第十六話 第三、第四階層
さて、第三階層。
「今日はこの階層の攻略までだ。この層でも途中でサンプルを取る」
「ああ、行こう」
ヴェイセルの言う予定はみんな把握しているものだ。
レティがそれに頷き、皆は歩き出した。
この階層からはオークがでる。
私の実力だと、オークまでがギリギリ相手できる範囲だ。一応ソロでも勝てるけど……味方という保険がない状況ではできれば戦いたくない。そんなレベルの相手。
……あ、今は装備の防御力が上がったからもうちょっと余裕あるかな?
でもやっぱり怖いから装備のスペック頼りで計算するのはやめておこう。
第三階層まで来たが、皆のペースは全く乱れていない。
今まで通り皆の歩くリズムと歩幅を一人ひとり測っているけれど、遅延と呼べるようなペースの変化はなかった。誰一人。
すごいな。ここまで消費無しで進めるとは。
そんなことを考えていると、三階層での初戦闘。
コボルドオンリーの集団だ。それもかなりの数。……二十体程だろうか。
即座に戦闘態勢を取る。
向かってくるコボルド達。まずはヴェイセルが迎撃に駆けた。
先頭二匹が一瞬でばらばらになる。……ヴェイセルは手数型だが、このコボルドごときが相手なら、スキル無しでも一撃即死らしい。それが連撃で飛んでくるんだから、細切れにもなろうというもの。
「そろそろ通常矢は無くなるので、魔力矢に切り替えます【魔力矢生成Ⅴ】」
アウラは矢が魔力矢に切り替わった。生み出された矢は、攻撃スキル無しでもコボルド一匹を貫通し、その奥に居たもう一匹の頭蓋を破壊した。……その後、魔力でできていた矢は空気に溶けるように消えていく。
コボルドの中にも弓を使う個体が居たが……飛んできた矢はレオンがキャッチし、そのまま投げ返した。……投げ矢では無いのに、その矢はまっすぐに弓持ちのコボルドに飛び、その肩に突き刺さる。
「うーむ、殺すつもりだったんだがなぁ。まぁいいか」
言いつつ、突っ込んできたコボルドを盾で弾き飛ばしていた。レオンの持つ巨大な盾は、当然ながら凄まじく重い。振り回せば大質量の鈍器そのものだ。
ザシャはいまいち何をしているかわからないが、気付いたら死体が増えている。恐らくザシャの攻撃によるものだろう。
レティは基礎的な魔法による援護。飛んでいった氷の礫が、そのままコボルドを仕留めることもあれば、躱されることもある。……どちらにせよ、レティはあまり気にしていない。どうやら、敵の連携を封じるように撃っているらしい。躱されたとしても、その動作によって連携を途絶えさせることができれば目的は達している。
……本来、コボルド相手ならそこまで気を使った攻撃をする必要もないのだが、その辺り真面目なのだろう。消耗を避けつつも最大効率を目指している。
で、私。
レティの攻撃を避けて孤立したコボルドを狙う。
数度振るった短剣は、コボルドに躱されてしまった。分かりづらい犬面が、僅かに嘲るように歪んだような気がする。
……そして、そのタイミングが隙だった。
コボルドの警戒心は完全にナイフに向いていた。
なので、そのまま踏み込む動作で……ナイフでの攻撃と見せかけて足を掛ける。
後退しようとしたコボルドはあっさり私の足でバランスを崩した。
バランスを崩したコボルドにナイフを振り上げる。
そのナイフを防ごうとコボルドは防御態勢を取る。防御態勢を取られると、私の攻撃力じゃすぐには倒せない。……うん、私の身体能力だと、相手のバランスを崩してもそれだけでは足りないと分かっていたよ。
防御態勢を取ったコボルドに対してナイフでの攻撃をやめ、防御されていない足を蹴る。膝を破壊するつもりで。……無論そこまでの威力は出ないが、想定外のダメージを受ければ隙ができる。少なくともこの程度の相手なら隙を見せてくれる。
案の定、足のダメージに意識が向き、防御が疎かになった。そこにナイフを突き入れる。
私のナイフはコボルドの首を捉えた。
血が吹き出す。
ダメ押しの一撃を更に心臓にも加え、私はコボルド一匹を倒すことに成功した。
で、その間に皆は残りの始末を終えている。
「アウラは魔力消費には注意してくれ。アルマ、必要なときはマナポーションを頼む」
「もちろんです」
「了解だよ」
魔力矢に切り替えたアウラにヴェイセルが一応の注意を告げ、私達は再び前へ。
しばらくすると、丁度いい位置に着いた。
何に丁度いいかと言えば、無論、サンプル確保だ。
「【道具即時取り出し☆】【道具使用」
この階層でも宝珠を使う。
宝珠の変化は今まで通り。やはり問題ないらしい。
その後、再び進む。
途中でオークにも遭遇した。
オーク一体とコボルド五体、ゴブリン五体の群れだった。
だが、オークの頭蓋を一撃でアウラが撃ち抜いた結果……正直コボルド二十体より楽に勝利できた。
そんなこんなで第三階層の試練獣
相手は二体のオークとコボルド十体だ。
戦闘開始と共に、オークの内一体はアウラに仕留められた。即死させられる火力がある以上、オークは大きい的でしかない。
もう一体は、アウラが第二矢を作りつがえる前に、ヴェイセルが斬り伏せた。……目で追えなかったけど、首が落ちているし、両腕も肩から切り落とされている。すご。
「おおおおおお!」
レオンは大盾を構えて突進。三体のコボルドを轢いた。
……レオンのほうが重く、更には大盾という大質量を伴った攻撃。……コボルド三体とぶつかってほとんど減速していない。
レティとザシャも十分な攻撃で残り七体のコボルドを仕留めていっていた。
私はレオンがふっとばしたコボルドに近づき、トドメを刺す。
私が二体処理した時点でレオンがやってきて、最後の一体にトドメを刺した。
「よし、終わったな」
次は第四階層。だが、その前に一旦休息だ。
ダンジョン内は昼夜がわかりにくい。上手くペースを測り、それに合わせて計画的に休息するのが大事だ。
私達は魔力結晶を回収した後、四階層へと進んだ。
※※※
四階層での野営も特筆することはなし。
翌朝には再び出発した。
四階層からはゴブリンが出現しなくなり、オークの出現が増える。
どうやら『導の煌星』ではここから攻撃系スキル解禁というルールにしているらしい。……今まで散々物資不足で悩んでいたため、スタミナ管理もかなり重要視していたらしい。スキルや魔法というスタミナや魔力を大量消費する技を縛るのはそのためだ。
だが、それもここまで。ここからはスキルという力も使って攻略していく。
まぁ、それでもできるだけ使わない方針だそうだが。
なお、ここからは私は戦わない。
戦わない分、アイテムが必要かの見極めは、今まで以上にしっかりやろう。
で、スキルを使った皆の戦闘だが……圧倒的だった。
主にヴェイセルとレティがすごい。
こういう、複数の敵を一気に処理する能力はこの二人が頭一つ抜けているらしい。
二人のスキルのお陰で順調に進み、再びサンプル取得のタイミング。
「【道具即時取り出し☆】【道具使用」
定番となった宝珠を使用し、今回も今までと変わらないことを確認。
先へ進む。
今日はこの階層を踏破するところまでの予定。三階層までは一日で一階層と半分程度の進行ペース。
今日からは一日一階層のペースだ。
ちょっとゆっくりになって、一日かけて踏破する。『光輝の剣』と違い、無理のないプランだ。
途中、何度かオークやコボルドに遭遇したが、大体がヴェイセルに瞬殺された。
そして、そろそろ夕方近くの時間。
辿り着いた、この階層の試練獣戦。
さて、第四階層のボス戦はオークジェネラル。
取り巻きはオーク五体。
今までよりだいぶ強い試練獣だ。
だが、当然ながらやはり敵ではない。
スキルを使うから消耗は今まで以上にあるだろうけど……数が少ない分瞬殺が可能性だ。
「【剣嵐Ⅴ】」
「【死人に口なしⅤ】」
考えているうちに三体のオークが沈んだ。ヴェイセルが二体、ザシャが一体のオークをスキルで斬り伏せた。
「【要塞盾Ⅴ】!」
オークジェネラルの攻撃は、レオンが受け止めている。
「《氷槍》」
残り二体のオークは、レティが生み出した氷の槍が四本ずつ飛び、全身を串刺しにした。
……アイテムを使う機会があるかと窺っていたが、やはり必要なさそうだ。
「【閃光矢Ⅴ】【貫通射撃Ⅴ】」
最後にアウラがオークジェネラルの頭を兜ごと消し飛ばした。
一件落着。魔力結晶回収も完了。
「じゃ、今日はこの後五階層に上がって休息だな」
計画通りの日程だ。
試練獣戦含め、ここまでは何の異常もない。
今後もこの調子で進むことを祈ろう。




