第13話:偽造貨幣(バグ・コイン)の氾濫と、帝国の崩壊
皆様、第12話での「前世のライバル、レオ(シュナイダー)との激突」への反響、ありがとうございます。
資産を凍結され、絶体絶命の窮地に立たされたリリアーヌ。
「……完璧な理論ほど、一つの『嘘』で瓦解するものですわ」
レオの完璧な経済予測。それを逆手に取り、リリアーヌは隣国(帝国)の通貨そのものを「バグ」に変える禁じ手を使います。
ニルスが開発した「自己増殖型・魔導偽造貨幣」と、民衆を狂わせる「偽情報の拡散」。
情報の支配者による、国家規模のデバッグが始まります。
「……カイル様。……レオの構築した『完全市場予測システム』……そのアルゴリズムの癖、私の『完全記憶』で完全に特定したよ」
カイルが、ハッキングされノイズの走るモニターを指先でなぞる。
「……彼は『合理性』を信じすぎている。……だから、市場に『非合理な金』が流れ込むことを想定していないんだ」
「……ええ。……だからこそ、私が『愛』を注いで差し上げますわ」
私は、ニルスが完成させたばかりの「黒い金貨」をテーブルに置いた。
見た目は帝国金貨と寸分違わない。だが、カイルの魔法プログラミングにより、一定時間が経過すると周囲のマナを吸収して「自己複製」を繰り返す、呪われた魔導貨幣。
「……ハンス。これを隣国の闇市場に流しなさい。……そして、『アステリアのスマホ』を通じて、この噂を拡散するの」
――『帝国の金貨は、魔力が吸い取られて消えてしまう呪いにかかっている』
心理学における『集団パニック』と『確証バイアス』。
一度「金貨がおかしい」と信じ込んだ人間は、正常な金貨さえも疑い始める。
カイルのハッキングにより、帝国の通信網はリリアーヌの流す「偽の暴落情報」で埋め尽くされた。
「……なっ……! 待て、レオ! 帝国の物価が1時間で1000倍になっているぞ!」
通信の向こう側で、レオ(シュナイダー)の焦った声が響く。
『……リリアーヌ……。君、何をした……!? 通貨の価値を物理的に増殖させて崩壊させるなんて、そんな非合理な……!』
「……あら。……ビジネスに『綺麗事』は不要ですわ。……あなたが私の資産を数字上で消したのなら、私はあなたの国の通貨そのものを『ゴミ(バグ)』に変えたまで」
カイルが最後の一撃をキーボードに叩き込む。
「……システム・オーバーライド。――帝国全域の決済魔導陣を『機能停止』させたよ。……レオ。君の完璧な理論は、空腹に喘ぐ民衆の暴動までは計算していなかったみたいだね」
帝国の誇る金融システムは、わずか数時間で紙屑と化した。
かつて自分を突き落とした天才ライバルを、リリアーヌは「現実の混沌」という暴力でハメ返したのだ。
「……さて。……価値が暴落した帝国。……私が『1ギル』で買い叩いて(救って)あげましょうか?」
リリアーヌの冷徹な笑みが、通信モニター越しにレオのプライドを粉々に砕いた。
第13話、いかがでしたでしょうか。
「完全記憶」によるアルゴリズム解析と、「心理学」によるインフレ操作。
レオの知性を、リリアーヌの「悪意ある戦略」が上回りました。
これで隣国の経済も、リリアーヌの掌の上です。




