9話 人柄はどうあれナンパはナンパ
「きみみたいな子が路地裏にいちゃ危ないよ、今みたいに荒くれに狙われちゃうからさ」
「う・・・すみません」
こんな私を助けてくれて、何とも申し訳ない。
「謝らなくてもいいよ、小さい子を助けるのは当たり前のことなんだから」
・・・ちょっと今のは聞き捨てならない。
え、私ってそんなに小さく見えるの?
「僕はイムタ、次の赤緑の候で15歳になるんだ。きみは?」
しかも私と同い年だなんて、・・・確かにイムタとかいう少年の方が背は高いけど、そこまで年来差あるように見えるのかな?
取り合えず私も自己紹介をする。
「わ、私はカナ、14歳・・・。私も、赤緑の候で・・・15歳になる」
・・・うん、確かにこれじゃあ小さい子の自己紹介だ。こんなぎこちないしゃべり方をしていれば、12歳と言われてもうなずける。
私のこの言葉に、イムタも反応する。
「え?・・・同い年なの?」
「そう、こ・・これから、王都に行って試験を受けに・・・い、行くの」
「へ・・・へぇ、そうなんだ。僕も・・・だよ」
イムタもぎこちなくなっている。まあ、年下だと思って助けてあげたら同い年で、しかも同じ試験を受けに行こうとしているのだから、そうなるのも仕方がない。
しばらく変な空気が続いた。お互い目をそらしたまま困った顔をしている。
先に口を開いたのはイムタだった。
「ねぇ、よかったらさ、一緒に王都まで行かないかい?」
場合によってはナンパしているようにも聞こえる台詞だが、そういうわけではないということは私にもわかる。
イムタはどうにか気をつかおうとしてくれたのだろう、そして私が小さい子に見えたから近寄ってきたということを誤魔化したいのだろう。
私としても人がいてくれるのは助かるし、ここはお言葉に甘えさせてもらうとする。
「ええ、いいわよ、・・・よ、よろしく」
「うん、よろしく」
ここでようやくイムタのぎこちなさがなくなってきた。
「イムタ・シュトルス、イムタって呼んでくれ。きみは、カナでいいよね?」
タメで呼び合うらしい。私も基本そうだし、悪い気もしないからうなずく。
「カナよ、よろしく・・・イムタ」
旅をはじめて、一番最初のまともな出会いだった。
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私達は今町中を進んでいる。何か声をかけられても、イムタが対応してくれるからとても助かっていた。
イムタに宿を探していることを話したら、イムタの今利用している安い宿があるからと、案内をしてもらうことになったのだ。
2人でお喋りをしながら宿を目指す。
「へぇ、じゃああのシグル村から1人でここまで来たんだ」
「そう、バスも出ないから大変だったのよ」
「こんな大荷物をもってね」
「おかげでだいぶ時間かかっちゃって」
「・・・あれ、さっきからなんか話し方変わってない?」
「あ、そういえば・・・」
イムタと話すことに慣れてきたせいか、いつの間にか普通に喋れるようになっていた。
私の中でイムタは人見知りの対象外になったようだ。
「カナって、もしかして人見知りする?」
「うん、結構する方」
苦笑まじりに答える。
「成る程ね、てっきり元々ああいう喋り方なのかとばかり思ってたよ」
やはり誤解されてしまっていたようだ。
「じゃあ尚更、何で1人でここまで来ようと思ったのさ?」
「自分を鍛える修行なの、さっきみたいにならないようにね」
お母さんに言われたからとは言わない。最後は自分で決めたのだから、自分の思いの一つを言う。
「でも、僕とはもうこんなに話せているよ?大丈夫、問題はないって」
「そうはいってもねぇ・・・」
確かにイムタは大丈夫だがそれは時間をおいたからなだけであって、人見知りが治ったわけではない。初対面の人と話せなければいけないのだ。
私にはまだそれができない。
と、そこへ狙ったようなタイミングで私に声をかける人がいた。
「あの~、宗教に興味はありませんか?」
「ひゃあぁっ!!」
深くフードを被った宗教家の男に声をかけられた。
私は咄嗟にイムタの後ろに隠れ、イムタを盾にする。
しかし、宗教家はそれでも私に迫り、まくし立ててくる。
「今ならなんと入会費無料でさらに福音書も無料配布ですそれに契約も簡単でしてこちらの紙にサインしていただければいいんです我らはあなたを歓迎しま」
「おいやめろ!嫌がってるだろ!」
句読点のない宗教勧誘を打ち切ったのは、イムタだった。
「なんですかあんたは!今私はこの子と話しているんです。邪魔しないでください!営業妨害だ!」
「1人で勝手にべらべらと喋っておいて、なにが”話している”だ!」
宗教家は横から私に接近しようとするが、イムタがそれをしっかりガードしてくれる。
イムタすごい!イムタかっこいい!
すると宗教家は痺れを切らしたのか、口調が一気に変わった。
「ググググ・・・餓鬼の分際で! おい、お前ら出てこい!そしてこいつらクソ兄妹を痛めつけてやれ!」
宗教家の一声で辺りから大柄の男が何人か集まってきた。宗教家を併せて5人、私たちは一瞬にして囲まれてしまった。
町ゆく人々もただ事ではないと感じたのか、一定の距離をおいたところで人集りになっている。
ていうか、待って・・・今”兄妹”って言わなかった?・・・どこが?どの辺が?
似てるところといったら、・・・うーん、髪の色は金と橙で違うし、顔立ちもあまり似ていないし、ローブも色が違うし、髪型も・・・って、そうか。私の髪も金髪に見えなくもないしどっちも後ろでまとめているし、どっちもローブでいかにも魔法使いって感じだし、見る人によっては兄妹に見えちゃうよね。
そんなことを考えていると、イムタが小声で話しかけてきた。
「カナ、ピンチだ。きみの魔法の階級を教えてくれ」
私の実力を見て、何か策を考えようとしてくれているみたいだ。
「ごめんなさい、低級よ」
「くっ・・・、じゃあ使える属性は」
「全部」
「・・・は?」
「本当なの、全部低級でなら使えるの」
「・・・わかった、ちゃんと後で説明してもらうからね。じゃあ・・・」
「何をごちゃごちゃと言っているんだ?今になって怖じ気づいたなんて言わないよなぁ!」
宗教家達は余裕とでも感じたのか、へらへらと笑っている。
「・・・ええ、わかったわ」
「じゃあ俺が合図を出したらはじめてくれ」
こっちの作戦は決まった。
「よおしお前ら、やれっ」
宗教家達はこちらにゆっくりと迫る。
そして
「・・・今だ!」




