのだという実感が湧いてきた。


「本当に、私が仲間に入れてもらってよいのですか?」


「何度もそう言っている」


 フードを被った密偵の少年ザシャ君はちょっと呆れたように言った。


「私達は君を欲している。君が仲間となることを望んでいる。……君がよければ、仲間となって欲しい」


 神秘的な氷魔法使いの銀髪獣耳少女レティシアちゃんが、落ち着いた声で誘ってくれる。


 見渡すと、『導の煌星』方々が、皆私を見つめていた。

 優しい目。

 そこには、欠片も嘲りや侮りの色はなかった。


「こんな私でよろしければ、よろしくお願いします」


 言葉は、自然と口から出ていた。


※※※


「というわけで、ようこそ『導の煌星』へ! ここが俺達の家だ」


 私は皆さんに案内され、『導の煌星』のパーティハウスの前にやってきた。入口の前でパーティハウスを紹介される。

 だが、すぐにまた出発することになっている。


「本来なら、このまま歓迎会をするところなんだが……アルマには先に、自分の実力がちゃんと俺達の役に立つことを実感して欲しいからな、早速今からダンジョンに潜ろう。歓迎会はそこから帰ってから、だ」


「えっと……『導の煌星』に必要とされる実力を発揮するという話になるなら……かなり長期間潜ることになるのでは?」


「ああ。おそらくここに戻って来るのは二十日は先になるだろうな」


「なら、物資の買い込みが必要ですよね」


「いや、今回はうちの倉庫にある物資を使おう。……アンネ、いるか!」


 ヴェイセルさんは言いながら、パーティハウスの中に呼びかける。

 すると、メイド姿の女性がやってきた。


「はーい、いますよーヴェイセル君。……あれ? そっちの人はどなた?」


「彼女はアルマ。今日から俺達の仲間になる。Sランクのアイテム士だ。……アルマ、彼女はアンネ。俺達が留守の間パーティハウスを管理してくれる仲間だ。Sランクのハウスキーパー」


「アンネでーす! よろしくね!」


「アルマです……よろしくお願いします」


「うん! ……あ、敬語とかいいからね? もっと気楽に話そ?」


「わかりま……わかった」


 ハウスキーパー。それもSランク。そんな人が家を管理してくれるなら安心だろう。

『光輝の剣』の場合、家の管理は主に私がしていた。もちろんダンジョンに潜ったり依頼をこなしている間は管理出来ないので、留守の間は鍵をかけていただけ。……だから、あまり高価な物をパーティハウスの置いたりは出来なかった。

 ……一度泥棒が入って、アンガスが激怒していたなぁ。その泥棒は『光輝の剣』の一員であるSランク暗殺者のヘレナが見つけ出して、アンガスが文字通り血祭りにあげてた。……その後、私もひどく怒られた。泥棒は鍵を壊して侵入したわけだけど、鍵が安物過ぎるのが悪いとか言われた。刻印魔法による防犯機能の付いた鍵に買い替えることになって……そのお金を、私が払わされたんだよなぁ。私の責任とか言われて。……お金足りなくて、しばらく報酬から天引きされた。


「アンネ、伝えていた予定を変更して、この後すぐにアルマと一緒にダンジョンへ行く。アルマと互いに実力を確認するのが目的だ。それで、俺達オリハルコン級冒険者が実力を測るとなると、当然かなり深い階層に潜らないといけない。そこまでの物資をアルマに準備してもらう。……倉庫に案内してやってくれ」


「わお! また行っちゃうのかー……ま、いいけどね。とりあえず了解! アルマちゃん、こっちに来てー」


「あ、うん、了解」


 手招きするアンネさんについていく。パーティハウスの中は手入れが行き届いていた。……専門の人が手入れしていると違うなぁ。


「はーい! ここが倉庫ー! 棚毎種類別にアイテムが並んでいるから! わからないことがあったら訊いてね!」


「ありがとう」


 倉庫の中も綺麗に整理整頓されていた。

 これなら必要なものを探すのも早そうだ。


「それじゃ、準備するね!」


※※※


 倉庫の中には必要なものが大体あった。

 というか、私が普段使わない……高価過ぎて使えないような高級なアイテムも多数あった。

 逆に、私が普段使うような安価な物が少なくて、私の準備としては足りなかった。

 まぁ、そういった安価なアイテムについては、私の背嚢の中に『光輝の剣』での前回冒険時の残りもある。ここにある高級品を使うのは申し訳ないが、不足分はそれで補えば十分だ。

 ……安価なアイテムの不足を、高級品で埋めるって、完全にあべこべだけど。


 私が普段使うアイテムの中には、この倉庫のものだと代わりにならないアイテムもある。けれど、幸いなことに、そういうアイテムは私の手持ちが十分残っていた。


「んー? そのぐらいでいいの? もっと高級ポーションとか持っていかなくていい?」


「うん、大丈夫。……えっと、前のパーティで冒険していたときの残りもあるから」


「へー! それにしても、その背嚢いっぱい入るんだねー!」


「【収納術Ⅴ】のスキルがあるからね」


【収納術Ⅴ】のスキルは、入れ物の容量を実質十倍にできる。……ただし、対象にできる入れ物は一つまで。【収納術Ⅴ】でアイテムを入れた入れ物がある状態では、他の入れ物には【収納術Ⅴ】は適用できない。

 荷物持ちジョブで取得できる【空間収納Ⅰ~Ⅴ】などに比べると、容量も少ないし、背嚢自体は必要だ。けど、それでもかなりたくさんのアイテムを持ち運べるようになる有用なスキルだ。

 ……なお、【収納術Ⅴ】だけだと重さはそのままなので、【運搬術Ⅴ】も持っている。これのお陰で荷物の重さがあたかも十分の一しかないかのようにアイテムを持ち運ぶ事ができる。ついでにスタミナも上がる。


「おー! 【収納術Ⅴ】! いいね、さすがSランクアイテム士だ! こりゃ、今度こそうちのパーティも先の階層まで進めそうだ!」


「え? ……それはどうして?」


「んー うちのパーティ、王都地下ダンジョンの十階層から先に進めてないってのは有名でしょ? あれってさ、基本的に物資が足りてないせいみたいなんだよねー。食料とかポーションとか」


「なるほど。それなら確かに役に立てるかも。本職の荷物持ちジョブの人ほどじゃないけど」


「立てる立てる! ほんと! 頑張ってきてね! ……まぁ、今回は先に進むのが目的じゃないから、行くとしても次回以降だろうけど」


「そうだね。……とりあえず、今回、皆に認められるように頑張って来るよ」

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