第9話 あの場所へ
そして日本中を震撼させたあの出来事から3ヶ月経った6月、愛音は京都の梅雨のじめっぼさに愚痴をこぼしてた。
「もうやだ〜、髪がまとまらないよ〜亅
大栄は愛音に追い討ちをかけるように、
「沖縄の梅雨なんてもっとじめっぽいよ亅
と話す。
相変わらずなぜこの世界に来たのか分からないままの大栄。
「そう言えば高校卒業した後はたえくんどう過ごしてたの?亅
愛音が湿気で広がる髪をまとめながら大栄に話しかけた。
「高校卒業してすぐ今の会社に就職したよ、知り合いの紹介って事もあって高卒でもすんなり入れちゃって、今後京都にも支店出すって事で京都に出向いてたってわけ、そしたら出向くつもりが逆戻りして来た亅
笑いながら答える大栄。
2人は変わらず仲良しなまま。
そして梅雨も終わり7月夏本番。
暑さには強い大栄と、
暑さに弱い高校最後の夏休みを迎えた愛音の夏が始まってゆく。
海辺のデート、何気ないショッピング、京都の寺めぐり、大栄は過去に来たにも関わらず、愛音と過ごす時間が全て新鮮で楽しく過ごせて、愛音の高校最後の夏休みは幕を閉じた。
9月になり夏休みも終わり愛音が学校に行ってる間に大栄はふと思った。
"向こうで過ごした街はどうなってるんだろう"
時計を見ると午前10時8分。
大栄はすぐさま京都駅へ行き、東北へ向かう。
午後過ぎに東北へ着き、大栄は膝から崩れ落ちた。
愛音が住んでた家も
すぐそばの公園も
お世話になった商店も
どれも跡形もなく、何一つない。
かろうじて見える愛音と座ったベンチは、
原型を留めてない。
これまでどこか他人事だったあの出来事が、一気に自分の身に起こったかのように肩にのし掛かるような感覚に襲われた。
そして大栄はおばあさんに電話をかけた。
3コールほどで取ったおばあさん。
「大栄、お前連絡の頻度が少ないんじゃないのかい?亅
大栄はおばあさんの声を聞き涙が止まらなくなった。おばあさんは大栄が泣き止むまで、電話を切らず一言も発さずに待っててくれた。
大栄が落ち着き、
「おばあさん、俺今東北にいる、、家も、何もかも、全部残ってない、、、亅
大栄がそう伝えると、
「そうかい、、たえ、私みたいな老ぼれを救ってくれてありがとうねぇ。亅
それを聞いた大栄はまた涙が止まらず泣きながら東北を後にする。
そして京都へ戻り愛音と合流すると大栄は愛音を抱きしめ、今日過ごした出来事を話した。
愛音は話を聞いた後切なさそうに
「そうなんだね、、、たえくん、、私達のために色々ありがとうね、、亅と大栄に呟いた。
そして夏の終わりが迫る9月下旬。
近頃愛音の様子がおかしい事が気にかかる大栄。
そんな愛音が重たそうに口を開いた。
「たえくん、、、私、学校、、行きたく無い。たえくんと一緒に、、沖縄に行きたい、、。亅
そう思うようになった理由を聞くと、
被災地からの転校生と言う事で学生達から色んな質問をされ、それが耐えられないと。
愛音は被災者じゃない、だけどその土地出身、まだ未熟な高校生達は愛音の心境より自分の好奇心で色々質問するんだろうなと悟った大栄。
そして大栄は愛音を2泊3日でも息抜きさせようと沖縄旅行を計画し始める。
2020年だとスマホ1つで予約できた航空券が、
2011年だとまだ航空代理店を介する購入が一般的で、とりあえず代理店へ向かい航空券の購入へ進もうとした。
そして代理店で購入手続き中に大栄はあの感覚に襲われた。
"2011年の沖縄には帰れない"
大栄の勘は当たりだった。
"たしかに今俺が帰ると同じ土地に同じ人物が2人存在する事になる、家も同じ、何もかもが自分自身"
大栄は頭の中を整理した。
自分の過去には干渉できない。




