第3話:最初の1000万ギルと、無能を装う「毒島」
皆様、第2話での「宿命のライバル再会」への反響、ありがとうございます。
10歳の天才王子カイルと手を組んだリリアーヌ。
「軍資金がなくては、わがままも言えませんわ」
追放先へ向かう道中、彼女たちが目をつけたのは、馬車を御していた冴えない下男――ハンス。
カイルの完全記憶が彼の「隠された血統」を暴き、リリアーヌの心理学が彼の「忠誠心」をハッキングします。
無一文からの1000万ギル獲得作戦、開始です
「……ねえ、御者さん。……いえ、ハンス。……あなたのその、右手のタコ。……馬の手綱を握るためのものじゃないわね?」
ガタゴトと揺れる馬車の中、私は扇子で御者台を指した。
ビクッと肩を震わせたのは、王宮から「追放令嬢の監視役」としてあてがわれた、冴えない青年のハンスだ。
「……な、何を仰るんですか、リリアーヌ様。……僕はただの、しがない下男で……」
「……無駄だよ、ハンス。……僕の『完全記憶』に、君の顔は記録されている」
カイルが、膝の上で魔導書をめくりながら淡々と告げる。
「……3年前の隣国との小競り合い。……最前線で、たった一人で敵の補給路を断った暗殺部隊の生き残り。……名は、毒島……じゃなかった、この世界では別の名だったね」
「……っ!」
ハンスの殺気が、一瞬だけ馬車内を凍りつかせた。
だが、私はその殺気さえも、極上のワインのように楽しんで微笑んだ。
「……ハンス。……あなたは、今の自分を『無能』だと思い込もうとしているバグだらけのシステムよ。……でも、私の『心理学』にかかれば、あなたは世界最高の『マネージャー』に書き換えられるわ」
私は、カイルが「完全記憶」で導き出した、ある鉱山の地図をハンスに突きつけた。
「……この廃鉱山。……今、王都では『枯れた』と言われているけれど。……カイルの計算によれば、あと3メートル掘れば、新型の魔導触媒が1000万ギル分は眠っているわ」
「……リリアーヌ様、正気ですか? ……あそこは呪われた場所だと……」
「……呪い? ……いいえ、それは『情報の非対称性』を利用した、先代領主の囲い込み戦略よ。……ハンス、あなたが今すぐそこへ行き、私の名前でその土地を買い叩きなさい。……成功報酬として、あなたの『過去』をすべて買い取って(消して)あげるわ」
ハンスの瞳に、絶望ではない、奇妙な熱が宿った。
リリアーヌの「支配的な愛」と、カイルの「絶対的な正解」。
二人の怪物に挟まれた彼は、抗うことをやめ、深く頭を下げた。
「……承知しました。……お安い御用ですよ、社長」
「……ふふ。……1000万ギル。……それが、私たちの『わがまま』の最低落札価格よ」
3日後。王都の市場に、突如として高品質な魔導触媒が溢れ出した。
無一文だったはずの追放令嬢の手元には、約束通りの1000万ギルが。
そして、その影には、かつて「毒島」と呼ばれた男が、冷徹な笑顔で帳簿をつける姿があった。
ビジネスマンとしての視点と、物語のファンタジー要素が融合し、最初の「チーム」が結成されました!
ハンスという「実務担当」を得た二人の進撃は、ここから止まりません。




