第14話:浮遊要塞アステリアと、異世界フルダイブ計画
皆様、第13話での「帝国経済のハッキング」への反響、ありがとうございます。
宿敵レオの理論を「偽造貨幣」というバグで粉砕し、莫大な富を奪い取ったリリアーヌ。
「……地に足をつけて争うのは、もう飽きましたわ」
手に入れた膨大な魔力資源と資金を投じ、彼女が命じたのは、領地全体の「デバッグ(再定義)」。
カイルの「完全記憶」に刻まれた現代の航空力学と、異世界の浮遊魔法が交差する時、アステリア領は「浮遊要塞」へと進化を遂げます。
異世界をフルダイブVRのように管理する、壮大な計画の幕開けです。
「――システム・リブート。全魔導エンジン、出力最大。……重力定数、書き換え開始」
カイルの声が響くと同時に、アステリア領の全土が激しい震動に包まれた。
民衆がパニックに陥る中、私は魔導端末を通じて、全住民の脳内に直接「安心感」を誘発するパルスを送信した。
「……皆様、落ち着きなさい。……これより皆様は、歴史上初めて『重力』から解放された人類となりますわ」
ゴゴゴ……と音を立てて、数万トンの大地が空へと浮き上がる。
ニルスが構築した「反重力魔導回路」と、カイルの「完全記憶」から抽出された航空力学の結晶。
雲を突き抜け、太陽の光が直接差し込む高度まで達した時、眼下には小さくなった旧態依然とした世界が広がっていた。
「……社長。……地上から王太子の軍勢が追いかけてきてますが、どうします? ……あ、届かない距離まで浮いちゃいましたね」
ハンスが、地上の豆粒のような軍勢を見て肩をすくめる。
「……放置しなさい。……それよりカイル様、例の『プロジェクト・ネーヴ(神経)』の進捗は?」
カイルは館の最深部、無数のクリスタルが明滅するマザーボードの前で、ヘッドセットのような魔導具を装着していた。
「……順調だよ。……この世界の『マナ』は、人間の意識(脳波)と電気的に同調できる。……僕の『完全記憶』にあるフルダイブ理論を使えば、物理的な肉体をここに置いたまま、精神だけを『高次元の魔導空間』へ転送できる」
カイルが指を鳴らすと、私の目の前に、現実と見紛うほど鮮やかな「黄金の庭園」がホログラムとして現れた。
「……ここでは、空腹も、病気も、死さえも存在しない。……僕たちが書き換えた、完璧な『楽園』だ。……リリアーヌ。君の心理学で、この空間に『永続的な幸福』という名のロジックを組み込んでほしい」
私は、その眩い光を見つめ、扇子を静かに閉じた。
心理学における『マズローの自己実現』の極致。
奪い合いの絶えない現実を捨て、自分たちが「神」として管理する仮想世界への移行。
「……いいわね。……このバグだらけの肉体を脱ぎ捨てて、全人類を私の『知略』の海で愛して(管理して)差し上げましょう。……ハンス、ニルス。……これより全住民の『接続』を開始しますわ!」
空に浮かぶアステリア。
それはもはや一つの国家ではなく、異世界そのものをアップデートするための「巨大なサーバー」と化した。
第14話、いかがでしたでしょうか。
ついに物語は「フルダイブ」という究極の技術へと到達しました!
地上の紛争を置き去りにし、空の上で「精神の楽園」を築き始めたリリアーヌとカイル。
しかし、精神を繋ぐということは、誰かの「悪意」もダイレクトに共有されるリスクを孕んでいます……。




