6話 歩きながらは注意
旅も5日目に差し掛かる。
初日同様で特にこれといった問題は無く、順調に進んできている。
しかしここまで順調であると、さすがにつまらなく感じてくる。
何を思ったのか、私は手帳と筆記用炭を取り出した。はじめて出会うものをメモしたり、日記をつけるのだ。
これなら歩きながらの暇つぶしになるし、私の知識量も増えるってわけ。
さっそく知らない花を見つけ、手帳の左ページに見た目の特徴を書き込む。右ページはというと、こっちは後で本を使って調べて詳細を書き込むために残しておく。なかなかの名案でしょう。
これでもっと旅が楽しくなりそうだと、ウキウキしながら足を進めるのであった。
11日目
今は山道を歩いている。右が山肌で左がちょっとした崖になっている。
あ、また面白い植物みっけ。メモメモ・・・。
こうして基本ずっとメモしながら旅をすることが、私のルーティーンとなっていた。植物をスケッチしていたせいか、若干絵がうまくなったように感じる。
手帳は今、五分の一程溜まっていて、もしかしたら王都に着く頃には全て埋まってしまうかもしれない程の勢いだ。
もうメモを取ることが癖になってやめられなくなってきた。メモメモ・・・。
そのまま私は山道を歩いていく。
メモを取りながら進んでいく。
・・・・・
・・・
・
・・・やっちゃった。
結局私の決意はこんなもんだったのかもしれない。自分で決めていたことすら守れない、意思の弱い人だ。だから油断していたんだと思う。初日に”油断しないように”なんて言っておいて、こんなの笑っちゃうよね。
私は今、崖の下にいる。メモを取りながら歩いていたせいで、足を踏み外して落っこちてしまったのだ。情けない・・・。
一応回復魔法は使えるけど、いっぺんで治せるのは擦り傷くらいで、骨折等の重傷は回復までだいぶ時間がかかる。
私はというと、たぶん肋骨と右足が折れてる。内臓が怖いし、先にそっちから治す。
「・・・チル(低級回復魔法)」
・・・・・・・・・・・。
・・・なるほど、確かに私の魔法のレベルは低いや。・・・怪我してから日が少し傾くくらい経つけど、今ようやく上半身の方が終わった。
次・・・、右足治さなきゃ。
・・・悔しいな、魔法はなんでも簡単にこなせると思ってたのに。お母さんからたくさん教わって、そこらの人よりも断然うまくできると思ってたのに・・・。
足の方も全然治らない。魔力の使い方が悪いから、魔法がちゃんと発動してくれない。
「私って・・・、たくさん知ってるだけで、なんにもできないんだなぁ・・・・・。」
思わず零れてしまった、一粒の言葉だった。
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結局完治するまでだいぶかかってしまい、日も落ち始めている。しかし、落ちてきた崖は意外と急で、大荷物を持ったまま登るのには無理があった。
私は別のルートを通ることを選び、近くに道がないか地図で確認しながら歩き始める。
崖下は森になっていて、注意深く進まないとすぐ迷ってしまう地形だった。
今は一旦手帳はお預けにして、地図を片手に森を進んでいく。
だいぶ進んできて、もうクタクタだった。
順調に地図通り進んでいるから、まもなくひらけた草原に出るはず。地図を信じてその方向へと進む。
すると、前方に光が差し込んでいるのが見えた。
外だ、もうすぐ出られる!
そう思った私は歓喜のあまり、思わず走ってしまった。
重い荷物を背負って、なけなしの体力を振り絞って・・・。
そしてついに森を抜けた先には広大な草原・・・というよりかは、日が入り込む程度のちょっとした空間があった。
地図と見比べてもこんな場所は無い。完全に迷子であった。
しかし私は、悔しがる素振りを見せない。いや、悔しがってる場合じゃないんだ。
なぜなら今私の目の前、森にぽっかりとあいたその空間には
いかにも真っ赤な祠があったのだ。




