第11話:魔導端末の量産と、情報の独裁
皆様、第10話での「騎士団デバッグ(無力化)」への反響、ありがとうございます。
武力さえも「物理法則の書き換え」で完封したリリアーヌとカイル。
「……剣よりも鋭く、魔法よりも深く刺さる『針』を配りましょう」
ニルスが心血を注いだオーパーツ――魔導端末『アステリア・リンク』の量産に成功。
それは、民衆の手に「情報」という名の劇薬を握らせ、王族の権威を根底から腐らせる、異世界初のデジタル革命でした。
情報の独裁が始まる第11話です。
アステリア領の全住民に、手のひらサイズの水晶板が配られた。
それは、ニルスの「微細魔導回路」とカイルの「完全記憶から抽出したOS」が融合した、異世界版スマートフォン。
「……社長。これ、本当にタダで配っちゃうんですか?」
ハンスが、山積みになった端末を眺めて呆れ顔で尋ねる。
「……ええ。……ハンス。ハードウェアで利益を出すのは三流。……一流は、その中を通る『情報』と『人々の思考』を支配して、見えない税を徴収するのよ」
リリアーヌが端末を起動させると、空中には鮮やかなホログラム・ウィンドウが浮かび上がった。
そこには、王都の最新ニュース、市場の価格推移、そして――王族たちの目を疑うような「醜聞」がリアルタイムで更新されていた。
「……カイル様。……配信の状況は?」
「……完璧だよ、リリアーヌ。……僕の『完全記憶』に蓄積された、王族の過去30年分の『汚職ログ』。……これを1分おきに自動投稿するプログラムを組んだ。……民衆は今、パンを食べるよりもこの『真実』を貪ることに夢中だ」
心理学における『カリギュラ効果』。
隠されれば隠されるほど、人はそれを暴きたくなる。
王宮が必死に情報の差し止めを命じるほど、アステリア・リンクの普及率は爆発的に跳ね上がった。
「……見なさい。……昨日まで王太子を崇めていた民衆が、今は画面越しに彼を嘲笑っているわ」
リリアーヌは、端末に映し出される「炎上」の様子を眺め、優雅に脚を組んだ。
王太子の「贅沢な食事」と、重税に苦しむ「地方の現状」を比較した動画が、ニルスの技術で加工され、民衆の怒りを正確に増幅させていく。
「……これが『情報の独裁』。……私の扇子一本で、王都の暴動をコントロールできるのよ」
「……リリアーヌ。……でも、一つだけ予定外の『ノイズ』を検知したよ」
カイルが、端末に流れる膨大なデータの中から、ある一点のコードを抽出した。
「……僕の『完全記憶』を、裏側から覗き込もうとするアクセスがある。……それも、現代の『256ビット暗号』を力技で突破してくるような……僕たちと同じ『向こう側』の知識を持った奴だ」
リリアーヌの目が、知略の光を宿して細められる。
「……あら。……このバグだらけの世界に、もう一人『デバッガー』がいらしたのかしら?」
アステリア領に、新たな嵐の予感が漂い始める。
情報の支配者の前に現れた、見えざる敵の正体とは――。
第11話、いかがでしたでしょうか。
魔導端末による民意の掌握!
物理的な城壁ではなく「情報の壁」を築いたリリアーヌたちの前に、ついに同等の知識を持つ「ライバル」の影が……。




