5話 はじめは皆うまくいく
ケニスは魔法教育学校へ仕事に行き、それから30といくつかの夜が明けた。
私が15歳になるまで、あと20日程しかない。そんな日の早朝だ。
説明し忘れていたけど、私は赤緑の候に生まれたから赤緑の候で年齢が上がる。日時きっかりに年齢が上がるわけではなく、一季節ごとに判断されるのだ。
日はまだ昇りきっておらず、星もいくつか見える。そんな早い時間に、私は家の前にいる。
深めのとんがり帽子を被り、膝までかかるローブを纏う。どちらも紺色だ。
着替えと食料の入った大きなリュックを背負い、左手には自分の身長と同じくらいの大きな杖。
髪は帽子であまりよくわからないが、リボンでまとめて後ろで下げてある。
私は一度家の方に振り向く。見送りはピングだけ。お父さんとお母さんはまだ寝ている。
手紙はリビングに置いてきたし、やることは済んだ。
私は気合を入れて、王都へと足を向けた。
ピングは動かずに静かに私を見送ってくれる。ほんとは2人にも見送ってほしかったけど、それだと出発できなくなるかもしれない、顔を見ただけで行くのを躊躇ってしまうかもしれない。だから2人には出発を伝えずに、こっそりと家出をすることにしたのだ。
私は決めた。王都に行って試験を受けることを決めた。大人になって、2人を安心させると・・・決めた。
実は昨日の晩まで考えていた。本も読まず、ずっと部屋にこもって考えていた。私が本当に何をしたいのかを、ただひたすらに。
後ろを見ても、もう家は見えない。
私は寂しさでこぼれてしまいそうな涙を堪えて、足を踏み出した。
「・・・」
「行ってしまったわね」
「そうだな」
「・・・」
「・・・」
「明日からはどうやって朝起きようかしら」
「俺がいる間は起こそうか?」
「そうね、おねがいするわ」
・・・・・
・・・
・
「頑張りなさい、小さな魔女さん・・・」
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日は完全に顔を出し、横から私の顔を照らす。
森林を右手に草原の道を歩く。一緒に歩く人もいなければ、前からすれ違う人もいない、私だけの正真正銘の一人旅だ。
地図を片手に地形を確認しながら進んでいく。慣れてくると楽しいもので、大きな岩があったらよじ登って周囲を見回したり、川があったら足を入れてみたりと、ちょっと浮かれてはしゃいでいた。
山道に入ろうとしていたところで、日が落ち始めていた。さすがに今から山道に入るのはまずいと感じ、近くに洞穴がないかと探し始める。
実は私、本ばかり読んでいたおかげか、何に関しても知識だけはあるのだ。だから旅の心得もある。
洞穴がなければ簡易式テントもあるし、そのあと火をおこす方法だって知ってる。初めての旅にしては割と順調に進めるのである。
お、洞穴を発見~。魔獣でも住み着いていなければ、今日はここに泊まるかな。
音をたてないようにゆっくりと中を見渡して、何もいないことを確認する。近くに川も流れているし、この場所は結構あたりかもしれない。
本当に順調にことが進み、旅初日が終了する。このまま王都まで行ける気がしてきた。
しかしそう甘くはない。お父さんなら王都まで20日で着けるが、私の場合30日もかかる可能性があるのだ。
理由は一つ、体力がないのだ。今までずっと書斎で本を読んでいたことは、こんなとこにも影響してくる。
今回の試験が季節はじめでないことが幸いだが、旅において体力がないことは致命的な痛手なのだ。
そのことを理解している私は、油断しないようにと心に誓って眠ることにした。
この旅は絶対に成功させる、そう祈って。




