第十五話 第一、第二階層
第一階層の探索は順調そのもの。
何も問題ない。
「よっ……と!」
みんな、簡単にゴブリンを倒していく。
とても丁寧な戦い方だ。
アンガス達なら、もっと雑に攻撃スキルを使って戦っているだろう。
……私の活躍の機会が少なくて、ちょっとだけ申し訳なくなる。
だが、私が低階層で活躍していたら、その分後半に使える物資が減るということだ。このいたたまれなさに耐えるのも、アイテム士には必要なことなのだろう。
……『光輝の剣』にいる間は、このような種類のいたたまれなさとは無縁だったのだけれど。なにせ、スキルを連発する皆にガンガンアイテムを使って回復させていたから。アイテムを節約するために、何もせずに我慢するなんて場面は殆どなかった。
やっぱり変なパーティだったのかも、あそこ。
「せいっ!」
私もナイフでゴブリンを一匹倒した。
今の私は剥ぎ取りにナイフを使う必要もないため、今回ナイフは買い替えていない。……今の私なら、必要素材に触れさえすれば後は収納すれば良い。
だから、戦闘で使うナイフも変わっていない。かつての素材用ナイフの流用。
なお、レティもかなり簡単な魔法を使って戦闘している。そのぐらいの魔力消費なら、歩いている間に【魔力自動回復Ⅴ】スキルで回復するらしい。
そんなこんなで、まずは第一階層の階層試練獣。
第一階層の試練獣はゴブリンナイトと呼ばれる重装のゴブリンだ。それと、手下のゴブリンが五体。
まぁ、当然ながら敵ではない。
「さて、サクッと倒すぞ」
そう言って、ヴェイセルは駆け出した。
レオンもザシャも追従する。
試練の間……いわゆるボス部屋での戦闘は、ボスの開始位置が固定だ。
ダンジョンが挑戦者の実力を測るためのものだから当然なのかも知れないが……非情にわかりやすい。悪意がない。……いや、ダンジョンへの挑戦者の実力を測るなら、本当は悪辣な試練のほうが良いのではないかと思うが、少なくともこの封印を作った人の考えはそうではないらしい。
悪意のないわかりやすい状況から始まるため、はっきり言ってアウラの的だ。
ヴェイセルが辿り着く前に二体のゴブリンが矢で、一体のゴブリンが氷で倒れた。ちなみに、低階層の間、アウラは魔力矢ではなく持ってきた実物の矢を使うので、ゴブリンには矢が突き刺さったままだ。
残りのゴブリンの内一体をレオンが盾で突進、轢き飛ばす。もう一体はいつの間にかザシャの足下に倒れていた。
そして、ボスのゴブリンナイトは、構えた盾ごとヴェイセルに両断された。
当然の圧勝。
攻撃系スキルを使う必要すらない。
試練獣も特に問題はなかった。やはり想定通り。特になんの異常もない。
ダンジョンが挑戦者を測るために生み出す試練獣は、倒せば消える。だが、消える際に〈魔力結晶〉に変わる。
この〈魔力結晶〉はそのまま魔力の補給にも使えるアイテムであり、持ち帰れば売ることだってできる。
試練獣戦の戦利品だ。
当然、深い階層程大きな〈魔力結晶〉を得られる。
「そんじゃ、第二階層に行くか」
「了解!」
ボス部屋の奥にある階段へ。
私達は問題なく第二階層に踏み込んだ。
※※※
第二階層からはコボルドも出てくる。
まぁ、もちろん敵ではないけれど。
「今回いいペースで来ているが、いつも通りの場所で野営しよう」
「いつもの野営部屋ですね」
「ああ」
このダンジョン内での野営は適した部屋で行うことになる。
そして、野営に適した部屋というのは冒険者達に知れ渡っていた。
部屋の広さや見張りやすさ、逃走経路の確保のしやすさなどが重要だ。
「ただ、サンプルは先に取ろう」
「了解」
サンプルの確保は私の役目。頑張ろう。……頑張るほどのことでもないけど。
ある程度進んだところでサンプルを取りたいので、まずは先へ。
そうして進んでいると、ゴブリンとコボルドの混成部隊が現れた。
コボルド……頭が犬というか狼というか、そんな感じの魔物だ。サイズはゴブリンをちょっと大きくした程度。
正直、弱い。ゴブリンの次ぐらいに弱い。まさに二階層の敵だ。
低階層は厄災から遠い。その分染み出している力も大したことがないのだ。
ヴェイセルの剣が舞い、アウラの矢が貫く。
レオンは次々に敵を弾き飛ばすし、ザシャは気付いたら敵を倒している。
レティは節約のため、割と地味な戦い方だ。……魔法使いはコスト管理大事だよね。
私もゴブリンの一匹にナイフを突き立てた。
この程度の戦闘だと、話題にすらならない。
そうしてある程度進み、サンプルを取るのに適した位置に来た。
「【道具即時取り出し☆】【道具使用】」
第一階層同様にサンプルを取得。宝珠の変化も第一階層同様だ。
「よし、それじゃ野営部屋に行こう」
ヴェイセルの言葉に従い、野営部屋へ。
前回の冒険のときもこの野営部屋は利用したが、個人的には前回の利用はかなり久しぶりだった。
駆け出しの頃は『光輝の剣』も頻繁に利用していた部屋だったが……一日で二階層を突破するペースで探索するようになってからは、使ったことがなかった。
正直、一日で二階層というのはかなり無茶だ。そんな無茶をするパーティだったからこそ、私はいろんな補助をしていた。
「それじゃ、みんなに〈栄養棒〉使うよー【道具使用】【道具使用】!」
野営部屋では他パーティと出会うことも多いが、今回は『導の煌星』だけだった。
人の多い低階層。それに加えかなり使いやすい部屋。混み合う条件が整ってしまっている。だから大抵の場合は他パーティと一緒になるわけだ。…だというのにこの状況は珍しい。
低階層は問題なしとギルドは判断しているそうだが……それでも今はダンジョンに潜りたくないというパーティが多いのかもしれない。
そういうわけで、うちのパーティで広々と使える。
まずは食事だということで、私は〈栄養棒〉を使用した。
「うーん……やっぱり食べた感覚はないな」
「そりゃそうだよ。……でも、前回もそれでしばらく空腹にならなかったでしょ?」
「たしかにな。いつもの保存食よりも体の調子が良かったように思う」
「なんてたって栄養もカロリーも十分だからね」
これで格安なんだから、本当に貧乏人の味方だ。
……これについては、本当にアイテム士で良かったなと思う。
「とりあえず、今日はこのままここで休息を取る。明日に備えて武器の手入れやらをして、早めに休んでくれ。不寝番はいつものローテーションで」
ヴェイセルの言葉にみんなが頷く。
……ちなみに、非戦闘ジョブの私は、不寝番は担当しない。……皆さん毎度申し訳ないです。ありがとうございます。
「アルマ、アイテムの消耗はどうだ?」
「全然使ってないよ! 今は使ったことがちゃんと仲間に伝わるよう心掛けているから、ヴェイセルが把握していないアイテム使用も無いはず」
「了解だ。……ちなみに『光輝の剣』の場合はこのあたりまででどのぐらい使っていた?」
「たぶんここまでで〈下級スタミナポーション〉二本ぐらい? こっちと違ってあっちはガンガンスキル使うからね。だから、三階層からはスタミナポーションの消費速度も更に上がるよ」
「……そうか。……ちなみに、無理してでもスピードを上げたほうが、結果的に少ない物資で済むという可能性は?」
「んー……厳しいと思う。単純にペースを上げるだけでも普通にスタミナ使うしね。そのうえで戦闘時にスキルを使う必要も出てくるから」
「わかった。それじゃ、俺達は『光輝の剣』のやり方に流されること無く、俺達のペースで進もう」
パーティの面々はその言葉にそれぞれ同意した。
そして、食事を終えるとすぐに明日に備え休んだ。
※※※
やはり第二階層も何かおかしなことが起きていたりはせず、階層試練獣に辿り着いた。
試練獣はコボルドバーサーカー。
そして手下のゴブリンとコボルドの混成部隊合計十体。
戦い方は前回同様だ。
スキル使用無しで、みんな軽々敵を屠っていく。
私もコボルドの内の一匹に近づいた。レオンに驚いたせいで孤立している個体だ。
振るったナイフをガードされるが、そのまま速度を落とさず懐へ。
肩からぶつかるタックル。
体勢が崩れたところに改めてナイフを刺した。ぴったり急所へ。
コボルドを絶命させたことを確認して周りを見ると、コボルドバーサーカーが背後からザシャ刺されているところだった。眼の前のヴェイセルしか見えていなかったらしい。
そうして、第二階層も問題なく突破。
次は第三階層だ。第三階層も基本はコボルドとゴブリンだが、稀にオークも現れる。
オークは私にとっては強敵だ。油断できない。
無論私以外のみんなにとってはただの雑魚だ。足を引っ張らないよう、無理せず、油断せずにやろう。




