第10話:10歳王子の天下獲り宣言と、騎士団のデバッグ
皆様、第9話での「中央銀行ハッキング」への反響、ありがとうございます。
国の経済(血流)を掌握し、実質的な支配者となったリリアーヌ。
「……最後は、おもちゃの兵隊さんを片付けましょうか」
経済を奪われ、プライドを粉々にされた王太子エドワードが、最強の「第一近衛騎士団」を率いてリリアーヌの館を包囲します。
ですが、10歳の王子カイルにとって、旧時代の剣技は「読み込みの遅い低スペックなプログラム」に過ぎませんでした。
知略と新魔法が、暴力という名の野蛮を駆逐する第10話です。
「リリアーヌ! 貴様の罪はもはや看過できん! 国家反逆罪で処刑してくれる!」
館を取り囲むのは、百戦錬磨の重装騎士たち。
王太子エドワードは、自ら剣を抜き放ち、勝利を確信した叫びを上げた。
だが、館のテラスに立つリリアーヌは、紅茶の香りを楽しみながら、一度も視線を向けようとしない。
「……ハンス。……野蛮な騒音をカットしてくださる?」
「イエス、ボス。……と言いたいところですが、今日は『小さな死神様』が出番だそうで」
ハンスが苦笑いして道を開けると、そこには一冊の魔導書を片手にしたカイルが立っていた。
「……カイル様。……あの方々の『無駄な努力』、記録する価値はありまして?」
「……いや。……僕の『完全記憶』には、過去1000年の剣術の型がすべて入っている。……彼らが動く前に、筋肉の収縮速度から、0.1秒後の軌道まで計算済みだ」
カイルが虚空に指で『コード』を描く。
それは、詠唱を必要としない、極限まで最適化された新魔法体系。
「……システム・デバッグ。――『摩擦係数・ゼロ』」
「突撃せよ!」
王太子の号令と共に騎士たちが一歩踏み出した瞬間。
……ズザザザザッ!
百人の騎士が、氷の上を滑るようにして、無様に転倒し、互いに激突した。
「な、なんだ!? 何が起きた!」
「……次は『重心位置の再定義』」
カイルがページをめくると、立ち上がろうとした騎士たちの体が、意志に反して勝手に後転を始める。
彼らの誇り高き剣技は、カイルが書き換えた『物理法則』の前では、バグだらけの誤動作に過ぎなかった。
「……暴力は野蛮ですわ、エドワード殿下」
リリアーヌが、ゆっくりとテラスの階段を降りてくる。
地面に這いつくばり、自分の体さえ制御できない騎士たちを見下ろし、彼女は冷たく微笑んだ。
「……あなた方の『忠誠』というプログラム。……書き換えれば、もっと有意義な使い道がありますわ。……私の『奴隷』として生きるか、このまま『機能停止(死)』するか……選ばせて差し上げますわ」
心理学における『絶望的な無力感』。
最強と信じていた武力が、子供の指先一つで無力化された瞬間、騎士たちの精神は音を立てて崩壊した。
「……カイル様。……天下を獲る準備、整いましたわね」
カイルが不敵に笑い、空に向かって宣言した。
「……ああ。……古いOS(王権)は、今この瞬間をもってサポート終了だ。……これからは、僕たちの『知略』が、この世界の新しい『神』になる」
王太子の絶叫が、静まり返った夜の空に空虚に響いた。
第10話、いかがでしたでしょうか。
カイルの「完全記憶」による物理演算ハッキングと、リリアーヌの「精神的支配」。
もはや武力でも二人を止めることは不可能です!
物語はいよいよ、国家全体の「再起動」へと向かいます。




