第6話:ブランド化の魔法と、1億ギルの衝撃
皆様、第5話での「天才技師ニルス合流」への反響、ありがとうございます。
魔導バイクを飛ばして駆けつけたニルスを加え、アステリア領の「開発拠点」が完成しました。
「……リリアーヌ。この領地の特産品、ただの『安物』として売るつもりかい?」
「……まさか、カイル。……モノを売るのは二流。一流は『物語』と『優越感』を売るものですわ」
カイルが完全記憶から引き出した「古代の最高級香料」の再現レシピと、ニルスの「微細加工技術」。
そして、リリアーヌの「希少性の心理学」。
一瓶10万ギルの香水が、王都の貴族たちを狂わせる――。
異世界ブランド戦略、開幕です。
アステリア領の特産品は、どこにでもある平凡な「ラベンダー」だった。
これまでは、ただ乾燥させて二足三文で売られるだけの、貧しい村の象徴。
だが、カイルがその花びらを指で弄びながら、脳内の『完全記憶』を検索する。
「……リリアーヌ。古代帝国の記録にあるね。……特定の魔力波を当てて抽出した精油は、精神を極上の多幸感で満たす『神の雫』と呼ばれていた」
「……ニルス、再現できるかしら?」
「……フン。僕の作った『超音波魔導抽出機』をなめるな。……純度100%、不純物ゼロ。現代の香水技術を、この異世界で完全再現してやるよ」
数日後。
リリアーヌの執務室には、透き通るような紫色の小瓶が並んでいた。
「……ハンス。これを王都へ運びなさい。……ただし、普通に売ってはダメよ」
「……え? せっかくの高級品なのに、売らないんですか、社長?」
「……ええ。……まずは王都で一番影響力のある、社交界の女王……王太子の叔母にあたる公爵夫人に『献上』するの。……そして、こう伝えなさい」
私はハンスに、心理学の『スノッブ効果』を狙った緻密な台本を渡した。
「――『これは、選ばれた方のみが纏うことを許される、月の女神の溜息。……今月は、世界にたった10瓶しか存在しません』……とね」
作戦は、完璧だった。
カイルの計算に基づき、最も「噂好き」で「見栄っ張り」な貴族たちの動線をハッキング。
ニルスの技術で、瓶のラベルには偽造不可能な「魔導シリアルナンバー」を刻印した。
1週間後。
王都では、アステリア領の香水『ルナ・ブレス』を巡り、貴族たちが血眼になってオークションを繰り広げていた。
「……1瓶、100万ギル!? ……正気かよ、社長!」
ハンスが報告書を叩きつける。
当初の目標だった1000万ギルなど、一晩で突破した。
「……ふふ。……10瓶限定、という『飢餓感』。……そして、公爵夫人が認めたという『社会的証明』。……人はね、手に入らないと言われるほど、全財産を投げ打ってでも欲しがる生き物なのよ」
カイルが、積み上がった金貨の山を冷淡に眺めながら付け加える。
「……リリアーヌ。今回の利益、総額で1億ギルを超えたよ。……これで、次のステップ……領地全体の『スマートシティ化』の予算は確保できたね」
「……ええ。……次は、情報の速さを売る『魔導通信機』の普及。……この国の経済を、根底から書き換えて(アップデートして)差し上げますわ」
アステリア領の貧民たちが、自分たちの育てた花が金貨に変わる光景に涙する。
だが、リリアーヌの瞳はすでに、その先の「王都の経済的支配」を見据えていた。
第6話、いかがでしたでしょうか。
リリアーヌの「心理戦」とカイルの「完全記憶」が、1億ギルという圧倒的な数字を叩き出しました!
もはや追放された令嬢ではなく、一つの「経済圏」の支配者としての頭角を現し始めています。




